40歳、初婚でいきなり14歳男子の母に!? 実話コミックエッセイ『14歳男子の継母になった私』原作者・べにゆうさんインタビュー

マンガ

公開日:2022/12/19

14歳男子の継母になった私
14歳男子の継母になった私』汐田まくら:著、べにゆう(キッチン夫婦):企画・原案/KADOKAWA)

 14歳の息子を持つ男性と結婚することになった、べにゆうさん(当時40歳)が、悩み、傷つきながらも少しずつ家族との距離を縮めていく実話コミックエッセイ『14歳男子の継母になった私』汐田まくら:著、べにゆう(キッチン夫婦):企画・原案/KADOKAWA)。「毎日が発見ネット」で連載中の人気エッセイをコミカライズした一冊です。原作者のべにゆうさんに作品に込めた思いを聞きました。

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――家族のことについて書こうと思ったきっかけを教えてください。

べにゆうさん(以下、べにゆう):結婚して3人で暮らし始めた当初は、慣れないことばかりでとにかく大変な日々でした。ネットでステップファミリーの体験談を探したり、子育て本を読みあさったりしたこともありましたが、教科書通りにいくことは少なかったです。それでも、毎日一緒に生活するうちに、徐々に息子と良いコミュニケーションが取れるようになってきて、「日々のことや自分の思いを言葉で残しておきたい」と思うようになりました。

 自分の家族についてネットで発信することに不安もありましたが、夫に相談すると「自分たちの話を残してくれたらうれしいよ」と言ってもらえました。自分の経験を誰かに共感してもらえたらうれしいし、そのことが自信にもつながりますしね。

――旦那さんとはどんなふうにして出会ったのでしょうか?

べにゆう:夫は前の奥さんと離婚してから8年間ほど、育児と仕事のみに集中して過ごしていましたが、2011年の東日本大震災を体験したことで、「もう独り身でいたくない。もう一度、人生の経験や愛情を分かち合えるパートナーが欲しい」とひしひし感じたそうです。私も同じような思いで、真剣モードの婚活中でした。

 そんな中、結婚情報サイトで出会い、その時に全く同じ本を読んでいたことからお互いに興味を持ちました。夫はいつも気さくに話しかけてくれて、普段は会話ベタな私も「なぜかこの人となら話が膨らむ!」と感じていました。でも夫の方は、なぜか私にだまされるかもしれないと思っていたそうです(笑)。

14歳男子の継母になった私

14歳男子の継母になった私

――大きな子どもがいる人と結婚することについて、当時の心境はいかがでしたか?

べにゆう:出会った時から子どもがいる人だとは知っていたし、自分でよく考えて選んだつもりだったけど、「間違っているかもしれない……後悔するかもしれない……」と不安に押しつぶされそうになる日もありました。

 だけど考え過ぎても始まりません。「ちゃんと考えて決めた。この人と息子と新しい人生を歩むのだと。あまりお気楽に考えてもいけないけど、心配は尽きないものだから」と自分で自分を納得させ、割り切って考えるようにしていました。

――初婚でいきなり14歳男子の母になるというのは、難しい場面が多々あったのではないでしょうか?

べにゆう:日々の生活の細かな場面で困ることがありました。例えば、洗濯物の出し方、お風呂の使い方などです。夫とは話し合ってお互いに生活スタイルを合わせていくことができましたが、息子に対してそうはできませんでした。たぶんもっと小さい子どもだったら、すんなり伝えられたのではと思います。でも息子は14歳。生活のルールはすでに身についているものがあります。今まで教わってきたことを否定したくなかったので、直してほしい時にどう言ったら良いのかすごく悩みました。

――会話が弾まないふたりきりの食卓は、緊張感が伝わってきて、読んでいてハラハラさせられました。

べにゆう:夫は、「(息子の)元気はべにゆうさんとご飯ふたりでも大丈夫みたいだよ」と言うのですが、私は正直「いや~ふたりは困る……どうしよう」と頭を抱えていました。会話の間が開き過ぎたら気まずいだろうと、食事を始める前に質問を用意しておくこともありました。だいたいは学校のことや部活のこと、バイトのことなどです。でも息子の答えは、「同じ」「大丈夫」「微妙」「普通」という感じで、すぐに会話が終わってしまうのです。無音状態に耐えかねたので、テレビでバラエティー番組を流しておいて、そこからなんとか会話のきっかけを探していました。

14歳男子の継母になった私

14歳男子の継母になった私

――赤ちゃんを授からない人生を歩むことについて葛藤する場面には、心を揺さぶられました。作品に書かれた当時から数年がたち、現在の心境はいかがでしょうか?

