古田新太「 “エッセイはエンターテイメントじゃなければいけない”っていうのがおいらの持論」
更新日:2013/12/19
実は街の中にゴロゴロしているんですよ。
それを見つけられるかどうかじゃないかな」
と古田さんは言う。
“どうして、そんなに愉快なエッセイが書けるのですか?”と投げた質問に対する彼の答えだ。では、どうすればネタになりそうな人物を見つけられるのか……?
「一番大事なのは、
面白そうだなって思える現場に飛び込むこと。
たとえば、知らない居酒屋に行って、
そこの店員さんや飲んでる人たちと
どれだけ仲良くなれるかが勝負で。
2回目に行った時、店の大将や女将さんに、
『あ、また来てくれたんですね』
って言ってもらえたらこっちのもん。
そうすれば、ほかの常連客とも
どんどん知り合いになれるし、
驚くようなエピソードに出会う機会も増えるってわけ」
こうした積極的な姿勢は性格的なものもあるが、かつて、ラジオのパーソナリティをやっていたこともあり、「普段からネタを探すクセがついちゃってる」のだと言う。
「しかも、聞くだけじゃなく、
こっちも飲みの席でいろんな話をするんだけど、
別の場所で2~3回ほど話せば、
内容がブラッシュアップされて、
話がどんどん面白くなっていくんだよね。
だからエッセイで書く頃には、
ムダが一切ない、洗練された小咄になってるの(笑)」
また、古田さんにはエッセイに対する強い持論がある。それは「エンターテイメントでなければならない」というものだ。
「やっぱり、読む人に楽しんでもらえて
なんぼだと思うんですよ。
最近ではブログやツイッターみたいに、
自分の言葉を発信できる場もが多いけど、
それとエッセイは別物で、
きちんと読む人のことを考えて書く責任がある。
だからこそ、おいらのエッセイでは
ものすごくオチにこだわっているんです。
最後に、『バカだなぁ~』って幸せな気持ちになってもらう。
それが一番だと思うからね」
(取材・文=倉田モトキ 撮影=山口宏之)
ふるた・あらた●1965年、兵庫県生まれ。 劇団☆新感線の看板俳優。また、蜷川幸雄や野田秀樹、松尾スズキらの舞台にも多数出演。現在、TBS『レジデント〜5人の研修医』に出演中。12月19日(水)からはSHINKANSEN☆RX『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックⅢ』を東京・大阪で上演。
『めしばな刑事タチバナ』(1〜7巻)
40代独身の警部・立花が食へのこだわりとウンチクを語る大人気コミック。その内容は牛丼店からカップ焼そば、はては地方限定のアイスクリームにまでのぼり、あらゆるB級グルメの“めしばな(=飯の話)”を展開していく。その造詣の深さが支持され、『このマンガがすごい! 2012』では「オトコ編」で9位を獲得。
『ドン・ジュアンの口笛』
古田新太 講談社 1000円 12月12日発売
実力派俳優として活躍中の古田新太が贈る、日々の出来事をつづったユーモアあふれるエッセイ集。飲み屋で知り合った常連客との驚きの交流や、舞台で生み出すナンセンス・コメディのこだわりなど、独自の視点で捉えた 31のエピソードを掲載。何気ない言葉の中にも人間への愛がびっしりと詰まった文章に、なんとも言えぬ幸せを感じる一冊。