インタビュー

黄金時代のニューヨークでGOSICKな探偵小説が開幕!

 「GOSICK」シリーズの舞台はヨーロッパの架空の小国ソヴュール。妖精のような美貌を持つ天才少女ヴィクトリカと日本人留学生・久城一弥がさまざまな事件の謎を解決していくこのジュブナイル・ミステリーは、桜庭一樹の名を世に知らしめた最初のヒット作だ。

桜庭一樹

さくらば・かずき●鳥取県出身。2000年デビュー。03年開始の「GOSICK」シリーズで注目を集める。07年に『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞を、08年に『私の男』で直木賞をそれぞれ受賞。近著に『桜庭一樹短編集』『無花果とムーン』など。実写映画化された『赤×ピンク』が2月22日より公開予定。
 

 外伝も含めると計13冊にものぼる同シリーズが、波瀾万丈の末に完璧なフィナーレを迎えたのは2011年夏のこと。まさかこんなに早くあの続きを読めるなんて、ファンには嬉しいサプライズだったに違いない。

 だがシリーズ未読の人も案ずることなかれ。『GOSICK RED』はヴィクトリカと一弥の帰還であると同時に、1930年代のニューヨークを舞台にした新・探偵物語の始まりでもあるのだから。

「連載開始からちょうど10年経ったことに気づいたとき、そういえば私も昔ホームズに夢中だった頃はずっとこのシリーズを読んでいたい、という気持ちだったことを思い出したんです。キャラクターやその世界を好きになると、シリーズものってずっと続いてほしいなあって思いますよね。サイン会やツイッターでも読者の方から続編を望む声をいただくことが多くて、書きたいという気持ちは内心ずっとありました。最終巻のラストでヴィクトリカと一弥がニューヨークに探偵事務所を開業したシーンを書いた時点で、もし続きを書くならこの時代のニューヨークで、というのは決めていて。ホームズやポアロのようなヨーロッパの探偵小説も好きだけど、エラリー・クイーンやウィリアム・アイリッシュが描いたあの時代ならではのレトロな雰囲気漂うニューヨークの探偵小説も大好きなので」

 昨年6月には物語の新たな舞台を作りこむため、担当編集者とニューヨークを訪れた。

「これまでは田舎の建物はドイツ風、鉱山鉄道はスイス風、都会の街はフランス風という感じでいろんな国をぎゅうっと混ぜて創った架空の国でしたが、今度は実在する街だからちゃんと見てから再構成したほうがいいかな、と。二人の住む家もホームズのベイカー街のように、行きたくなるようなところにしたかった。そしたら現地のガイドさんが『ブルックリンのクランベリーストリートなら作品の雰囲気にも合うのでは?』と提案してくれたので、見に行ったらちょっとヨーロッパ風の街並みがすごく可愛らしくて。ここにしよう、と決めました」

 かくして住所はクランベリーストリート14番地に。そして対岸のマンハッタンにはヴィクトリカの事務所が。

“こちらグレイウルフ探偵社 ──解けない謎は一切ありません!──”

 主人公はホームズばりの観察眼と頭脳を誇る美しき私立探偵、ヴィクトリカ・ド・ブロワ。頼もしきワトソン役は新聞記者見習いとして奮闘中の久城一弥。

 最強のふたりが、大統領選を目前に控えた荒ぶる街ニューヨークで、マフィア連続殺人事件の謎を追いかける。

大人も楽しめるジュブナイル・ミステリー

 精巧なビスクドールと見紛うほどの美貌。老婆のようなしわがれた声。推理力と洞察力はずば抜けているが、我が儘で意地っ張りで毒舌家。幼気と老成が不思議に入り混じった安楽椅子探偵ヴィクトリカ。何を差し置いてもこのヒロインを抜きにして、「GOSICK」の魅力は語れない。

「まずヴィクトリカ、ですね。このキャラクターを大事に、楽しく読んでもらうことは常に意識しています。企画の最初の段階から、女性作家だからこそ書ける、可愛いだけじゃないヒロインを書いてほしいと編集部の依頼があって。生意気なのに可愛いとか、強そうで弱いとか。怖そうな女の子を可愛く書いてみたかった。そういう主人公を書いていくうちに、謎があって、危機が訪れて、解決することで主人公たちが成長して未来へ向かう、というジュブナイル・ミステリーは、自分とすごく相性がいいなということも実感できました」

 当初はライトノベルレーベルから刊行されていたが、角川文庫に移籍したことで読者層もグッと広がった。

「最初は中学生くらいの女の子が初めて読むミステリー小説のつもりで書いていたんです。だから伏線はわかりやすく、説明もすごく丁寧にしていた。それが角川文庫に入れてもらえることになったら、大人のミステリー読みからも読まれるようになってちょっと冷や汗が……(笑)。でも意外とミステリー好きや書評家さんも楽しんでくださっているみたいで。年齢や性別、ミステリーに詳しいかそうでないかに関わりなく、あとは普段は外国の小説を読まないっていう人にも、楽しんでもらえたようなので、いろんな人が幅広く読んでくれる小説になれたんだろうと思っています」

 タイトルが象徴するように、過去のシリーズは第一次大戦後のヨーロッパを舞台にしたゴシック・ホラー色が強いミステリーだった。騎士のミイラ事件、錬金術師の謎、冒険家の秘密の遺産……。

 そんな“旧世界”から脱け出したヴィクトリカたちが、今度はオカルトから最もかけ離れたマテリアル・ワールドで謎を解き明かしていくのも興味深い。

「アメリカという“新世界”に移っても、ヴィクトリカが“旧世界”の不思議な末裔であることに変わりません。そういう意味でオカルティックな要素は今まで同様、これからも出していくつもりです。マフィアやFBIと戦うような現実的なドラマと、“旧世界”から引っ張ってきちゃった不気味なものが混ざり合っていくところを書いていきたいですね」

 主人公たちを取り巻く風景は一変した。だが登場人物たちに関しては「変わったことよりも、変わっていない部分を見せたい」という気持ちが強いという。

「探偵事務所にヴィクトリカがいて、一弥がやってきてふたりの以前と変わらない掛け合いが始まって……という部分などで、いかに変わっていないふたりを書けるかというところを意識しました。人間って実際、いつまで経っても中学生の頃と同じことをしちゃったりする部分あるじゃないですか? ヴィクトリカと一弥は少し大人になったし、世界も変わったけれども、彼らの変わらない部分をなるべくフィーチャーすることで、読者の皆さんの中の変わらない部分と接続できたらいいな、と思いながら書いています」

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