二階堂ふみさんが選んだ1冊は?「日常に隠れているものを見つけられる大人になりたい」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/7/9

二階堂ふみさん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、二階堂ふみさん。

(取材・文=河村道子 写真=TOWA)

「私の“ふみ”って、実は檀ふみさんの“ふみ”なんです。母が大好きで、檀ふみさんのようになってほしいという思いから名付けたそうです」

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 ゆえに檀ふみさんへの思いは格別。折々に触れてきた名エッセイのなか、携えてくれたのは、住まいを巡る思いとそこに息づく父・檀一雄の思い出を綴った“家”にまつわる一冊。

「お父様が最後に住んだ博多湾を望む能古島の家について書かれた冒頭の一編からは、父娘の心地良い距離感に、くすっと笑いながらもふいに涙が零れてきました。お父様の死後、みずから建て直し、暮らしている、家族の思い出詰まる石神井の家の話からは、欠陥あるものにも愛着を持つことの豊かさが見えてきました」

 私の中には「生活すること」を愛した父の魂が息づき始めている――。作中に宿る著者の思いは、今、自身にも「息づき始めている」。

「自分がどういう生き方をしたいかと考えたとき、日々の生活を大事にしたいなと。この本を読んでから、そこでの楽しさを見つけやすくなりました。不便さのようなものが愛しくなったり、そこから生まれる自分の感情が面白かったり。日常に隠れているものを見つけられる大人になりたいなと思っています」

 ずっと乗ってみたかった寝台列車の旅に行ってきたばかり、という二階堂さんだが、“完璧なる執事”鎌塚アカシが奮闘する人気舞台の新作は、ついに舞台がお屋敷から外へ。『鎌塚氏、腹におさめる』で登場した、二階堂さん演じる推理好きの令嬢・綿小路チタルも再び登場し、新たな舞台=豪華寝台特急へ乗り込む。

「鎌塚氏シリーズは客席で観ていたときから大好きなシリーズ。今回、5年ぶりに呼んでいただきました。天涯孤独ながら、チタルはじゃじゃ馬で好奇心旺盛、少女マンガに出てきそうなキャラクター(笑)。今作では前回より自由にチタルを動かしていきたいなと。“普通なら、こう思う”という気持ちの部分を、私はいつも大切にしているのですが、舞台では、身体を動かしていくと、そこに自然に説得力が出てくるということを最近、稽古をしていると感じることがあって。チタルはやればやるほど、理由がちゃんと後からついてくるキャラクターだなと」

 恋、殺人、暴走、橋がない! 何が起きるかわからない列車の旅。

「少しミステリー要素も入っている、ハラハラしていただけるコメディです。個性豊かなキャストが揃う舞台を、ぜひ劇場で楽しんでください」

ヘアメイク:足立真利子 スタイリスト:柳田真樹 衣装協力:ドレス7万4800円 (FUMIE TANAKA/DO-LE TEL03-4361-8240)

にかいどう・ふみ●1994年、沖縄県生まれ。2009年、映画『ガマの油』でスクリーンデビュー。出演作に、映画『ヒミズ』『翔んで埼玉』、大河ドラマ『西郷どん』、連続テレビ小説『エール』、ドラマ『プロミス・シンデレラ』など。カメラを手に、気になる人やモノに迫るWEB版連載「FOCUS ON」も話題。

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作・演出:倉持 裕 出演:三宅弘城、二階堂ふみ、櫻井海音、玉置孝匡、マキタスポーツ、西田尚美 7月17日(日)~8月7日(日)本多劇場 以降、全国巡演
●生涯無休を誓った完璧なる執事・鎌塚アカシ(三宅弘城)に長期休暇が言い渡された。泣く泣く乗った寝台特急。その車内でかつて仕えていた綿小路家の令嬢・チタル(二階堂ふみ)と再会を果たす。豪華列車のなかでは難事件が起き……。鎌塚氏シリーズ第6弾!