最新監督作品が公開中! 今、齊藤工さんの心を占める一冊とは?

マンガ

更新日:2022/9/26

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最新監督作『女優iの憂鬱/COMPLY+-ANCE』が、短編映画企画『MIRRORLIAR FILMS Season4』の一つとして公開中の齊藤工さんに、今年の1冊をうかがった。

取材・文:松井美緒 写真:TOWA ヘアメイク:KAZUOMI スタイリング:Yohei “yoppy” Yoshida / 吉田 洋平

ーーコロナ禍を過ごすうち、“菌”の世界に見せられた齊藤工さん。今読んでいるのは、河合隼雄賞を受賞した土研究者・藤井一至の著作『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』。この一冊に、非常に多くのことを考えさせられていると言う。

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「地球の誕生は約46億年前。大地が生まれたのは約5億年前。そこからミミズや菌類が、如何に生命を生み出す土壌を作ったかという歴史の本なんです。ミミズが土を生成し、樹木とキノコの進化によって地球の物質のバランスが保たれるようになった。その歴史の長さに比べたら、人間が地球上に登場したのはごく最近のことです。ミミズと菌類がいなかったら僕らの生命体というものは存在しない。人間がミミズや菌類、植物、昆虫から受けている恩恵は、計り知れないほど大きいんです」

ーーそれは、齊藤さんの主演映画『シン・ウルトラマン』の主題とも結びつくものだった。

「『シン・ウルトラマン』では、知的生命体である人間を取り除いた地球というものの美しさが語られていました。『風の谷のナウシカ』にも描かれていましたが、人間が作ったヒエラルキーのもとでは最下層にある植物や昆虫が、地球を浄化する働きをしている。彼らから見たら、人間は地球を汚す癌なんじゃないか。人間さえいなければ、という結論は、つねに僕にのしかかってきます。でも、きっと人間の生まれた意味もある。それを『シン・ウルトラマン』を通して、庵野秀明さんに教えられたように思います」

ーー「自己のためではなく、周りのため、未来のために生きる。『大地の五億年』に描かれたミミズや菌類の姿は、映画製作にも通じるものだと齊藤さんは言う。

「自分が主人公すぎないというのが微生物の世界にはあって、そこに感動しちゃうんです。映画でもアートでも長く残るのは、そういった思想のある作品じゃないかと思うんです。例えば、『MIRRORLIAR FILMS Season4』にも参加されている福永壮志監督の作品。第1作『リベリアの白い血』の中のリベリアに生きる人々も、2作目の『アイヌモシリ』に描かれたアイヌ民族のフィロソフィーも、『大地の五億年』と同様のテーマ性を持っていると感じます。僕は初めて『リベリアの白い血』を観たときに何という作家性だろうと感動して、『アイヌモシリ』にはスチールカメラマンとして参加させていただきました。それくらい僕は福永さんを尊敬しているし、確実に未来の鍵を握る方だと思っています」

ーー映画監督・齊藤工が目指すものは?

「自分自身に、自分が生きている時間に、スポットを当てすぎないというのが、僕の大きなテーマになっています。『女優iの憂鬱/COMPLY+-ANCE』も、そういった意図でコロナ禍の今を映画に遺そうという試みの一つです。僕は、ミミズや菌類のように、自分のためではなく、未来のために今を描きたいと思います。その表現が僕の死んだ後も遺って、未来の知見の一つになったらいいなと。未来につながる作品を作っていけたらいいなと思います」

 

(c)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

『MIRRORLIAR FILMS Season4』

監督:池田エライザ、GAZEBO、齊藤工、福永壮志、藤井道人、真壁勇樹、水川あさみ、村上リ子、ムロツヨシ 出演:アイビー愛美、伊東蒼、伊藤沙莉、大西礼芳、川久保晴、窪田正孝、Dirk Rebel、西田薫子、フリッツ、リオ、ムロツヨシ、若林拓也 配給:イオンエンターテイメント/ティ・ジョイ 配給協力:ナカチカ 全国公開中

「MIRRORLIAR FILMS」は、クリエイターの発掘・育成を目的に、年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した映画製作に挑戦するプロジェクト。36名が監督した短編映画をオムニバス形式で4シーズンに分けて公開。このSeason4がフィナーレを飾る。齊藤工監督作品『女優iの憂鬱/COMPLY+-ANCE』は、女優・伊藤沙莉がコンプライアンスを気にしすぎるスタッフから取材を受ける現代風刺コメディ。その他、『アイヌモシリ』の福永壮志監督、『新聞記者』の藤井道人監督、水川あさみ、ムロツヨシ、池田エライザなどが監督として参加。

【プロフィール】

さいとう・たくみ●1981年、東京都生まれ。2001年、俳優デビュー。2022年は映画『シン・ウルトラマン』に主演、9月より『グッバイ・クルエル・ワールド』が公開。齊藤工名義で映画監督としても活躍。2017年、『blank13』で上海国際映画祭アジア新人賞部門最優秀監督賞受賞。23年、『スイート・マイホーム』公開予定

『大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち』

地球には最初、土がなかった。地球上に生き物が誕生し、遺体と岩石から土が生まれた。土は植物や昆虫の躍進を支え、相互に影響し合い、さらに恐竜の消長や人類の繁栄に場所を貸してきた。土研究者が土に残された多くの謎を掘り起こし、土と生き物の歩みを追った5億年のドキュメンタリー。

 

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