農業系学園ラブコメディ『のうりん』白鳥士郎氏インタビュー【前編】

アニメ部

2013/12/15

岐阜県の農業高校を舞台にした、笑いあり涙ありの人気学園ラブコメディ『のうりん』(GA文庫)。来年1月からは、TVアニメの放映が予定されており、原作ファンだけでなく、アニメファンの期待も高まっています。
そこで今回の「新人声優・高野麻里佳が行く!」では、『のうりん』の原作者・白鳥士郎さんにライトノベル作家としてのデビューから現在、また、作品の魅力について語って頂きました。インタビュアーは、声優の養成所に通う新人声優・高野麻里佳(こうのまりか)です。


インタビューに答える白鳥さん

──小説を書こうと思ったきっかけは?
白鳥:自宅で働ける副業が欲しいと思い、ライトノベル作家になろう!と大学院生のときに一念発起しました。しかし、それまで物語というものを書いたこともなかった人間の作品ですので、最初にMF文庫Jの新人賞に応募した作品は一番下の『D判定』という厳しい結果でした。次に挑戦したのがGA文庫で当時は新人賞がない時代でした。原稿を受け付けていた編集部に送ったものの、審査結果が返ってくるまでに半年もかかりました。デビューは叶いましたが、他の多くのライトノベル作家さんのように新人賞を受賞してのスタートではありませんでした。

──デビュー作『らじかるエレメンツ』、二作目『蒼海ガールズ!』執筆時の思い出はありますか?
白鳥:作家デビューは嬉しかったです。イラストも好きな人にやってもらえて満足していました。しかし、デビュー作の『らじかるエレメンツ』はびっくりするほど売れなかったんです。自分が面白いと思ったものを否定されて、これまでの自分のすべてが必要とされていないように感じて辛かったです。いまでもたまに話のネタを思いつくのですが、これはもう書けないんだな……と悔いが残りました。
二作目の『蒼海ガールズ!』では、帆船好きだったので、自分の趣味を全開に出しました。当時は男の娘(おとこのこ)が流行っていて、主人公も可愛らしく女装させて、キャラも動かしやすかった。こちらはそこそこ売れて、自分も書きたいことはすべて出し切ったつもりです。

──作家になってよかったこと、あるいは辛かったことなどありますか?
白鳥:自分の好きなことをやっているので執筆作業は楽しいです。でも、それが現実に出た時に結果を見るのが辛い。売れないことは本当に辛かったです。金銭的にも困窮していました。一時は作家を廃業しようかとも悩みましたが、それまでの努力や繋がりを無駄にしてしまうのが悔しくて続けました。

──普段はどのように過ごしてしていますか?
白鳥:書店や図書館にはよく通っています。また趣味というほどでもないのですが、たまにフットサルに誘われてプレーしています。昔から陸上をやっていまして、運動は欠かすと気分や体調が悪くなるので、いまでも走ったりはしています。

──執筆は、どんなとき、どんな場所で行っていますか?
白鳥:アイデアはいつでもひらめきます。何かを書きたいと思える“きっかけ”が必要で、そのためには家の中にいるだけではいけません。逆に一人で考えなければいけないときもあり、執筆作業の段階ごとに場所は変わりますね。

──ご自身で影響受けたと感じる小説やライトノベル、漫画、映画などはありますか?
白鳥:一番古い根源にあるのは夏目漱石の『吾輩は猫である』とジュール・ヴェルヌの『海底二万里』ですね。最近の漫画やライトノベルも読んでいますが、それはどちらかというと最新の流行を把握するため、自分の感性を時代にシンクロさせるために読んでいます。映画もセリフ回しやストーリー構成などを参考にするためによく見ています。


ライトノベル作家の苦労を知る高野

──『のうりん』を書かれたきっかけは?
白鳥:担当編集者から「また学園ものを書いてみませんか?」と打診されて、デビュー作とは違うものを書こうとして『のうりん』のプロットを提案したのですが、いまいちウケが悪かったんです。さらに舞台を工業高校にしようか、農業高校にしようか迷いました。それから知り合いの先生がいる農業高校に取材をお願いして、生徒さんたちが行っている農業クラブの研究発表会を見学して衝撃を受けました。アヒル農法、木曽馬に乗っての流鏑馬(やぶさめ)、シクラメンのポット栽培など、県内の発表会でも興味深い事例ばかりで、これはいくらでも話のネタに困らないなと感じ、やはり農業ものを書いてみようと決意しました。取材に行った農業高校が非常に協力的で、その後も1年間、生徒さんたちと交流をさせていただき、作品作りに本当に助けられました。