べにゆう:実は今もそんなに変わっていないかも……。欲しかったなぁという思いが、ふとした瞬間に頭をよぎります。もう年齢で諦めがついたのもあってもやもや感はなくなりましたが、「欠けている感」はずっと消えないのだと思います。

14歳男子の継母になった私

――「お母さん」という言葉の重みに思い悩み、お風呂で涙するシーンは印象的でした。

べにゆう:私が息子にとっての「お母さん」じゃないのは分かっているし、「お母さん」と呼ばれたいわけでもないのにどうして涙が出てくるのか……。息子の産みのお母さんの存在は大切で、ずっと交流していてほしいと願う気持ちにうそはありません。もちろん息子も夫も別に悪くないのも分かっています。十分許容範囲なのに、なぜここまで胸が苦しく泣いてしまうんだろうと自分でも不思議でした。

 産みのお母さんと息子、夫の間には絶対に切れることのないつながりがあります。そこに私は入り込めないことを突き付けられたように感じ、そのことがとても寂しく、まるで違う輪の中に存在しているような感覚があったのだと思います。

14歳男子の継母になった私

――ご自身や家族のことが漫画になると聞いた時はどう思いましたか?

べにゆう:一言で言うと「えっ?」です。夫とも「漫画になるって、あの漫画だよね?」とよく分からない会話をしていました(笑)。どんなふうになるのかは全然想像がつかなかったのですが、やはりうれしい気持ちはありましたね。今では、夫は汐田まくらさんの描く私をすごく気に入っています。

――ご自身の身に起こった出来事を、漫画というフィルターを通して客観的に読んでみて、どのように感じましたか?

べにゆう:いろいろあった過去の出来事も過ぎてしまえば「意外とそんなに大変じゃなかったのかも」と思い出補正されたりするのですが、漫画を読んだら、「あぁ……確かに大変だったわ、この時」と当時の気持ちが鮮明によみがえります。もちろん、最初の頃は夫も息子も私も気を遣いながら生活していたはずで、私だけが大変だったわけじゃないのですけどね。

 漫画の中で、自分が落ち込んでいるシーンを見るとその時のつらさを思い出す反面、なんだか懐かしくて笑えてきちゃうこともあります。全体を通して明るく描かれているのを私は気に入っていて、夫も同じ気持ちだそうです。

――作品を通して家族の在り方について改めて考えさせられました。現在のべにゆうさんが考える「家族」とは、どんなものだとお考えでしょうか?

べにゆう:時々家族ってなんだろう?と考えることがあります。これは私にとっての理想論なのですが、「家族とは支え合うもの。無条件で支えたくなる存在」ではないでしょうか。もちろん、家族の形や関係、家族に対して思うことは人それぞれだから私が断言できることではないのですが。すごく憎たらしい!なんて強い感情を抱きやすいのも、家族だからこそなのでしょう。

――最後に、読者の皆様、そしてこれから作品を読まれる方に向けて、メッセージをお願いします。

べにゆう:『14歳男子の継母になった私』に興味を持っていただきありがとうございます。「継母として」の経験を書いたわけですが、一方で、14歳から数年しか子育てをしたことのない私が息子のことを書いていいのだろうかという思いが常にありました。だけど、自分の書いたものが漫画になり、そこに描かれている自分も含めて、家族のことをより一層愛おしく感じられるようになりました。読んでくださった方にとっても、ほっこり温かさを感じていただける瞬間があれば幸せです。

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