「平行眉は神」「アイラインひく前には目薬」メイクの“なんとなく変”を解決するヒントをもらえる大ヒット書籍《著者インタビュー》

健康・美容

公開日:2022/11/20

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた
メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』(吉川景都、BAパンダ/ダイヤモンド社)

 眉がなんとなく変な気がする、塗ったはずのアイシャドウが目を開けると消えている、夏場のメイクが流れて落ちる……でも、メイクがこうなっちゃうのは、ある程度仕方ないのでは? メイクがきれいにできる人って、そもそも素材がイイんでしょ? メイクに対するそんな諦めをお持ちのみなさんに、ぜひ手に取ってほしい書籍がある。Twitterで累計70万もの「いいね」を獲得し、書籍化した『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』(吉川景都、BAパンダ/ダイヤモンド社)だ。

 本書は、「自分のメイクはしっくりこない、でもコスメカウンターは怖い」マンガ家の吉川景都さんと、彼女の小学校からの幼なじみであり、現役美容部員のBAパンダさんが、メイクのコツをマンガなどでわかりやすく伝えている。「顔面迷子」だった吉川さんが、BAパンダさんにメイクを教わることになったきっかけとは? BAパンダさんが、職業柄、電車の中で考えてしまうこととは? お話をうかがった。

(取材・文=三田ゆき)

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メイクについて話したきっかけは、オンライン飲み会

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた p.2
吉川景都さん

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた p.4
BAパンダさん

──マンガや解説文でわかりやすく、たっぷり実用的なテクニックを学べる本書、おもしろく拝読しました。吉川さんは、BAパンダさんと、日常的にメイクについて話をしていたのでしょうか?

吉川景都さん(以下、吉川) メイクについてはほとんど話したことはなかったです。「パンダさんがきれいなのは美容部員だからあたりまえだ」と思っていたんですよ。メイクのやり方ではなく、「プロだから」きれいなんだ、という先入観があったんですね。あらためてコツを訊いてみようと思ったこともありませんでした。それに、タイトルにも「なんとなく変」と入れたのですが、自分のメイクが、「めちゃくちゃ変」だとも思っていなかったんですよ(笑)。「『超変』ってわけじゃないならいいや」という感じで、改善しようという発想自体がありませんでした。

 そんな状況でコロナ禍に突入し、BAパンダさんとはじめてオンラインで飲み会をしたんです。そのときに、たまたまメイクの話になって。「『なんとなく変』を改善するには眉毛だよ!」と言われたのですが、オンライン飲み会だと自宅にいますから、メイク道具もすぐに取って来られる距離にあるじゃないですか。「眉毛の描き方教えてあげるから、ちょっと今、アイブローペンシル持って来な」みたいな流れで……。オンラインで飲み会をしていなかったら、これからも訊く機会はなかったと思いますね。

──BAパンダさんは、吉川さんにメイクのアドバイスをしたいなと感じたことがありましたか?

BAパンダさん(以下、BAパンダ) ないです。メイクのアドバイスって、要は他人の顔にダメ出しするってことですからね。頼まれてもいないのにやっちゃうと、シンプルに嫌われません?(笑) 日常会話として「こういうのがいいんじゃない?」みたいな話をしたことはあるかもしれませんが、「テクニックを伝授しよう」とはなりませんね。それから、吉川さんはオタクなので、会ったときはそんな話をしている場合じゃないんですよ。「そんなことより、私の推しの話を聞け!」って。メイクがどうとか、話す暇はまったくない(笑)。

吉川 (笑)。でも、眉の描き方を教わったとき、「眉毛の描き方でこんなに印象が変わるんだ」って、はじめてメイクの効果を実感したんです。おもしろいことがあったり、人に伝えたいことがあったりすると、とりあえず一度マンガにしてみようと考えてしまうのはもはや職業病なのですが、それが出てしまいましたね。それまでにも、なにかにつけ描いたものを「ちょっと聞いてよ!」という感じでTwitterに載せていたので、本書のもとになった眉毛のマンガも、軽い気持ちでツイートしたんです。そうしたら、すごい反響があって……「みんな眉毛について悩んでたんだ」って、驚きましたね。

──吉川さんが「パンダさんがきれいなのはプロだからあたりまえだ」と考えていると「あたりまえではないね!」、吉川さんのメイクが濃いと「ちょっと濃いな!」とバッサリ言い切ってくれるBAパンダさんのキャラクターが魅力的です。実際のBAパンダさんも、このキャラクターそのままなのでしょうか?

