今期イチオシアニメ『てさぐれ!部活もの』制作陣インタビュー!【第1弾】

アニメ

更新日:2014/4/11


 この秋の放送開始直後から、かわいいキャラクターと破天荒な内容で話題を呼んでいる『てさぐれ! 部活もの』(以下『てさぐれ!』)。その制作陣を監督として率いているのが、『gdgd妖精s』(以下『gdgd』)や『直球表題ロボットアニメ』(以下『直ロボ』)といった、同じく一風変わったCGアニメを手がけてきた石舘光太郎さんです。

 石舘さんは芸人や構成作家などを経てアニメに関わるようになったという、異色の経歴の持ち主。今回から3回に分けて、声優の養成所に通う高野麻里佳(こうのまりか)がお届けする『てさぐれ!』制作者インタビュー。第1回は、石舘監督のルーツに迫ってみました。


左が監督の石舘さん、中央が音楽の井上さん、手前が高野麻里佳

――まずアニメに関わるようになった経緯を教えてください。

石舘:21歳の時にお笑い芸人になり、28歳くらいのころにコンビを組んでいた相方に紹介されて構成作家も始めました。するとありがたいことにわりとすぐに構成作家のほうで食べられるようになったので、なし崩し的に芸人活動をしなくなって。そうしている内に『gdgd』を作るタイミングで先方から「アニメや声優に詳しくて、バラエティやお笑いの脚本を書ける人いませんか」とウチの事務所に相談があったみたいで、元々アニメが好きだった自分が紹介されたんです。

――元々、人を笑わせるのが好きだったんでしょうか?

石舘:芸人になるくらいですからね(笑)。お笑いくらいしか興味なかったかもしれません。昔から何をやっても、わりとそこそこすぐにできるようになる器用貧乏だったんです。でもお笑いだけは知れば知るほど、すごく奥が深い世界だと思うようになって。僕は中学の時にダウンタウンさん、高校から大学にかけてフォークダンスDE成子坂さんという、今はいらっしゃらないですけど、彼らに衝撃を受けて。フォークダンスさんがいたからホリプロに入って、すごくかわいがって頂き、彼らのライブにも出演させてもらいました。いわば、僕の師匠にあたる人ですね。

――アニメ業界に関わるようになっての感想はいかがですか?

石舘:芸人の時は自分でネタを作って人前で発表していましたが、構成作家の時はライブやテレビ番組の構成演出をしたり、ほかの芸人さんのネタを書いたりと他人の作品のお手伝いばかりで。それがアニメに関わるようになってからは、また自分がゼロから作品を作って世の中に発表できるようになり、まるで芸人に戻ったような感覚はあります。

――現在の仕事で、芸人や放送作家の経験で役立っていることはありますか?

石舘:アニメ側から「笑い」にアプローチしている作品とは違うものになっているとは思います。個人的に元々ギャグアニメの、勢いとテンションとお約束で「はい、笑わせますよー」みたいなノリが少し苦手で。なので自分は同じくギャグアニメのノリが苦手な人にも楽しんでいただけるような、もう少し幅広い人たちに楽しんでもらえるような笑いを目指しているつもりです。


インタビューに答える石舘監督

――石舘さんの作品の特徴と言えばアドリブパートです。あれはどうやって生まれたのでしょうか。

石舘:CGでアニメを作るということを突き詰めて考え、制作スピードが早かったり、細かいモーションを付けられるという利点から、プレスコ(編注:prescoringの略。音声などを先に収録し、後で絵をつける手法のこと)に向いていることに気付いたんです。プレスコでやるということは、アドリブをそのままアニメにできるんです。そのために、キャラクターの内面もある程度ざっくりとしか当初は作らず、キャストと話をしてどんな人なのかを知り、収録をしてからイメージを書き換えたり、設定を変えたりしています。だから脚本家とキャストが一緒にキャラクターを作り上げるというか、これもバラエティをやっていなかったら、辿り着かなかったスタイルだと思います。

――その脚本はどのように作られるのでしょうか。

石舘:最近は後輩作家がいるので、僕が最初の雛形を書いて、それを彼らに見せて、1本ずつ第1稿を作ってもらいます。それを僕がリライトして、最終的に台本にしています。最後は誰かが書き揃えないと、どうしてもタッチが変わっちゃうんですよ。細かいことで言えば「このキャラクターはこのタイミングでは相槌を打たないぞ」とか「この子はこの言い回しはしないかな」みたいに微妙なことなんですけど。あとは、全体的な構成の直しだったり、書き直しながら思いついたことを書き加えていく感じです。

――脚本はどれくらい時間をかけて作りますか?

