南沙良さんが選んだ1冊は?「古本屋は私にとって出会いの場。この本も運命的に巡り合った一冊」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/8/9

南沙良さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、南沙良さん。

(取材・文=倉田モトキ 写真=TOWA)

 小学生の頃はずっと図書室に入り浸っていたという本好きの南沙良さん。辻村深月作品にはまり、小6の時に出会った太宰治の『女生徒』が彼女の読書人生を変えたそうだ。

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「辻村さんの小説もそうですが、きれいな文章に惹かれるんです。“普段からこんな言葉遣いができたらなあ”って憧れてしまう。この『神様のいる街』を選んだのも同じ理由で。古本屋さんで見つけて、最初の数行で心を持っていかれました」

 著者は吉田篤弘。神保町と神戸を舞台に、彼の過去の記憶と思い出をたどる私小説的なエッセイだ。

「普段、あまりエッセイを読まないこともあって、情緒に満ちあふれた世界観に感銘を受けました。街の風景が頭に浮かんでくるし、季節ごとの温度や匂いまで感じられて。読んでいる時は心が浄化されていくような、穏やかな気持ちになりましたね」

 同書の中で吉田さんは目的なしに神保町の古書街に通い詰める。こうした情景にも共感を覚えたという。

「古本屋さんって私にとっては出会いの場なんです(笑)。偶然見つけた魅力的な文章たちが、私を非日常的な世界へ連れていってくれる。すでに絶版になっている素敵な本と出会えた時は運命さえ感じますね(笑)」

 そんな南さんが「脚本を読んだ時から撮影が楽しみでした」と話すのが主演映画『この子は邪悪』。「読む手が止まらなくなった」というほどの、その内容とは?

「ある不幸を背負った家族の話ですが、その奥には想像以上の謎が隠されていて。家族の在り方や愛の形は人の数だけあるんだなと考えさせられる物語でした。完成した映画を見たら、脚本では歪さを感じた玉木宏さん演じる父親の愛が純粋に思えたり。ご覧になった方がどう受け取るのか、すごく気になります」

 主人公である花も心に傷を負った少女。内に秘めた思いを、南さんは表情や仕草で繊細に表現していった。

「目の動きや時おり見せる笑顔など、細かい動作を監督と話し合いながら決めていきました。意外とこうした役をいただくことが多いので大変さはなかったです。むしろ、明るく元気なほうが演じていて違和感があります(笑)。それに辛い役柄ではありましたが、現場はすごく楽しくって。特にラストの家族4人でのシーンは感情が複雑で、皆さんのお芝居を受けて自分がどんな気持ちになるのか分からなかったんです。それでも、本当の家族になったような瞬間があったので、ぜひ注目して見てください」

ヘアメイク:藤尾明日香 スタイリスト:道券芳恵 衣装協力:マルニ(マルニ ジャパン クライアントサービス TEL0800-080-4202)

みなみ・さら●2002年6月11日、東京都生まれ。モデル活動を経て、17年に映画『幼な子われらに生まれ』で女優デビュー。出演作に映画『居眠り磐音』『もみの家』『女子高生に殺されたい』、ドラマ『ドラゴン桜』『六畳間のピアノマン』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など。

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映画『この子は邪悪』

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監督・脚本:片岡 翔 出演:南 沙良、大西流星(なにわ男子)、桜井ユキ、玉木 宏ほか 9月1日(木)より全国ロードショー 
●一家で交通事故に遭い、窪家の父は脚に障害が残り、母は植物状態に、妹は顔に火傷を負った。姉の花も心に深い傷を抱えながら日常を送っていたが、そこへ自身の母の奇病の原因を探る少年が訪れ、心を通わせていく。そんなある日、奇跡的に目を覚ましたという母が家に戻ってくる。
(c)2022「この子は邪悪」製作委員会