吉川 ほとんどそのままですね! パンダさんは頭の回転がすごく速いので、会話の中に思ってもみない単語がぽんぽん出てくるんです。そういうおもしろいワードを拾いつつ、マンガとして成立するよう、必要な演出も入れています。マンガでは鼻メガネをして登場する場面もありますが、実際にそんなことはありません(笑)。

選択肢はたくさんある。現場のBAさんと相談して、自分自身で選べるように

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた p.18

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた p.19

──ひとつのテーマにつき、吉川さんのマンガで全体が理解でき、BAパンダさんによる解説文で「このメイク/スキンケアはなんのためにするのか?」という目的がわかり、それぞれの目的に合う実際の商品の紹介までついているという構成も秀逸です。どんな肌質や顔立ちにも応用可能なBAパンダさんの解説は、実際に個々のお客さまと向き合って話をされるときとは、また違う難しさがあったのでは?

BAパンダ そうですね、その難しさが顕著に出たのが、スキンケアのテーマかもしれません。たとえば、私たちBAが新人のときは、スキンケアを肌の構造から学ぶんです。一番表面にあるのが表皮、その次にあるのが真皮、さらにその次が皮下組織、という講義からはじめて、肌がどんなふうに作られているかを勉強するんですね。そういったやり方での説明も考えましたし、「いかに保湿が大切か」というアプローチでの解説も考えましたが、けっきょく、大事なのはもっと根幹の部分だと気づいてもらいたくて、「『使用方法』の説明読んでほしい」みたいな方向に行き着きました。

 それから私は、この本を、現場のBAさんを無視するようなものにしたくなくて。その点については気をつけて書きましたね。だから、すべてのテクニックについて「こうするべきだ」と断定はしていないんですよ。選択肢はたくさんあるよということを提示して、実際に選ぶのは読者さん自身、もしくはBAさんと相談してねというところに集約できるようにしています。この本を読んでくれた読者さんが店頭に行って、そこから美容部員さんがどんなふうに接客するかなということを考えながら書きました。

──そんなBAパンダさんのメイクテクニックについての名言「いつも心にガイコツを!」、本当にキャッチーでカッコいいですね。

BAパンダ ありがとうございます。接客のときは、あんなにノリがいいわけではありませんが(笑)、やっぱり相手が吉川さんだと、ちょっとおもしろく言いたくなっちゃうんですよね。それに、吉川さん、私が言っていることをなかなか理解してくれなくて……つい比喩表現が多くなるんです(笑)。「この色はスクリーントーンの60番だから!」(編集部注※スクリーントーン:マンガなどのモノクロ原稿で、色の濃淡や柄を表現できる粘着フィルム。60番台が定番の濃さ)とかね。お客さまには、「お客さまの骨格はこのようになっていて、ここに光が入るときれいなので、ここの骨格を意識してハイライトを入れていただくといいですよ」みたいに、ちゃんとお伝えしています。名言っぽいものが評価していただけるのは、吉川さんが私のことをマンガにしすぎていて、抽象化がすごくじょうずになっているからかもしれませんね。

吉川 パンダさん、おもしろいことを言っているのに、本人はぜんぜん覚えていないんですよ!(笑) ただ、名言的なセリフは、パンダさんが「いいこと言うで!」とバーンと言っているのではなくて、パンダさんから聞いたいろんな言葉の中から、少しずつマンガにしている感じですね。

「大正解」もないけれど、「大失敗」もない時代。ひとつの正解を持たず、楽しんで

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた p.70

メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた p.71

──本書には、「メイクってイラスト描くのと一緒だから」という名言も。たしかに、「顔をキャンバスに描く」という点では、メイクにも絵画的要素がありますよね。現役美容部員のBAパンダさんにとって、メイクとマンガやイラストには、どういった難しさ、おもしろさがあるのでしょう?

