EXITりんたろー。「いやな思いをする人が少ない笑いを選ぶようになった」美容の基礎からメンタルケアまで網羅した「自分を大切にする本」《インタビュー》

健康・美容

公開日:2022/11/16

りんたろー。さん

 チャラ男キャラで大ブレイク、活動の幅を広げているお笑いコンビ・EXITのりんたろー。さん。「美と笑いの伝道師」とみずからを語る彼が、このたび、自身初となる著書を刊行することになった。美容メディア「VOCE」での連載「EXITりんたろー。美容道」などをまとめた、『自分を大切にする練習 コンプレックスだらけだった僕が変われたすべてのこと』(講談社)だ。

 りんたろー。さんのこれまで、そしてこれからを見つめる書き下ろしの自伝エッセイと、彼が探究してきた具体的かつ実用的なセルフケアの方法から成る本書は、りんたろー。さん自身も「『これは美容本なの?』と聞かれたら、YESとも、NOとも言える本ができあがりました」という、これまでに見たことのない書籍に仕上がっている。はじめての著書、執筆の感想は? りんたろー。さんが考える、美容や笑いの自由さとは? お話をうかがった。

(取材・文=三田ゆき 撮影=川口宗道)

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どんなフェーズの人も入ってこられるように、入り口をたくさん設定したかった

自分を大切にする練習 コンプレックスだらけだった僕が変われたすべてのこと
自分を大切にする練習 コンプレックスだらけだった僕が変われたすべてのこと』(りんたろー。/講談社)

──初のご著書となるそうですが、文章を書くことはお好きでしたか?

りんたろー。さん(以下、りんたろー。) 僕、メディアの世界にいながら、「自分の気持ちを言葉にする」ということが、あんまり得意じゃないんですよ。テレビなどの現場では、自分の考えていることをすごく短い時間にまとめなくてはいけませんよね。自分の奥底にある部分を一番素直に表現できるのは、実は文章なんじゃないかという感覚は、ずっと持っていたんです。だから、自分の考えを誰かにシェアしたいと思ったときに、それを文章や本にして伝えるというのは、僕の中で自然な流れでした。

 インプットしてくださるみなさんも、「短い時間になにかを伝える/受け取る」ということが重視されている今、テレビでも、動画配信サービスでも、情報を受け取るときにスピードを求められているのではないでしょうか。その点でも、本はイントロを飛ばされずに、こちらの伝えたいものをすべて、その人のタイミングで受け取ってもらえるような気がしていますね。

 僕の心の内側を綴ったエッセイ部分は、最初は、「芸人がこういうことを晒すのはどうなんだろう」という葛藤もあったのですが、僕が得てきたものを伝えるためには、そこを書かないわけにはいかなかったし、変な照れはもういらないかなと。僕は美容を通して、いろんな言葉、たくさんの人に背中を押してもらったので、今度は誰かの背中を押せるひとつの選択肢となるようななにかが提案できたらと思いました。

──りんたろー。さんのこれまでのお話はもちろん、美容についても、洗顔方法などの美容の基礎から、インナーケア、メンタルケアといった発展的な内容までカバーされていて、本当におもしろく拝読しました。書籍の見た目も実用書的ですし、これまで自分のケアをしてこなかったという人も、手に取りやすそうですね。

りんたろー。 そう言ってもらえるとすごくうれしいです! 美容については、僕もさまざまなフェーズを経験してきましたし、どんな立場の人でも入って来られるように、入り口をたくさん設定できるといいなという気持ちがありました。

 そもそも僕が美容に興味を持ったのは、EXITとしての露出が増え、自分を客観的に見ることが多くなったのがきっかけです。「もっと肌がキレイだったらな」「歯が白く、キレイに並んでいたらいいのに」と思うにつれて、それを実現する方法はないのかなと、スキンケアをしてみたり、サロンに行ってみたりということをはじめました。そうすると、美容に取り組んでいるときに楽しいのは言うまでもなく、その結果として変化があれば、まわりの人に「ここ変わったね」「キレイになったよね」と声をかけてもらえて、その言葉をまたモチベーションにしていけるところも、美容の楽しい一面だって気づいたんですよ。そういったおもしろさを伝えながら、美容に向き合ったことによって、さまざまなジャンルで自分にとって必要なものだけを残せるようになり、シンプルな生活が送れるようになった流れなんかも、みなさんにシェアできるんじゃないかなと思っていて。

 この本がはたして「美容本」なのかどうかは、僕もいまだに疑問に思っているところですが(笑)、みなさんがふだんの生活でやっている、顔を洗う、食事をするといったことが美容につながり、最終的には「自分を大切にする練習」になるのだという、気づきがあればいいなと思いますね。

