「ものづくりの楽しさが伝わったら嬉しい」ぬいぐるみ作家の日常を描いたコミックエッセイ『エブリデイ綿まみれ』作者・うらやまあゆみさんインタビュー

マンガ

公開日:2023/1/30

エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ
エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ』(うらやまあゆみ/オーバーラップ)

 本業はぬいぐるみ作家でありながら、その日常をユーモアたっぷりに描いたコミックエッセイ『エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ』を執筆・刊行したうらやまあゆみさん。その制作秘話や作品の見どころをお聞きしました!

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――この作品が誕生した経緯を教えてください。

うらやまあゆみさん(以下、うらやま):前からコミックエッセイを描いてみたかったのですが、やり方がわからずにいました。はちみつコミックエッセイ編集部で、描き方講座の募集をしていたので思い切って応募してみました。講座で描きたいテーマを考えた時に、本業である「ぬいぐるみ作家」にするのが少し照れ臭かったのですが、そんなことで照れていたらコミックエッセイ自体描けるわけがないと思いなおし「ぬいぐるみ作家とその家族」をテーマにして課題を描き、幸運にもグランプリを頂き、本を出すことになりました。……と簡単に説明してますが、1冊分のコミックエッセイを描くことは本当に大変でした。担当編集者さんがとても優しかったので描きあげられたといっても過言ではありません。

エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ

――課題でグランプリを受賞したことが刊行のきっかけだったのですね。本書にはぬいぐるみ作りにまつわるエピソードがたくさん盛り込まれていますが、ご自身のお気に入りのお話を教えてください。

うらやま:ぬいぐるみ撮影用に、ぬいぐるみ自体に刺す棒を無印良品の製品で代用した話(P.76「世紀の大発見」)は、大した発見はしてないのですが、私の分身が8人出てくるところが好きです。娘も「母ちゃんがたくさんいてかわいい(笑)」と気に入ってくれています。

 また修正指示のやり取りにまつわるエピソード(P.110「お願い①」)は、修正指示を出すことの多い方に「勉強になった!」と言っていただけたのが嬉しかったです。でも最近は自分で修正指示を出す機会があり「少し」「気持ち」などあいまいな表現を多用しているのに気が付いて愕然としましたので、自戒を込めてお気に入りにあげたいと思います。また最終話(P.166「真夜中のぬいぐるみ作家」)もお気に入りです。たくさんのぬいぐるみを一気に作る際は、ぬいぐるみを作る作業そのものも大変ですが、最後にタグをつけたり、ゴミをとったり、袋詰めしたりするのも面倒なので、それくらいはぬいぐるみが自らやってくれないかな~と結構本気で毎回思っています(笑)。

エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ

――本作品の見どころや、読者の方にどんなところを楽しんでもらいたいですか。

うらやま:ものづくりをしたいけど重い腰が上がらない人が「こんなにぐ~たらな人がぬいぐるみ作れるなら、私もできるかもしれない!」と思ってその日に布を買ってきて作ってしまえちゃう感じを目指しました。簡単なぬいぐるみや小物の型紙と作り方、コツなどを載せています。基本的なものがほとんどですが、ちょっとした工夫で全然可愛くない物がとても可愛くなったりするので、見落とさず何回でも読んで参考にしていただきたいです。それと内緒にしておきたい生地屋さんに「本に載せても大丈夫ですか? ダメですよね? ダメならいいんですよ。断ってください~」くらいのニュアンスで確認を取ったら「全然大丈夫ですよ」とあっさり言っていただけてしまったので、そんな私の切ない気持ちを思って「手芸屋めぐり」の話を読んでいただけたら嬉しいです。

エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ

――作り方のコツにあった、綿をたくさん入れる話はすぐに実践できていいですよね。発売記念のインスタライブ実演でも、綿を瞬く間に詰め込んでいる姿が印象的でした。では、本書の執筆にあたって工夫されたことや力を入れたことを教えてください。

うらやま:もともとカラフルな作品を作ってしまいがちではあるのですが、なにしろコミックエッセイ初心者で漫画にはまだ少し自信がないので、とにかくパッと見たときにカラフルで鮮やかに可愛く見えるようにしています。実用書ではなくてあくまでコミックエッセイなので「作ってみる?」のchapter4では、ぬいぐるみの型紙を入れつつ、みんなが大好きな「うんち」(ウズマキと言いなさいと言われています)のまじめな作り方を2パターン入れたりしています。なんで「うんちなの?」と思われると思いますが、ぬいぐるみの基礎をぎゅっと詰め込んだつくりになっているので、これが作れたら色々応用が利くのではないかと思い、あえて選びました。それとハンドメイドをしない人も楽しめるような内容にしています。

エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ

――読者の方にはよく読み込んでいただき、ぜひ挑戦してもらいたいですね! さて、ぬいぐるみ作家さんが本業のうらやまさんですが、漫画の練習や勉強はいつ頃されたのでしょうか?

うらやま:iPadを購入したのをきっかけに一枚絵のエッセイイラストみたいなものはちょこちょこ描いていましたが、漫画となるとハードルが一気に上がってしまい、何が何やらわからなくなり手が止まってしまっていました。でもコミックエッセイ描き方講座を受けたら「今まで何に悩んでいたのだろうか?」というくらい漫画が描けるようになっていました。講座で出したネームにあまり直しがなかったので自信もつきました。今回の本のネームや原稿を描くことによって漫画の練習になっていたと思います。かなり勉強になりました。初心者なので1ページに同じ大きさのコマ8個の漫画を描いていますが、自分に合っているかはわかりませんが、いつか普通のコマ割り漫画も描いてみたいです。

――今後、挑戦してみたい執筆テーマや目標などがありましたら教えてください。

うらやま:1つ目は、娘の小学校のPTA本部役員をやっているので、PTAについて描いてみたいです。本部役員をやるくらいなので皆真面目ではあるのですが、それでもちゃんとやる人、やらない人、やってる風な人、パソコンに強い人、弱い人など色々な人がいて面白いです。2つ目は自分が住んでいる墨田区について。引っ越してきて3年経ちました。引っ越す前は墨田区にあまり魅力を感じてなかったので引っ越したくなかったのですが、住んでみると隅田川は気持ちいいし、スカイツリーはあるし、面白いご飯屋さんやお店もあるし、鉄道博物館もあるし、スーパーもたくさんあるし、浅草が近いし、坂道が少ないから歩きやすいし、それですぐに大好きな街になりました。それから繰り返しになりますが、普通のコマ割り漫画を描けるようになりたいです。

――最後に、応援してくださっている読者の皆様、そしてこれから作品を読まれる方に向けて、メッセージをお願いいたします。

うらやま:この度は『エブリデイ綿まみれ ぬいぐるみ作家15年目のてしごとライフ』に興味を持っていただきありがとうございました。本業がぬいぐるみ作家である私がまさかコミックエッセイを出版していただけることになるとは、ぬいぐるみ作家を始めた頃には想像もつかなかったです。コミックエッセイを描くにあたり、ぬいぐるみ作家って素敵な仕事だなあと思うことができましたので、本業のぬいぐるみの方も見ていただけたら嬉しいです。まだ読んでいただいていない方も、ぬいぐるみ作りに関する“あるある”や“ないない”をぎっしぎしに詰めたコミックエッセイになっていますが、ハンドメイドに興味のある方もない方も楽しんでいただける内容となっていますので、お時間がありましたらぜひ読んでみてください。

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