石舘:たとえば『gdgd』だと、全部自分の中から生み出していたので、たかだか5、6分のティータイムの台本ですけど、丸2日かけて書いていました。でも今回の『てさぐれ』は“あるあるネタ”が多いので、そのリサーチとネタの精査の時間のほうが長いです。ネタさえ決まれば、あとはキャラに合わせて組むだけですね。「きっとこの子はこの部活のこと嫌いだろうな」とか「この子は何も思ってないんだろうな」とか考えながら。

――そういった脚本作りはどこでされるんですか?

石舘:家に篭ってやりますね。脚本をやるときだけはほかの予定を入れたくないです。欲を言えば、打ち合わせ1本、なんなら電話1本でさえも。外に出ると、色んな物が目に入っちゃって集中できないのが嫌なんです。だから家で耳栓をして書いています(笑)


前作に引き続きアドリブパートが話題の『てさぐれ!部活もの』

――ちなみにこれまで好きだったアニメはありますか?

石舘:みんなが好きなものは大体好きですよ。子供の頃は『ガンダム』だってハマったし『エヴァ』も当然ハマりましたし、その後の『SEED』や『ハルヒ』、『ひぐらし』、『まどかマギカ』、『あの花』、『シュタゲ』も一通りハマりました。

――では人生で一番影響を受けたアニメは?

石舘:『エヴァ』ですかね。今更僕が言うことではないですが、いちいち発見の連続でしたよね。

――アスカ派ですか? レイ派ですか?

石舘:完全にレイ派ですよ! 僕は『破』のときに「なんでアスカは生きていたんだ。あそこで死ねば伝説になったのに」と思ったくらい、特にアスカには何の思い入れもないですから(笑)。 レイのひたむきさが大好きで、あとベタですが「ヒロインが包帯まみれだと、こんなにもドキドキするのか」とか、「少女が父親ほどのおじさんに好意を寄せるってなんてエロティックなんだ」とビックリしました。

――では控えめな女の子が好みなんでしょうか?

石舘:女性のタイプだけで言うと、『GANTZ』の多恵ちゃんが一番タイプです。あ、でも僕は『ストライクウィッチーズ』も好きなんですが、特にサーニャが控えめだけど頑張り屋さんで、慎ましやかでいいですね。あとメカや美少女の組み合わせが大好きなんですよ! 『ストライクウィッチーズ』はその究極だな、と思って。だから『艦これ』も早くやりたいんですよね。


面白いエピソードの連続にすっかり聞き入る高野

――今期、注目している作品はありますか。

石舘:忙しくて今期も前期も全然観られてないんですよ。僕の中でアニメは『ガルパン』や『ラブライブ!』で止まっています……。どちらも大好きでした。

――では『てさぐれ!』の前枠の『声優戦隊ボイストーム7』も観られてないんですね。

石舘:いや『声優戦隊ボイストーム7』はオンエアを待っている間に観ましたね。「これかー」と。ちょっとキョトーンとしてしまいましたけど(笑)。まぁ、僕の作品を初めて観る人もこんな感覚なんだろうな(笑)。


 アニメもかなり好きな様子の石舘監督。言われてみれば『てさぐれ!』も、ほのかにあんな作品やこんな作品に匂いがするような……? 次回はそんな石舘監督がこれまで手がけてきた『gdgd』や『直ロボ』の話を中心に、音楽を担当された井上さんも交えて、アドリブパートやキャスティングなどについてのお話を聞いてみます! お楽しみに!

(インタビュアー=高野麻里佳、編集=はるのおと、撮影=橋本商店)

てさぐれ!部活もの

・てさぐれ!部活もの アニメ公式HP
http://www.ntv.co.jp/tesabu/

・「てさぐれ!部活もの」公式 Twitter
https://twitter.com/tesabu

・公式ニコニコチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/tesabu

■インタビュアー紹介

<高野麻里佳>

2月22日生まれのA型。マウスプロモーション附属養成所に所属。代々木アニメーション卒。憧れの声優は大谷育江さん。

・高野麻里佳 twitter
https://twitter.com/marika_0222

©てさぐれ!製作委員会