ほんらぶインタビュー あの人のトクベツな3冊 榮倉奈々さん

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更新日:2013/1/5

読書が苦手だった私のハマった、意外な3冊です

「大好き。爆笑しちゃって、電車では読めないですね」と榮倉奈々さんがおすすめするのは北大路公子さんの酒飲みエッセイ『枕もとに靴』。読書が好きになった、きっかけの1冊でもあるという。
「この仕事をするようになって、本を読んだほうがいいと言われることが増えたんですけど、もともと読書は苦手だし、本を選ぶセンスも全然なくて。なにを読んでもことごとく響かないし、どうしても好きになれなかった。そんな時に友人が、“もう読まないから”と私に合いそうな本を何冊かくれたんです。そのなかで、これだけは返してねって念を押された1冊がこれ。読んでみたらもう、大ヒット。ビールが飲みたくなる本ナンバー1です。
 私もふだんからお酒は飲むほうで、それなりに“あ~やっちゃったな”みたい失敗談もあるんですけど、泥酔エピソードを読んですっごく安心しました。あたし大丈夫、全然大丈夫、って(笑)。そういうところも、けっこう好感をもてましたね。あとは、飼い猫の名前を突然“たろう”から“斉藤くん”に変えちゃって、そのまま突っ走っちゃう話とか、ひょうきんなお父さんとのやりとりとか、大好きです。
 北大路さんの本は家にほとんど全部あるんですけど、もったいなくて、味わって少しずつ読んでいます。どんどん新刊を出してほしい」
 今でも、そのお友達に勧められた本を読むことが多く、読書への抵抗感はすっかりなくなった。実写化映画に出演する際は、必ず原作小説を読むという。
「映像になるのって、一瞬だから。背景や感情は、あまり描かれないことが多いので、登場人物がどんなことを考えているのかも含めて、物語の本質が知りたくて、まずは原作を読みますね」

榮倉奈々
えいくらなな●1988年、鹿児島県出身。02年にモデルとして活動をスタートし、ドラマ「ジイジ~孫といた夏~」(04/NHK)で女優デビュー。以降数々のドラマに出演し、連続テレビ小説「瞳」(08/NHK)のヒロイン役で国民的人気を集める。09年には廣木隆一監督『余命1ヶ月の花嫁』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。

 2013年に公開が決定し、笠原郁を演じる有川浩の大人気ラブコメ『図書館戦争』も、すでに読了。もともと恋愛小説は苦手だったという榮倉さんは、「こんなにハマるなんて意外だった」と語る。
「この作品って、ベタで直球なんですけど、微妙なニュアンスで意外性があって一筋縄じゃいかないところがあるんですよね。だから素直に憧れたりもできたのかもしれません。堂上がいつも、きついことを言いながら郁を見守ってくれていたり、愛を感じる台詞を言ったりするシーンではやっぱりきゅんとしちゃいました。
 近未来のお話なので、現実じゃないはずなのに、少しも違和感がなくて今起きていることのように感じられるのが不思議でした。だけど、児玉清さんとの対談で、有川さんが“書いていて登場人物が勝手に動き出す”というようなことをおっしゃっているのを読んで、“だからか”と納得。出てくる登場人物の行動や台詞にひとつも矛盾がないんですよね。キャラクターが生き生きしていて、動いている姿や図書館での情景がすんなり想像できちゃう。有川さんにはぜひ、ドラマや映画の脚本も書いてほしいな。
 私が演じるのは郁ですけど、一番憧れたのは郁の親友・柴崎。頭が良くて、要領もよくて、美人で、ほんと上手に生きてる。ああいう人になりたかったです。でも、柴崎にはもしかしたら努力すればなれるかもしれないけれど、郁にはなれないような気がします。すごくピュアで、一生懸命。そこが郁の魅力ですよね」
 秋に公開予定の映画『のぼうの城』は、和田竜のオリジナル脚本をもとに書き下ろしたベストセラー小説の映画化。榮倉さんは、紅一点ヒロインの甲斐姫役で出演する。
「たぶん、映画のお話をいただかなかったら、小説も読まなかったんじゃないかな。ガチガチの教科書みたいな小説を想像していたので、名前も覚えにくいだろうし、これはけっこう苦戦するだろうなと思っていたんです。でも読み始めてみたら、登場人物たちが魅力的に動き回っていて、すごく読みやすかった。その時代を生きている人たちの感情や背景が見えてきたら止まらなくって、寝る間を惜しんで読んだ久々の本でしたね。
 私にとって戦国時代というのは、自分の欲や感情をそぎ落としたような人たちが生きていたイメージだったんです。感情で突発的に動くことなんてないんだと思っていた。だから、甲斐姫が靱負(ゆきえ)にキスをするシーンにはすごく驚いてしまって。だけどそういうロマンチックな、当人たちにしかわからない気持ちだけの場面に、“ああ、人間なんだな”感じられて引き込まれたんだと思います。今の私たちとなんにも変わらないんだな、と感じたら、苦手意識なんてなくなっていました。
 だけどその一方で、やっぱり感情に惑わされずに抑え込む強さもあって。本当はのぼう様と一緒にいたかったのに、いられなくなったとわかったあとの甲斐姫の切り替えの早さは、肝が据わっていてすごい。そういう覚悟や生き抜く強さは、時代のせいももちろんあるんでしょうけど、今でも必要ですよね。映画ではそういう彼女の魅力を表現できていたらいいなと思います。

(取材・文=立花もも)

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榮倉奈々さんのトクベツな3冊

『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』

北大路公子/寿郎社

独身・酒好き・実家暮らしの日々を綴った、ハマると抜け出せなくなるキミコの大爆笑日記。その第1作が「増補新装版」で登場。巻末には、山本文緒氏×北大路公子の特別対談を収録。

『図書館戦争』

有川 浩/角川書店

2019年(正化31年)。公序良俗を乱す表現を取り締まる『メディア良化法』が成立して30年。高校時代に出会った、図書隊員を名乗る“王子様”の姿を 追い求め、行き過ぎた検閲から本を守るための組織・図書隊に入隊した、一人の女の子がいた。名は笠原郁。不器用ながらも、愚直に頑張るその情熱が認めら れ、エリート部隊・図書特殊部隊に配属されることになったが…!? 番外編も収録した本と恋の極上エンタテインメント、スタート。

『のぼうの城』(上・下)

和田 竜/小学館

戦国期、天下統一目前の豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じた。そのなかの支城、武州・忍城は周囲を湖で取り囲まれた難攻不落の城だが、秀吉方約2万の軍勢に対し、その数わずか500。領民たちに「のぼう様」と呼ばれる城代・成田長親は領民の人心を掌握していた。従来の武将とは異なる新しい英傑像を提示した40万部突破、本屋大賞2位の戦国エンタメ小説。

映画「のぼうの城」

監督:犬童一心、樋口真嗣
キャスト:野村萬斎 榮倉奈々/佐藤浩市
2012年11月2日(金) 全国ロードショー

2012年最大のスペクタクル超大作。
和田竜の同名ベストセラー小説を映画化。戦国時代、わずか500人の兵隊で2万人もの敵に戦いを挑んだ“のぼう様”こと成田長親の実話が明らかになる。榮倉奈々さんは城主・成田氏長の娘で、長親に密かに想いを寄せる甲斐姫を演じる。

(c)2011「のぼうの城」フィルムパートナーズ

 

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