──学園ラブコメディが苦手と伺いましたが、なぜ前作と同じ学園ラブコメにしたのでしょうか?
白鳥:自分自身、学校にいい思い出がなく、ライトノベルを書き始めの頃は恋愛を描くことが恥ずかしく思ってしまい、学園ラブコメは苦手意識がありました。しかし、取材先の農業高校が想像以上に面白い学校で、生徒さんたちを見ていると自分も楽しくて、いまでは苦手意識を克服することができました。

──物語の内容は、どうやって決めているのでしょうか?
白鳥:学園ラブコメでも、恋愛だけでなくて、何らかの主義主張、読者の心に訴えるものを入れたかった。1巻は農業と関係ないラブコメディから入って、最後に少し泣ける話で締めるような構成にしたかったんです。それで、農業を学び始めた頃、『連作障害』という言葉を知り、「肥料を与えるだけではダメなんて、農業って奥深いな」と思いました。最低限、『連作障害』という言葉だけでも読者が覚えてくれたら、文庫本一冊分くらいの価値はあるんじゃないかと思い、1巻で取り入れることにしました。3巻ごろから農業の比率が増えていっていますが、あくまでもライトノベル読者が読む農業の話なので、可愛いヒロインがいっぱい出てくる話にしたかった。それ以降は農業、ギャグ、恋愛ネタではなくキャラクターで話を展開する方向性に変えていきました。ライトノベルって、やはり最後はキャラクターを魅せるものですから。

──ギャグや下ネタ、パロディーのアイデアはいつ思いつくのですか?
白鳥:農業の下ネタは昔から鉄板ネタのようなものがあります。古くからの労働歌など、卑猥な歌詞もいくつかありますし、農業高校でも畜産などの授業では繁殖の知識が重要ですし、男子生徒しかいないときに先生が下ネタを振ったりするので、元々の親和性は高かったんです。そうした下ネタやパロディネタを用意して、あとは作中のどこのタイミングでいれるかをずっと考えていました。

──家族や知り合いの反応はどうでしたか?
白鳥:書いていることがバレたくなくて、プロフィールでは名前も出身地も生年月日も変えていたのですが、『のうりん』3巻の頃に新聞に写真が載ってしまい、家族や近所の人たちにバレました。家族が読んでいるとなると、過激な下ネタを加えようとすると筆が鈍るので、読むのは止めて欲しいと頼んでいます。

──白鳥士郎さん、ありがとうございました。

デビューまでの道のりだけでなく、デビュー後の苦悩など、作家になるのも、なった後も大変であることを教えていただきました。また、作品テーマの選び方など、ライトノベル作家を目指している方は非常に参考になったのではないでしょうか。

いよいよ1月からは豪華キャストが演じる『のうりん』のTVアニメが始まります。まだ、原作を読んでいない方は、放映前にライトノベルで予習しておくと、アニメが何倍も楽しめるかと思います。

次回の後編では、イラストレーターの切符さんのこと、コミカライズのこと、アニメのこと、取材のことなど、お伺いしたいと思います。

(インタビュー=高野麻里佳、編集=愛咲優詩、撮影=山本哲也)


最後は記念にツーショット撮影

のうりん

・アニメ 『のうりん』公式サイト
http://www.no-rin.tv/

・のうりんのぶろぐ
http://thurinus.exblog.jp/

・原作情報
『のうりん』はGA文庫より1巻から7巻まで刊行されている。


また、ヤングガンガンコミックスよりコミックスが3巻まで発売中!


■インタビュアー紹介

<高野麻里佳>

2月22日生まれのA型。マウスプロモーション附属養成所に所属。代々木アニメーション卒。憧れの声優は大谷育江さん。

・高野麻里佳 twitter
https://twitter.com/marika_0222