珠城りょうさんが選んだ1冊は?「自分の足で力強く人生を歩む主人公の姿が心に沁みました」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/10/10

珠城りょうさん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、珠城りょうさん。

(取材・文=野本由起 写真=TOWA)

 昨年、宝塚歌劇団を退団し、ゆっくり過ごす時間が増えたという珠城さん。読書でもしようと伸ばした手が触れたのは、学生時代に愛読した一冊だった。

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「中学時代、赤川次郎先生にハマり、『三毛猫ホームズ』シリーズなどのミステリーを読み漁っていたんです。そんな中、出会ったのがテイストの違うこの本。今の私ならどう感じるだろうと思って読み返しましたが、やっぱり心を動かされました」

 主人公は、亡くなった姉の声が自分にだけ聞こえるようになった中学生の実加。ふたりで困難を乗り越えていく姉妹の絆、実加の成長が眩しい青春ファンタジーだ。

「時にはシビアな出来事も描かれますが、コミカルな描写も多いので読みやすくて。それに、赤川先生の作品って、女の子が少し背伸びして大人の恋をしようとする描写が多いんです。初恋や友達をめぐる場面では実加に心情を重ね、壁を乗り越えようとする時には姉の目線で実加を応援する気持ちにもなれる。タイトルどおり“ふたり”の視点で読めますし、共感しやすい作品だと感じました。しかも、ラストが切ないんですよね。今読むと、自分の足で力強く人生を歩む実加の姿が、より深く心に沁みました」

 環境が変わり、読書の幅だけでなく仕事の幅も広がったそう。10月には朗読ミュージカルに初挑戦する。

「『この役を珠城が演じたらどうなるんだろう』と、想像もつかない作品にチャレンジし、いい意味で皆さんの期待を裏切りたいと思っています。今回の舞台も、まさにそういう作品になりそうです」

 珠城さんが演じるのは、女性マンガ家と彼女が描くマンガの作中人物・バンクォーの男女二役。シェイクスピアの『マクベス』をもとに、「もしもマクベスの死に、友人・バンクォーが関わっていたら」という大胆な解釈を加えた劇中劇が描かれる。

「『マクベス』は男たちの政争劇という印象が強かったのですが、脚本・演出の斎藤栄作さんから実は壮大なラブロマンスだという新たな視点を提示されました。劇中のバンクォーは、マクベス夫人を愛してしまったが故に道を踏み外していく男性。一方マンガ家は、見返りを求めずに作品を描き、今という時を必死に生きています。彼女の情熱とステージに立つ私たちをリンクさせ、皆さんにお伝えできたらうれしいです。朗読劇ですが歌もありますので、肩の力を抜いてお楽しみください」

ヘアメイク:河上智美(Rouxda’) スタイリスト:久保コウヘイ

たまき・りょう●1988年、愛知県生まれ。2008年、宝塚歌劇団に入団し、16年には異例のスピードで月組男役トップスターに。21年、宝塚歌劇団を退団。以降、ドラマ『マイファミリー』、舞台『8人の女たち』などへの出演、ソロコンサートの開催と、活動の幅を大きく広げている。

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脚本・演出:斎藤栄作 出演:珠城りょう、高橋 愛、千葉翔也、宮 菜穂子 10月15日(土)・16日(日) ところざわサクラタウン ジャパンパビリオンホールA
●桜庭あきら(珠城りょう)は、物語の主人公になりきって執筆するマンガ家。その新作は、シェイクスピアの戯曲『マクベス』でマクベスに暗殺されるバンクォーの物語だった。『マクベス』の“if”を描いた劇中劇を交え、珠城りょうが男女二役を演じる朗読ミュージカル。
(c)READPIA/朗読ミュージカル『Unrequited Love』マクベスを殺した男