寺島しのぶ「お箸の並べ方ひとつにも伝わるものが見えてくる」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』で、新たな表情を見せてくれた寺島しのぶさん。演じている間もずっと感じていた、本作に流れる心地よさとは?

「御法川監督からオファーが来た時は
“私がさわ子さん、演るの?”って、意外でした。
あまりに役柄が柔らかかったので」

これまでエキセントリックな役柄が多かった寺島さん。けれど、さわ子さんは“徹底してフツー”。

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「でも普段の私も“徹底してフツー”(笑)。
だからさわ子さんの気持ちや台詞は、
“そう、そう、それ!”って思えたし、
自分で演じながらも、彼女に“がんばれ”と
ふと言いたくなってしまいました」

スクリーンの中に生きるひとりひとりを人間臭く、きちんと描く御法川修監督。撮影中、終始、幸せな気分でいられたという、そのほっこりした演出方法とは――

「すーちゃんと、まいちゃんを迎え、
さわ子さんの家で、銀粉蝶さん演じる母が
お鍋でもてなすシーンがあるのですが、
その時、監督がおっしゃったのが
“この家の人は、物を大切に扱う人たちです”
というひと言。
だから箸置きとお箸の並べ方も、
ものすごくエレガントに、と」

直接的ではないけれど、そのひと言で、今は呆けてしまっている祖母が、以前は丁寧でこまやかな暮らしを営み、そのたしなみを母に伝え、それがきちんとさわ子さんにも巡っている家族なんだということまで、すーっと見えてきたという。

「想像が広がり、
演じる者も“なるほど”と納得した、
そうした奥深いニュアンスは、
気持ち良さを伴いながら、
この映画のあちこちに息づいていると思います」

(取材・文=河村道子 写真=川口宗道)
 

寺島しのぶ

てらじま・しのぶ●1972年、京都市生まれ。2003年、映画『赤目四十八瀧心中未遂』、『ヴァイブレータ』の演技で高い評価を得、第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞他多数の賞を受賞。『キャタピラー』では、日本人として35年ぶりに第60回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。3月には、若松孝二監督の遺作『千年の愉楽』の公開を控える。
ヘアメイク=片桐直樹(EFFECTOR) スタイリスト=河部菜津子(KiKi inc.)衣装協力=ロングベスト3万7800円、パンツ2万4150円(ENFOLD/バロックジャパンリミテッド TEL03-6730-9191)

 

紙『キネマの神様』

原田マハ 文春文庫 650円

突然会社を辞めた歩。折しも、趣味は映画とギャンブルという、父の多額の借金が発覚! ある日、父が映画専門誌のブログに歩の文章を投稿したことから、歩は編集部にスカウトされ、父もまた映画ブログをスタートさせることに……。「解説がまた素晴らしいんです」と、寺島さんを唸らせた片桐はいりの解説も必読!

※寺島しのぶさんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ3月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』

原作/『すーちゃん』シリーズ 益田ミリ(幻冬舎) 監督/御法川 修 脚本/田中幸子 出演/柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶ/染谷将太、井浦新、他 配給/スールキートス 3月2日(土)全国ロードショー
●10年来の友人であるすーちゃん、まいちゃん、さわ子さん。時に一緒に涙し、大声で笑い合う。それでも互いに打ち明けない悩みもある……。じわじわ胸に共感が広がる大人たちの物語。
(c) 2012 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』製作委員会