待望の第4弾は本にまつわるミステリーがじっくり楽しめる初の長編!

新刊著者インタビュー

更新日:2013/12/4

古書がテーマの長編ならではの苦労も

 既刊では、誰でも知っている本からはじまり、稀覯本で終わるという作者こだわりの構成が見られたが、今回の長編でもそれが当てはまる。事件の鍵となる古書は、乱歩の本および作品から選ばれているわけだ。

「ある程度シリーズが続いてきているので、どういう物語なのかは読者さんも把握されていると思うんです。ですので、1巻のときほど古書を選ぶのに気を遣わずにすみましたけど、それでもマニアックな選択だけにしてしまうと、乱歩を知らない人には入りにくい。マニアックな面と、誰にでも分かりやすいのと、バランスを考えてという感じですかね」

 物語は空想でも、作中にエッセンスとして加わる実在の本や作家にまつわるエピソードは、嘘偽りのない事実。そうした作品を書き上げるには、当然緻密な調査が必要になってくる。乱歩に対するリサーチは3巻の執筆中からはじめていたというが、その調査範囲は相当広い。作家の作品・研究書はもちろん、乱歩と交流のあった作家や編集者に関する資料にも当たったというから、その苦労は想像を絶する。やはり、今作で最も熱を入れたのは、こうしたリサーチになるのだろうか。

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「一人の作家を多角的に描くことが、この巻のコンセプトになると思うので、その部分はとくに気を遣いました。乱歩邸にも取材でお邪魔させていただきましたし、関係者の資料もかなり読みました。作家自身の足跡や、まわりの評価にも踏み込んで調べてやろうという気持ちで挑みましたよ。
 物語の方では、ヒロインの母親がようやく出てくるんですけど、母親とヒロインとその妹という家族の関係は、かなり意識して書きましたね」

 長編ということのみならず、こんな話を聞くだけでも4巻目は今までと違うなということが伝わってくる。期待が膨らまないわけがない。

担当編集・高林 初さんより
「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズのヒットについて

 読者様のご支持のおかげで、当シリーズは4巻累計部数470万部となりました。まことにありがとうございます。
 三上先生も皆様のご声援を大変励みになさっています。作家にとっては次も期待して待ってくださる方がいるというのは、長期的な視野で作品作りもできるという利点があります。最新第4巻は趣向を変えて、一人の作家をテーマに長編にするという企画ができたのも、シリーズとして安定してきたからこそでしょう。
 ありがたいことに、コミック化、そしてTVドラマ化と、この作品世界は広がっております。今後も『ビブリア古書堂の事件手帖』に変わらぬご声援を賜れれば幸いです。

紙『ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜』

三上 延 メディアワークス文庫 599円

ビブリア古書堂の店員としてすっかり馴染んできた主人公。店主の栞子との距離も幾分縮まっていくなか、今度は江戸川乱歩の作品を巡る謎解きに巻き込まれる。その背後には、謎の失踪を遂げた栞子の母親の影が見え隠れするのだった。江戸川乱歩という一人の作家をテーマに、シリーズ初の長編物語が展開する。