男女の友情は成立する? 『青く滲んだ月の行方』『茜さす日に嘘を隠して』を読んだ20代男女の本音トーク【配信レポート】

文芸・カルチャー

公開日:2022/7/22

本音ゼミ

 若者たちのリアルな心情を描いた小説『青く滲んだ月の行方』(青羽悠/講談社)、『茜さす日に嘘を隠して』(真下みこと/講談社)の発売を記念して、2作品を読んだ7人の20代男女による配信企画「本音ゼミ」がスタート。お笑いコンビ「ラランド」のニシダ、タレントのまつきりながMCを務め、ゆう(総合職OL、YouTuber)、イワシ(YouTube「ゆとりモンスターズ」メンバー)、加藤敏美(女性向け美容関係ベンチャー企業の共同創業者)、絡新婦ぽぴ(大学生、アイドル)、はな(デザイナー)とともに、答えの出ない悩みについて全5回にわたってトークを繰り広げた。その模様をレポートしよう。

advertisement

性別による区別はどこまで意味があるのか?

「本音ゼミ」第1回のトークテーマは「男女の友情は成立するのか」。『茜さす日に嘘を隠して』では、大学生の智子、愛衣、涼太の3人が、男女間における友情と恋愛の違いを語り合うシーンが描かれている。実際のところ、20代の若者たちは男女の友情についてどう考えているのだろうか。

 まず、「性別による区別はどこまで意味があるのか?」についてトークが始まると、レズビアン寄りパンセクシャル(あらゆる性別の人が恋愛対象になる全性愛者)を公言する加藤敏美さんが、「体格差など生活における男女の区別は必要だけど、人間関係での区別は必要ない」と発言。はなさんも、「生物学的に言うと、染色体のXとYで分けられているだけ」と同調した。

 ほかのメンバーも、大半は「男女の友情は成立する派」。しかし、実際に男女間で友情を育もうとしてもうまくいかない場合も多いと話す。ネックになるのは、「自分は友達だと思っていたのに、相手から恋愛感情を抱かれてしまう」というケースだ。ゆうさんは「大学で男女関係なく友達を作ろうと思ったけれど、女子からは『男子とばかりいる』と思われ、男子からは恋愛対象として見られてしまう」とリアルな悩みを告白。絡新婦ぽぴさんは「男性から性的なまなざしを向けられると『あ、女体として見ていたんだな。理性のない方としゃべっていたんだな』と思ってしまい、悲しくなる」、MCのまつきさんは「友達になりたいと思う異性がいたら、『あなたじゃなくて別の男性が気になっている』と釘を刺す」と話し、男女間で友情を成立させる難しさを明かした。

 一方、男性のイワシさんは「男女の友情はない派」。「関係を持ちたい女性以外とは会わない」と、率直すぎる意見を述べた。とはいえ、友情から恋愛に発展することもあるそうで、「最初は意識していなくても、接していくうちにめっちゃいい子だなと思うことも。中身を見て、友達から恋愛対象に変わることもある」と語っていた。

友情の“好き”と恋愛感情の“好き”の違いは何?

本音ゼミ

 続いて、「友情の“好き”と恋愛感情の“好き”の違いは何?」という話題に。このテーマに関しては、男女間で大きく意見が分かれた。

 男性陣が、「結局、性欲を抱くかどうか」(ニシダさん)、「外見を抜きにしてリスペクトでき、ムラムラしないのが友情。外見的特徴も含めて好きで、なおかつムラムラする人が恋愛対象」(イワシさん)と身も蓋もない意見を述べる中、加藤さんは「ひとりでいるのが好きだけど、自分の時間を犠牲にしても会いたいのが恋愛感情。そこまでではないけれど、一緒にいたいのが友達」と持論を展開。直感タイプのまつきさんは「『この人、好きぴ!』と、自分の感覚を信じて判断している」と述べた。

 はなさんは、「私は人が好きだし、男女の友情もあると思う。でも、心の不安があったり、どん底に落ちていたりする時に、友情が理性を越えることもあるかもしれない」とリアルな意見を告白。絡新婦さんは、「恋愛感情と友情は、二元論的に語れるわけではない。自分は恋愛至上主義ではないし、そもそも彼氏彼女よりも友達のほうが下だと思われるのも嫌。友達だってすごい」と熱く語った。

 さらに、絡新婦さんは小説『茜さす日に嘘を隠して』の一文を例に挙げ、こう述べた。「作中に『男女の友情なんて成立しない。涼太は例外』ってセリフがあるんですけど、『この人は例外』とか『本来は男女の友情は成立しない派だけど、もしかしたら友情が芽生えることもあるかもしれない』っていう納得の感情は言語化できないし、理論立てて語れません。でも、それは確かに存在する感情で、誰にも否定できるものではないはず。そういう感情を大切にしていく社会だったらもっと楽なんだろうなと思うし、そういうあやふやな感情を大切にしていきたいなと思います」。

 こうした議論を踏まえ、加藤さんがパンセクシャルの立場から、男女の恋愛観の違いについて次のように語った。「女性は“好き”という感情がすごく曖昧。性格が好きなのか、見た目が好きなのか、男性に比べて曖昧になりがち。そのせいか、異性愛者の女性でも、説得すると意外となんとかなるもの。好きだという気持ちを真剣に伝えて、女性同士で付き合うメリットを説明すると、好意を抱いてもらえることもある。そういう意味で、男女間の友情、恋愛は突破できると思っています」。その一方で異性愛者である男性陣は「自分の場合、説得されても同性とはなかなか恋愛に発展しづらいと思う」と主張し、意見の相違が見られた。

 今回の討論を踏まえ、最後に加藤さんが考えたフレーズは「女が好きなときは説得。男が好きなときは注意」。男性・女性どちらとも交際経験がある加藤さんによると、「女性とのコミュニケーションは比較的柔軟なので、説得すれば恋愛に発展することも。一方、男性の場合、自分の経験上、友情と恋愛の線引きがはっきりしているように感じられました」とのこと。そのため、男性に恋愛感情を抱いた時には、相手が自分をどのように捉えているのか、注意深く観察したほうがいいと考えている模様。この言葉を『茜さす日に嘘を隠して』の表紙に飾り、第1回「本音ゼミ」を締めくくった。

文=野本由起

あわせて読みたい