それぞれの「参加者」に聞いたコミックマーケットの魅力、そして未来

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更新日:2014/4/11


 毎年夏と冬に行われる、ヲタクの一大イベント「コミックマーケット」。略して「コミケ」。

 今年も猛暑の中、8月10日~8月12日の3日間ビッグサイトで開催され、来場者数は3日で約59万人と、過去最多となった。

 日本最大の同人即売会ということで、東館にも西館にも、参加サークルのブースが所狭しと並んでおり、今年は異常なまでの暑さで、ただでさえ暑い夏コミはもはや地獄と化しており、救護室もいっぱいだったそうだ。

 それでも、また来たいと思ってしまう、このコミケ。それは、会場内にいる全ての人が「参加者」である、という一体感がもたらすコミケならではの魅力ではないだろうか?

 コミケには、「お客さん」という立場は存在しない。売り手と買い手、そしてレイヤーさんやスタッフ等、役割の違いはあるが、「皆が参加者である」というルールがある。

 だからこそ、みんなで作り上げるお祭りのような充実感や達成感、満足感のあるイベントにできあがるのだ。

 今回のレポートでは、そんな立場の違う「参加者」の皆さんを取材し、様々な意見をまとめてみようと思う。

<参加者>
 東京在住の方も多いが、遠方からの参加者もとても多く、全国各地から集まっているようだ。年齢は小学生から50代くらいまで、様々な方達が参加している。中にはそれ以上の人も、それ以下の人も、さらには親子連れの方もいた。
 早い時間から来ている人達は、やはり殆どの方が何かお目当ての物があると回答。目的のものとしては、毎年恒例の激戦ブース『魔法少女リリカルなのは』グッズはもちろんのこと、シャフトの『化物語』の原画集、『まどマギ』の特製フィルム付きセット、『CCさくら』の紙袋セット等が挙げられ、企業の人気商品をゲットしている人は、昼ごろには既に荷物整理をしている人が多く見られた。

 今後改善してほしい点を聞いたところ、企業の列をもっと細かく分けてほしい。救護室を増やした方がいいなど、今年の特徴として、やはり熱中症を防止するための安全面、体調面に関わる内容が多かった。他にも徹夜組みが出ないようにサークルチケットで入場した人の買い物を禁止したり、事前に購入予約が出来るような仕組みにして欲しいなど、朝イチで並んでも目的のものが買えない現状に不満を抱く参加者からの強い要望が印象的だった。

<サークル参加者>
 サークル参加歴は様々だったが、長い人には10年以上という方も多くいた。また、年2回出す人も多かったが、夏だけ、冬だけと決めている人も多いようだ。
 他のイベントの参加状況は、コミケのみ、という方もいたが、別なイベントにも参加している人が多かった。コミックシティやそうさく畑、オンリーイベント等の声が挙がった。
 冊子(グッズ)の制作時期を聞いてみると、コミケが終わったら、またすぐに次のコミケの申し込みがあるため、年中関わっている人が結構いた。多くの方がコミケを中心に人生が回っているようだ。
 印刷会社によっては早期入稿割引がある場合も多く、それまでに出したいという人もいた。しかし、「当日も会場でギリギリまで製本してます(笑)」という強者もいた。


コミケに華をそえるコスプレイヤーたち

<コスプレイヤー>
 今年から開始されたコミケコスプレコミュニティーについて話を聞いてみると、必須項目がコスネームと振り仮名のみであるため、気軽に参加を事前告知できるのは有難い。という意見が多かった。
 例年参加している人に今年の感想を聞いてみると、とにかく暑くて汗が止まらない。でもコスは脱ぎたくないなど、こだわりのある人や、コスが出来る場所がいくつか増えたのはいいが、照り返し(反射)が酷くて目が痛いなど、コスプレ広場以外の使い勝手を嘆く方もいた。

