竹野内 豊「脚本を読んで感じた以上に面白くなっている映像に、演じた自分自身がびっくりしています」
更新日:2014/5/2
「誕生日、1月2日ですからね。どうしても正月と一緒にされてしまうんですよ」
暮れも押し迫った取材当日、誕生日を目前に、幼い日の思い出を語る竹野内さん。
「それは仕方ないんですけれど、母が毎年手作りのバースデーケーキを用意してくれていました。姉と取り合いながら食べたなぁ。今、考えてみれば、おせちの支度もあって忙しかっただろうに、ありがたかったなって、しみじみ思いますね」
用意されていることがわかってはいても、お正月のケーキは竹野内少年にとって、うれしいサプライズだったに違いない。
今回の映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』の試写を観た時にも、そんなうれしい驚きがあったという。
「“井口監督はやっぱり天才だな”と思いました。脚本を読んで思った以上に、映像が断然面白く仕上がっていた。撮影時はどういうふうになるのか、正直イメージがつかなかったんですが、本当に驚きました」
モテ男のニシノにはラブシーンがいっぱい。中でも尾野真千子さん演じるマナミとのシーンは禁断のオフィス内。
「恥ずかしくなっちゃうような(笑)、けっこう長いラブシーンの撮影をしたんです。でも、監督はそこをばっさりとカットしていた。そのあとの尾野さんの表情だけで観客に想像させるために。普通だったら、そこは絶対にカットしないパーツなんですが、潔く切っちゃうところがすごいなぁ、男前だなと思いました」
逆に「何やってんだろう、俺」と、試写室の中で赤面してしまったのが、掴みどころのないフワーッとしたニシノを象徴するような軽やかでコミカルな動き。それは本作のスパイスのように印象的な場面なのだが……。
「自分自身にドン引きしました(笑)。あの動きは、本能っていうとおおげさだけれど、その場で閃いたことをただやっていただけ。何も考えていませんでした」
思い浮かべるだけで“くふっ”と、なってしまう、そんなシーンの数々は、温かさや可笑しさとともに、切なさもふっと連れてくる。それはニシノユキヒコという人物そのものでもある。
「ニシノは永遠にわかりそうでわからない男。でも、すべての女性の欲望に気がつくことができても、そこに欲がないのは男性として素晴らしいと思う。女性から見ても、素敵な男なんじゃないかな」
(取材・文=河村道子 写真=下林彩子)
竹野内 豊
たけのうち・ゆたか●1971年、東京生まれ。1994年、俳優デビュー後、ドラマ『ロングバケーション』『ビーチボーイズ』で注目される。映画『冷静と情熱のあいだ』で日本アカデミー賞優秀主演男優賞、『太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男―』でブルーリボン賞・主演男優賞を受賞。昨年は、映画『謝罪の王様』、ドラマ『オリンピックの身代金』等に出演。
ヘアメイク=勇見勝彦(THYMON Inc.) スタイリング=壽村太一(SIGNO)
再婚後にできた息子と訪れた蔵王で、亜紀は10年前に別れた夫・有馬と偶然再会。それを機に二人の間で書簡のやりとりが始まる。離婚の原因となった衝撃的な事件の真実、胸に留めていた気持ち、これまで過ごしてきた日々……今だからこそ打ち明けられるそれぞれの想いが愛と再生を織りなしていくロマン小説の金字塔。
映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』
監督・脚本・編集/井口奈己 原作/『ニシノユキヒコの恋と冒険』川上弘美(新潮文庫) 出演/竹野内 豊、尾野真千子、成海璃子、木村文乃、本田 翼、麻生久美子、阿川佐和子 配給/東宝映像事業部 2月8日(土)全国ロードショー
●容姿、セックス、仕事……三拍子そろって、しかも女にはとことん優しいニシノユキヒコ。究極のモテ男なのに、彼はなぜ真実の愛を掴めないのか。女性たちの思い出から浮かび上がる、切なくもどこか可笑しい彼の人生とは──。
©2014「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会