ますます”過激化”するコスプレROMとイベント情勢の現状を追った。

アニメ

更新日:2013/7/29


ますます”過激化”するコスプレROMとイベント情勢の現状を追った。


※この記事は外部のライターより寄稿いただいたものになります。

 コスプレROM、略してコスROMという言葉をご存知だろうか? アニメやゲームのファンがそのキャラクターのコスプレをした画像をCD-ROMやDVDに収録した写真集である。

一昔前のコスプレイヤーは、衣装や小道具は自作、ウィッグは今ほど手軽に入手できないこともあり髪型は地毛かヘアスプレー。撮影するカメラはコンパクトなデジタルカメラだった。しかし近年では、安価な海外製衣装を簡単に入手できるようになり、ウィッグやカラコン、高性能なデジタルカメラも手頃な価格で販売され、若年層・ライトユーザーにも気軽にコスプレができるようになった。
それに伴いコスプレイヤーの数はますます増加しており、一般的認知度も少しずつ高まっている。例えば、コスプレ系SNSであるcure(キュア)は約60万人、コスプレイヤーズアーカイブは約21万人が登録していると言われている。そんな中、先のコスROM市場も急拡大している。


amazonベストセラー1位にもなった人気コスプレROM

コスROMが流行する以前から、紙媒体のコスプレ写真集は存在し、コミケなどで扱われてはいたが、ごくごく狭いエリアに限られたものだった。「デジタル」が普及するにつれROMとしての写真集が出始めたが、コミケのジャンルとしては、「デジタル(その他)」として分類され、スペース数が少なかったり、コスROMの中でもさらに細かい傾向によって配置される日程やエリアがバラバラになっていた。

しかし、コスROMサークルの増加によって、ついに2012年の夏コミよりジャンルを「コスプレ」として独立し、以降も毎回約400以上のサークルが参加する一大ジャンルへと発展した。(400という数字はワンピースやNARUTOよりは多く、テニスの王子様と同規模)
その一方で、コミケ以外でコスROMを頒布できる場として、オンリーイベントが2010年5月の「コスギャラリー」を筆頭に多数発足し、各イベントともに多くの参加者で賑わっている。また、都内だけでなく、大阪や名古屋、北海道といった地方でもオンリーイベントが開催されるようになった。


コミケでのコスROMサークルのスペース。
ポスターやPCでのサンプル映像展示など、各サークルがバラエティに富んだ展示をしている。

この急速なコスROMオンリーイベントの拡大は、いくつかの理由が考えられる。まず、今までコスROMを扱う場として主流であったコミケの抽選制である。

コスプレイヤーの増加に伴いコミケに参加を希望するサークル数も増加したが、スペース数は限られているため、当選倍率は上がり、落選サークルが多数発生する。しかし、オンリーイベントであれば先着順なことが多く、倍率もコミケほどの高確率にはならないので、確実に参加でき、また出展代も比較的安価(イベントによっては無料)である。

次に、コミケで“発禁”になってしまう成人向けサークルが、オンリーイベントに多数流れている。コミケには法律に基づいた表現基準が存在し、成人向けであまりに過激すぎるものはコミケ側の当日チェックにより“発禁”となる。その場合、その場で修正するわけにもいかないので、当日何も置けなくなってしまうという事態が発生した。一方のオンリーイベントはコミケとは異なる独自の基準が存在し、コミケでは“発禁”でもオンリーイベントでは頒布可能なことが多く、さらにイベントによっては「コミケで“発禁”の作品も是非!」と謳っているところまである。

オンリーイベントではこのような成人向けROMも数多く販売されていたが、
コミケだと”発禁”レベルかもしれない。過激なため自主規制。

 さらに、オンリーイベントが普及した理由として、ステージイベントや撮影スペースといった独自の場内イベントもコミケにはない魅力である。コミケではコスプレ広場は撮影可能ではあるが人が多くゆっくりと撮影はできず、サークルエリアは撮影禁止である。レイヤーさん本人が売り子をしていてもカメラを構えることはできない。

しかし、オンリーイベントは各イベントともに会場の一部に撮影用のスペースを設けており、撮影向けに照明機材やバックペーパーが備え付けてある場合も多い。また、「コスホリック」では「撮影チケット」というシステムがある。全参加サークルに一定枚数配布され、使い方はサークルの裁量に任されているが、一般的には「ROM1枚の購入でチケット1枚をプレゼント。その1枚で1分間、レイヤーとマンツーマンの撮影ができます!」とまさにどこかのアイドルの握手会さながらではあるが、その場でレイヤーさんを独占して撮影できるので購入者(カメラマン)にとっては一石二鳥のサービスである。


1対1での撮影会の模様。レイヤーさんによってはポーズ指定にも応えてくれる。

このようにコミケにはない魅力のつまったコスROMオンリーイベントは、東京だけに留まらず全国各地で今後ますます増加し、コスROM業界は活性化していくだろう。

今後もコスプレ業界(コスROM含め)の動向をウォッチしていこうと思う。

(文=志乃蛍)

(ダ・ヴィンチ電子ナビ アニメ部)