美容はひとつの選択肢。「選ばない」こともできるムードを笑いでも実現したい

りんたろー。さん

──りんたろー。さんが自分に合ったものを見つけ出していく過程では、肌の反応や体の反応など、体や心の声に耳を傾けるのがおじょうずだなという印象があったのですが。

りんたろー。 そういう体や心の声って、みなさんちゃんと発していると思いますよ。おそらく忙しい生活の中で、そこに耳を傾けることが難しくなっているだけなんです。

 僕も、今までは、たとえば肌に赤みが出たとき、どうして赤みが出ているのかもわからないまま、いろんなコスメを試して対処しようとしていました。そんなことをしていたら、どのコスメが原因だったのかもわからないのにね(笑)。そんな事態を防ぐためには、コスメをひとつだけ変えて、それを1カ月、2カ月続けてみて、赤みが引かなければきっとそれが原因だろう……というふうに、ひとつひとつ原因をはっきりさせていくことが必要だったんです。

 そういう検証を繰り返していると、なにをしているときでも、今の自分の心を乱している、イライラさせている原因ってなんだろうって、だんだんわかるようになってきたんですよ。心の乱れやイライラと向き合えるようになったら、自分がいやだと思うこと、楽しいと思えることがはっきりしてきて、自分の心に耳を傾けられるようになった。選べるときはちゃんと選んであげて、自分をよろこばせる努力ができるようになったんです。僕も、はじめからじょうずだったわけじゃなく、そのスキルを学んで身につけていったんですね。みなさんもきっと、自分の声を聞くことが後回しになっているだけだと思いますよ。

りんたろー。さん

──容姿いじりが鳴りを潜めたり、男性のメイクやネイルに注目が集まったりするまさにそのタイミングで「美容をやってみよう」と思われたのは、世の中の声を聞くこともおじょうずだからでは?

りんたろー。 どうでしょう? 社会やお笑い界がどんどん変わってきたという事実もありますし、そんな中にも今までの笑いが残っていて、それがよかった時代もあるといった状況で、“EXITのりんたろー。”が選べるものが変わってきたことは感じていました。ある種類の笑いに対して、おもしろいと思う人と、そうでないと思う人が分かれはじめていたというか……。そういう世の中で、僕がメディアに出て見た目のイメージを話題にしたり、自虐的に話したりすると、傷ついたり、心がギュッとなる人がいるかもしれませんよね。SNSなどでいろいろな意見が聞こえてくるようになったこともあり、選択可能な場面では、いやな思いをする人が少ない笑いを選んでいけたらいいなと思うようになりました。

 そうやって選択できる場面ばかりではないこともわかりますが、葛藤しても「EXITのりんたろー。としてはどうだろう?」と客観視したときに、きちんと選べる自分でありたいですね。誰かが選んで見せることで、今までそれを選べなかった人も、「そんな選択肢があったんだ!」と気づくことができるかもしれない。社会もお笑い界も、そんなふうに変わっていけるのではないかと思います。

──本書は、どんな人に読んでもらいたいと思われますか?

りんたろー。 いろんな人に手に取ってほしいなと思います。美容に興味がある人はぜひとも、「美容」という言葉がハードルになっていていまいち踏み込めない人、自分を後回しにしてしまっている人、空気を読みすぎて疲弊している人にも読んでもらいたいですね。それから、僕のことをあまり知らない人が、「意外とこういうやつなんだ」ということを知ってくださる機会にもなるんじゃないかと思っていて。できたら僕のことを知らない家族にもすすめて、回し読みしてほしいですね。

りんたろー。さん

──回し読みして本書の価値をたしかめたら、ひとり1冊、必携の書になりそうですね。

りんたろー。 そうですね(笑)。美容っていうと、コスメとかエステとか、そういったイメージを最初に思い浮かべがちですよね。そうなるとやっぱり、取っつきにくさを感じる人もいると思います。でも、僕が伝えたいのは、洗顔だったり食事だったり、すでにみなさんが「生活の一部として実践してしまっている美容」もあるんですよということ(笑)。そのやり方をちょっと見直すだけで、いろんなものがすごく変わってくるし、僕はそれでこんな素晴らしい経験ができたんだよということも、シェアできるといいなと思います。

 美容って、かならずしも選ばなくてはいけないものではありません。一方で、「キレイでありたい」という欲求に、性別や年齢、イケてる顔かブサイクかは関係ない。選べるシーンで、選べる範囲で、ひとつの選択肢にしてもらえたらうれしいです。いろんな立場の人が簡単に入ってこられるけれど、反対に「選ばない」という選択もできる──そういうムードを、美容においてはもちろん、お笑いに関しても実現できたらいいですね。

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