富山県富山市立図書館――市内25館と全国一の図書館数を誇る富山市の本拠点。市の歴史や情報発信も豊富【ダ・ヴィンチWeb図書館探訪】

文芸・カルチャー

更新日:2022/9/28

富山市立図書館

 日本全国の各地にある図書館。誰もが気軽に本を借りることができるだけではなく、多種多様な企画展やおはなし会なども実施され、市民の憩いの場として愛されています。そんな図書館は、近年パブリックスペースとしての機能を高めるためにリプレイスするだけではなく、民間の企業とのコラボレーションをしたり、カフェ機能を備えたりとさまざまな仕掛けが増えてきました。

【ダ・ヴィンチWeb図書館探訪】では、全国の特色ある図書館をご紹介。魅力的な企画展やイベントなどの取り組みにより地域を盛り上げている、さまざまな図書館の方々に取材をしていきます。本をもっと楽しめる可能性が詰まった、図書館。旅行などで近くを訪れた際には、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

構成・文=永見薫

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回答者:富山市立図書館 読書推進係 吉岡真和さん

――書籍の貸し借りや企画展、イベント以外にも力を入れて取り組んでいることがありましたら教えてください。

 当館は、書架のデザインや、書棚の分類サインも含めて建築家の隈研吾氏が設計し、たくさんの県産の杉材が使用されたあたたかみのある開放的なスペースが特徴の施設です。ガラス美術館との複合施設で、2階から6階まで吹き抜けをはさんで一体となっており、本を持ったまま回遊したり美術館の展示室に行ったり、カフェでお茶を飲みながら本を読むことができます。

富山市立図書館

富山市立図書館

 また、3つの特徴的な機能を持っています。

1. 特別コレクション室
江戸時代以前の貴重な写本を数多く集めた「山田孝雄文庫」などを収蔵する特別コレクション室があります。そのほか当館のホームページで、所蔵資料の一部をデジタル画像で公開しています。

2. 全域サービス
富山市内には本館・地域館・分館等全部で25館もの図書館があり、全国一の館数を誇っています。また約1500冊の図書を積載した2台の自動車文庫が、図書館から離れた地区を巡回し全域サービスを行っています。

3. ポップクラブ
富山市内の60歳以上のシニアのサークルが、おすすめしたい図書のポップ(紹介カード)を作成し、本といっしょに展示をしています。

――現在図書館では、1年を通してどのような企画展やイベントを実施していますか?

 司書による図書館使い方教室や館内ツアーのほか、民間との連携イベントとしては大学との共催セミナーやビジネスセミナー、作家による講演会などがあります。また絵本原画展やワークショップ、本の読み聞かせ会やコンサート等もあり、年間約100のイベントを実施しています。

富山市立図書館

――司書のみなさんが手掛けた、企画展やイベントで手応えを感じたものについてと、その際に参加者や来場者からどのような反応があったか、印象的だったことについて教えてください。

 印象に残っているイベントを2つ紹介します。

・「図書館すごろく」の配布
図書館の活用方法について知ってもらうため、図書館の使い方やルール・マナー等を盛り込んだすごろくを来館者に配布しました。この取り組みは、新聞、テレビやSNSで多く取り上げられ、すごろく目当てに来館されるなど市民から多くの反響をいただきました。

・「図書館ビンゴラリー」
期間中ビンゴカードを子どもたちに配布。富山市立図書館25館のうち、5館を回ってビンゴを達成した子どもには、オリジナルノートをプレゼントするという企画です。その際には各館のおすすめの本を記載した絵柄が異なるカードも配布しました。来館者からは、ゲームの楽しみ以外にも、図書館のカードを集める楽しみがあったと嬉しいお声をいただきました。また、利用率が低迷している館の利用率向上につながりました。

――日頃、みなさんならではの独自の配慮や工夫、環境づくりなど、こだわっていることは何かありますか?

 当館は、ガラス美術館との複合施設であり、「ガラスのまちづくり」を推進していることから「ガラス芸術資料コーナー」を設けています。また図書館内の一部では、ガラス作品を展示し、ガラス美術館と回遊できるようにしています。さらに、観光客の来館も多いことから「とやま観光資料コーナー」を設置しています。

 そのほか、富山市は路面電車でのまちづくりを推進していることから、路面電車が見えるスペースに富山市内外の路面電車に関わる資料を集めた「路面電車コーナー」を設置し、富山市の歴史や文化に親しんでいただけるように工夫をしています。

――紙の本が少なくなっていき、また地域の図書館の減少や、衰退といったことも懸念されている昨今ですが、この状況を図書館のみなさんはどう感じていますか?

 今後、図書等の電子化は一層進むと考えられますが、紙の本には手触りやにおい、厚み、装丁、読破する楽しみなど電子書籍では得るのが難しい魅力があり、両方の良さを取り入れることが理想だと考えています。幼い子どもたちには、電子書籍よりもまず紙の本の魅力を伝えたいと思っています。

 図書館は紙の本のほかに、インターネット環境やデータベースを備え、さらに情報をつなぐ専門の司書がいる「情報の拠点」です。こうしたひとつの拠点で、しかも無料で様々な情報を得ることができるのは、図書館くらいではないでしょうか。このような点は時代が変化しても変わらない「図書館の本質」であり、市民にたくさん活用されるようこれからも広くPRしたいですね。

富山市立図書館

〈施設概要〉
富山市立図書館
富山県富山市西町5番1号
TEL:076-461-3200
HP:https://www.library.toyama.toyama.jp/

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