島本理生 Interview Long Version 2004年3月号

インタビューロングバージョン

更新日:2013/8/19

昨年末に、前作『リトル・バイ・リトル』で、野間文芸新人賞を最年少受賞した島本理生さん。今回の『生まれる森』は第130回芥川賞候補作でもある。喪った恋にとらわれていた主人公の心の恢復を描いた本作は、島本さんの考える恋愛のイメージがもっとも強く反映された(「あとがき」より)小説だという。

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取材・文/榎本正樹

 

『生まれる森』
島本理生
講談社 1300円

高校時代に通った予備校の教師サイトウとの出会いと別れを通して深い喪失感を抱え込んだ「わたし」は、複数の男と関係をもち妊娠、堕胎する。心理学を学ぶために大学に進学した「わたし」は、「深い森」から脱出すべく、夏休みの間、両親から離れて大学の同級生の加代の部屋を借り、独り住まいをする。そんな彼女の前に、一連の騒動をただひとり打ち明けた高校時代の同級生キクちゃんが現れる。キクちゃん、彼女の兄の雪生、弟の夏生と「わたし」との交流が始まる。サイトウの呪縛から逃れられずにいる「わたし」を静かに見守るきょうだいたち。いつしか、雪生と「わたし」の間に、友情以上の感情が芽生え始める。