内田雄馬さんが選んだ1冊は？「自分らしくマイペースに戦うしかない。その姿に勇気をもらいました」

　毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、内田雄馬さん。

（取材・文＝野本由起　写真＝TOWA）

「僕のバイブルなんです」と、内田さんが差し出したのは『ヒカルの碁』。

「ヒカルは囲碁の名人・藤原佐為の霊と出会い、いつしか自分も囲碁にのめりこんでいきます。佐為は途中で消えますが、それでも彼から受け継いだものはヒカルの囲碁の中に残っている。同じようなことは、僕たちにもあると思うんです。例えば、お父さんやおじいさんから教わったことって自分の中に残りますよね。僕の場合は、先輩方とのお芝居を通していただくものも多くて。そこに宿った魂を、今度は僕が誰かに伝え、自分の魂が受け継がれていく。『ヒカルの碁』を読むと、思いを残すことの大切さを感じます」

　登場人物の中で、内田さんが自分を重ねたのは本田敏則。プロ試験にギリギリで合格した棋士だ。

「本人も、自分は天才ではないという自覚があるんですよね。でもある時、屋台のおじさんに職業を尋ねられ、『棋士です』ときっぱり答えるんです。誰が上かなんて関係なく、棋士はみんな棋士。自分らしくマイペースに戦っていくしかないんだと気づくんです。その姿が自分のように思えて。僕も平凡なりに自分にできることを見つけよう、一歩ずつ道を切り拓こうと勇気をもらいました」

　そんな内田さんが全力をぶつけたのが、『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』。WEB小説から始まり、ＴＶアニメも大ヒットした異世界転生ファンタジーが、このたびスクリーンに初登場する。内田さんが演じるのは、劇場版オリジナルキャラクター・ヒイロ役。国と仲間を守るため、命懸けで戦う大鬼族（オーガ）を熱演している。

「ヒイロは責任感が強く、成熟したキャラクター。生真面目なところもありますが、裏のない性格で演じていて気持ちよかったですね。ただ、まっすぐな人物を演じる時は、こちらも熱量を高めないと力強さが伝わりません。瞬発力もパワーも必要な、短距離走のような収録でした」

　出演してあらためて感じた、このシリーズの魅力とは？

「まさに異世界転生ものの王道ですよね。王道的な要素を表面的になぞるだけでは形骸化してしまいますが、この作品は細部まで王道を突き詰めているのが魅力。だからこそ、感情移入しやすいんでしょうね。今回の劇場版は『転スラ』好きの人はもちろん、オリジナルストーリーなので、これまでのシリーズを知らない人でも楽しめるはず。ぜひ、王道の気持ちよさを味わってください」

ヘアメイク：花嶋麻希　スタイリング：奥村 渉　衣装協力：シンセティックレザーブルゾン3万8500円（Iroquois / Iroquois Head Shop TEL03-3791-5033）、パンツ1万3200円（FORMER / NINEBALL,LTD. TEL03-5784-1600）

アニメ『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』