<スタッフ>
 コミケの広報的な方に話を伺ったのだが、今回は、通常なら金土日が多いのだが、土日月に開催し、ジャンルの配置も変更。日にちによって来場者数に偏りがでないように配慮したそうだ。
 また、コスプレ広場は去年までは2か所だったのだが、この1年で、庭園、西4階の屋上展示場、駐車場でもある屋外展示場、エントランスプラザ、東のトラックヤードの5か所に増やされた。
 さらに、数年前の事故以来使われていなかった、1階から4階を繋ぐ巨大エスカレーターも開放された。そして、そのことによるルート変更等もおこなわれたそうだ。
 しかしこのルート変更によって、逆に通行ルートが制限され、迂回しなければならない場合も多く、酷暑と重なり熱中症で倒れる人も多かったと反省の弁。この辺は、今後改善していかなければならない点だ。
 また、企業ブースでは、「なのは」を初めとして、初日に完売してしまうケースも多い。そして今回の特徴として挙げられるのが、映画館の違法ダウンロードのCMでお馴染みの「映画泥棒」や、雪印乳業の雪印コーヒーの擬人化キャラ「ゆきこたん」のプロジェクトだ。
 こうした一般企業が次々に参入してくる中、人気企業であるメディアファクトリー等が落選する等、場所<企業数という現実があり、企業ブースにおいても、抽選での選別が余儀なくされている。
最後にビッグサイトの社長が変わったことで、今後のコミケに影響が出るのでは?という声があることを伺ったが、スタッフによれば、「今のところは」その心配はないようだ。
 児童ポルノ禁止法改正案についても、コミケット含む「全国同人誌即売会連絡会」は、『「児童ポルノ禁止法」改正案への反対声明』に全面的に賛同し、戦っているということだった。

<参加企業>
 今回は、スタッフの話にもあった一般企業である「雪印乳業」の担当者に話を聞いてみた。
 今年、雪印コーヒーは50周年を迎える。そこで、若年層の方々にもっと雪印コーヒーを知ってほしいと思い、今回のコミケへの参加に踏み切ったそうだ。
 内容は、雪印コーヒーやうちわの配布と共に抽選会をおこない、「ゆきこたん」のポスターや画集などのグッズを配布するというもの。初参加ということで、いろいろと大変だった面もあったそうなのだが、待機列にも想像以上の人が並び、あっという間に完売した。
 この今回のコミケ参加等を含む、『オレたちのゆきこたんプロジェクト』。
 これは、雪印コーヒーを擬人化したキャラクターをPixivで募集する等、みんなでゆきこたんを作っていこう、というものだそうだ。現在、7,000くらいの応募作品の中から選ばれた優秀作品賞6名のゆきこたんが、雪印コーヒーの500mlパック商品のパッケージに登場している(7月末~8月末くらいまで)。


 この雪印コーヒーを飲んで、ぜひイメージ通りだったキャラクターに投票してほしい、とのことだ。
 投票は、8月31日まで。こちら(http://www.yukicocp.com/)から投票が可能だ。
 今後、「ゆきこたん」がどう活躍していくのかはまだ明らかになっていないが、若者との絆を深くしていきたいという企画であるので、それに合った内容を検討していく、と語っていた。
 グッズ展開や、メディアミックスもある……かもしれない!?今後のゆきこたんの活躍が楽しみだ。

 このように様々な立場の方から意見を聞くことで、コミケという日本最大の同人即売会であり、最大級のイベントをそれぞれの参加者が楽しみ、活用しようとする一方で、60万人近くが来場し、多数のボランティアに支えられたこの巨大すぎるイベント運営の難しさも浮き彫りとなった。

 しかし、コミケに関わる参加者やスタッフ、企業の想いがある限り、スタッフの今後も運営を続けていきたいという頼もしい意見を信じて、顕在化した問題点が改善されていくと共に、これからも「表現において自由な場」として、より一層盛り上がってほしい。

(取材・文=月乃雫、撮影=橋本商店)