(松本幸四郎)出版人必読!? 松本幸四郎が語る“売れる本”のヒミツ

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、傑作舞台『アマデウス』で、1982年の初演以来、主人公・サリエーリを演じてきた松本幸四郎さん。7年ぶりとなる11月の再演は、演出も手掛ける意欲作だ。そんな幸四郎さんが読書家のひとりとして語る、「本と読者の新しい関係」とは?

パルコ劇場で公演する際は、渋谷の雑踏のなかを歩いて劇場入りするという幸四郎さん。その街の風景を眺めて、気づいたことがあるそう。

「お店なんかを見てみても、昔は売り手と買い手の見分けがはっきりついたものだけれど、最近はわからないんですよね。でも、多くの人に面白いと思ってもらえるものって、そうやって一体化するのだと思うんですね。お芝居でもそうだし、本も同じではないでしょうか。出版は作り手と買い手がはっきり分かれていますが、いまのお客さんが求めているのは『自分でも書けるんじゃないかな? 書いてみたいな』と感じさせてくれる本なんじゃないか、と」

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たしかに、最近のヒット作にはそう感じさせるものが多いかもしれません。

「いい歌というのは、聴いている人が思わず歌いたくなるような歌。いい踊りというのは、観ている人の腰が思わず浮いてしまうような、踊りたくなるような踊りだと思うんです。いい本というのも、それと同じなのではないかな」

(取材・文=岡田芳枝/写真=川口宗道)

松本幸四郎

まつもと・こうしろう●1942年、東京都生まれ。46年に初舞台を踏み、81年に九代目松本幸四郎を襲名。歌舞伎役者として活躍する一方、数々のテレビドラマや映画、現代劇、ミュージカルに出演し、国内外で活躍。毎日芸術賞、読売演劇大賞最優秀男優賞、菊田一夫演劇大賞、紫綬褒章など受賞多数。2012年公開の映画『天地明察』に出演予定。

 

紙『カレンダーの余白』

永井龍男/講談社 絶版

四季おりおりの自然、自己とその周囲、今と昔、生の哀しみ、日常生活の襞。─生粋の都会人による、冷徹な目と繊細な詩人の感性が溢れたエッセイ。松本家が登場する「鴉」のほか、「天気予報」「桃の節句」「夜涼身辺」「歯のこと」「小唄」「酒について」「水のあと」など、短編の名手と呼ばれた著者の82編のエッセイを収録。小粋で簡潔な瑞々しい文章に、古きよき時代の香りが感じられる一冊。
※『カレンダーの余白』は1992年に講談社文芸文庫からも刊行されたが、こちらも現在品切れ。

※松本幸四郎さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ11月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

舞台『アマデウス』

作/ピーター・シェファー 演出/松本幸四郎 出演/松本幸四郎、武田真治、内山理名ほか 11月5日(土)~25日(金) ル テアトル銀座にて上演
●天才モーツァルトの存在に揺さぶられる、宮廷音楽家サリエーリの心の光と闇を描いた舞台。
1979年にロンドンで初演され、81年のトニー賞5部門の受賞に輝き、日本では82年に松本幸四郎主演で上演、観客を魅了し絶賛を浴び、以来400回の公演を重ねてきた。7年ぶりとなる今回の公演では、04年に続き松本幸四郎が演出を担当する。