BAパンダ 美容部員がお客さまにするメイクって、嘘はつけないんですよ。「とりあえず眉をぜんぶ消して……」っていうことは、そういう要望がない限りできません(笑)。その点、土台となるキャンバスがないマンガやイラストは、自由度が高そうだなと思います。

──マンガ家の吉川さんから見た、マンガやイラストとメイクの違いは?

吉川 イラストと違ってメイクが難しいのは、大前提として「土台が自分である」ということ。イラストであれば、「もっと目を目立たせたい」と思ったら、目自体を少し大きくするなど、土台を変えていけるんです。ところが自分の顔は、「やりづらいから一度ぜんぶ消して……」というわけにはいきませんからね(笑)。土台の取り替えがきかず、冒険もしづらいという中で、自分にとってのベストを自分の顔で想像するのは、実はかなり難しい。今も自分で考えたり、BAパンダさんに教えてもらったりしながら、少しずつ挑戦しています。その成果か、最近は、昔の写真を見たときに、「今のメイク、ちょっとうまくなってるかも?」と思えることがあって。人から見るとたいした差ではないかもしれませんが、自分で比べたときに「よくなってる」と思えると、やっぱりやる気につながりますね。

 今までメイクは、ひととおりやってきましたし、好きではあるのでいろいろ見ていたのですが、「変じゃなければいいや」というくらいの気持ちだったんです。これまでの自分にとって、メイクって、「世間から自分を守るための“防具”」だったんですよね。ところが、あらためてBAパンダさんに教わって、学び続けているうちに、メイクというものに対する印象が、「『こうありたい』を叶えるための“武器”」に変わってきた感触があります。メイクというものに対する、根本的な概念が変わりましたね。

──本書は、どんな方に読んでほしいと思われますか?

BAパンダ YouTubeやInstagramを見ているけれど、手法がありすぎて、自分がどれを取り入れるべきかわからないという人に読んでほしいですね。それから、コスメランキングで上位のものを買ったけれど、思うように使いこなせないという人。原因はその商品ではなく、商品の目的と自分の目的が合っていないという場合がけっこうあるので、この本を読めばそういった失敗が起こりにくくなるんじゃないかと思います。

 職業柄、電車に乗っていても、近くにいる人たちの顔を見て、「こうすればいいのに」「ああすればよくなるのに」と考えちゃうんですよ。「メイクが変だ」と思っているわけじゃなくて(笑)、「こうしたら、今着ているその服にもっと合うのにな」ということですね。洋服やなりたい自分に合わせてメイクを考えられるようになると、引き出しが増えるんです。吉川さんにも、「今日はこんなメイクだけれど、明日はこれ」みたいに、コロコロ変えてみてほしい。メイクでもなんでも、「大正解」もないけれど、反対に「大失敗」もない時代です。ひとつの正解を持たないで、いろいろ楽しんでみてほしいですね。

吉川 この本は、アラフォー向けというていで描いてはいますが、どの世代にも参考になる基礎が描いてありますので、「メイクがなんとなく変だ」と思っている人ではなくても、一度手に取ってもらえると、「これってこういうことだったのか」という発見があるんじゃないかと思います。Twitterでも、親子で読んでくださっているという方から「メイクをはじめたばかりの高校生の娘も読んでいます」という感想をいただきましたが、うれしかったですね。どんな人にも学びのある美容本になっていると思いますので、いろんな人に読んでほしいです。

──最後にBAパンダさん、イベントの多い年末年始におすすめの、ワンポイントテクニックを教えてください!

吉川 きたー!!

BAパンダ アイライナーをカラーにしたり、ラメをちょっとだけ入れてみたりするのはどうでしょう? ふだん使っているものを色つきにするとか、ピンポイントで使うものを変えてみると、取り入れやすくて印象も変わると思います。たとえば、クリスマスカラーのアイラインとかいいんじゃないかな。アイライナーは自分が赤でお友だちが緑、アイシャドウはゴールドでまとめて、ふたりで写真を撮ったときにクリスマスっぽい、みたいな。

吉川 映えるでしょうねえ。

BAパンダ 私たちは写真、撮らないけどね……(笑)。

──基礎がしっかり理解できると、応用も楽しめるようになりますね。メイクがもっと、自由で楽しいものになりそうです。本日はありがとうございました!

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