かたちを変えるたびに進化してきた『心霊探偵八雲 いつわりの樹』が書籍に!

新刊著者インタビュー

更新日:2013/12/4

本編ではできないことを。
八雲はまだ終われない

「心霊探偵八雲」シリーズは、赤い左眼で死者の魂が見える主人公が事件の謎を解いていく。そのため「スピリチュアル・ミステリー」というキャッチコピーがつけられている。

「最初はとにかく他のミステリーとの差別化をはからないと、賞に応募しても通らないと思ったのです。そんなときたまたま手元にあったのが小泉八雲の本でした。小泉八雲は左目が見えなかったというけれど、本当は違うものが見えていたんじゃないか? そういう仮説から着想を得て八雲が生まれたのです。ミステリーで心霊現象を使うのはタブーだと聞いたこともありますが、そこは割り切っています。読者に楽しんでもらえることが一番大事ですから」

 ちなみに現在、「心霊探偵八雲」のシリーズは9巻まで発売されているが、今回発売された『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES いつわりの樹』と本編との位置づけは?

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「本編のナンバリングシリーズが主人公の八雲と父親の話だとするならば、そこに行き着くまでには違う話もあったと思うのです。ですからこの“ANOTHER FILES”シリーズでは時系列を少し戻して、その辺りを書いていきたいですね。八雲の日常や、八雲以外のキャラクターに焦点を当てても面白いと思う。本編ではとにかく前へ前へと進むしかなくて寄り道できなかったので、こちらでは今までやれなかったことをやってみたい。八雲を読んだことがない人は、まずは“ANOTHER FILES”から読んでみるといいかもしれませんね」

 他の作品も多数発表している神永さんだが、読者の中では、やはり「八雲」が代表作だと思っている人も多いだろう。デビューから9年の今、この大ヒット作に対する思いに変化はあったのだろうか。

「いろいろな作品を書きたいという欲求から、八雲を書くペースを意識的に緩めた時期もありました。でも今思い返すと、八雲があるからこそ他の作品にも興味を持ってくれた方もいると思うんですよね。今回、『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES いつわりの樹』を書いてみて、まだまだ八雲でいろいろなことができると思ったので、しばらく八雲に集中しようかと思っています。一度距離をおいたらやっぱり好きだったという、まるで恋愛みたいな話ですが(笑)」

取材・文=樺山美夏 写真=松田優子

心霊探偵八雲 ANOTHER FILES いつわりの樹
 
心霊探偵八雲 いつわりの樹 ILLUSTRATED EDITION

紙『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES いつわりの樹』

神永 学 角川文庫 620円
 

紙『心霊探偵八雲 いつわりの樹 ILLUSTRATED EDITION』

神永 学 角川書店 1995円

神社の杉の木の前で発見された刺殺体は、過去に刑事・石井をいじめていた望月だった。事件をきっかけに石井をおびやかすある女性の存在も浮かび上がる。真面目な石井の隠された秘密とは? 新聞連載とイラストをそのまま収録した版も同時刊行。そちらでは鈴木康士さんの絵と神永学さんの小説の見事なコラボレーションが楽しめる。

舞台 心霊探偵八雲 いつわりの樹

舞台も新脚本で再演! 追加公演も決定!

『心霊探偵八雲 いつわりの樹』

原作:神永 学
脚本:神永 学、丸茂 周
演出:伊藤マサミ
出演:久保田秀敏、清水富美加/佐野大樹/三浦 力、東地宏樹 他
こどもの城 青山円形劇場
8月21日〜28日