あまりのシュールさで超話題のアニメCM『ゼウシくん』生みの親に迫る!

アニメ

公開日:2014/3/16

 新海誠監督による大成建設やZ会といった企業のCM、東京ディズニーランドの少女の成長絵巻、そして実写ではあるもののスバルと『進撃の巨人』のコラボと、にわかに存在感を増しているアニメCMですが、なかでも断トツで異彩を放っているのが『おにくだいすき!ゼウシくん』(以下『ゼウシくん』、URL:http://zeushi-kun.jp/)です。


▲こちらが『ゼウシくん』第1話。中毒性の高いOPだけでも観てみてください!

 『ゼウシくん』はJA全農が手がけるアニメCMで、毎週月曜20時からのバラエティ番組『ジェネレーション天国』内で放映されています。このアニメCMがスタートしたのが2014年1月、つまり立派な今期アニメのひとつ。1話あたり90秒と通常のアニメ番組に比べてとても短いのですが、愛らしいキャラクター、花澤香菜さんや内田真礼さんといった豪華声優陣、そして圧巻のシュールさで話題を呼んでいます。

 そこで今回は、その仕掛け人であるJA全農の畜産総合対策部畜産販売課調査役の担当者に『ゼウシくん』に関する話を伺ってみました。


――まず『ゼウシくん』が生まれた経緯を教えてください。

担当:この数年間で飼料価格が上昇しており、国内の農畜産物の生産環境は非常に厳しい状況にあります。そのため、厳しい環境下にある農家の皆さんを応援したい、またそのような農家の皆さんが作った国産農畜産物をより多くの方々に召し上がって頂きたいという思いがありました。そこで幅広い方々に我々の想いを伝えるためCMを打とうとなったときに、これまでのようなイメージCMから趣向を変えて、アニメ化したCMを流すことでお子さん、さらに一緒に観るであろうご家族も国産農畜産物や全農のファンになってもらえるのでは、と考えたというのがきっかけです。

――『ゼウシくん』は元々いたキャラクターであるかのように、キャラクターや作風が定まっている印象があります。どういうコンセプトで生まれたのでしょうか?

担当:「国産農畜産物のファンを作る」という目的を広告代理店さんにお伝えしたところ、DLEさん(『秘密結社鷹の爪』などを手がけるアニメや映像の制作会社)との企画を頂いたのが原型です。

――やや毒が強いイメージがあるDLEと、JA全農という組み合わせが意外です。

担当:確かにイメージ的には少し遠いですよね。でも「90秒という短い時間でどれだけ視聴者のハートを掴むか、印象を残すかを考えると、癖がないと無理でしょう」という提案をされて。それで少しシュールで、クスッと笑えて、皮肉もあるような、そういうスパイスに長けたDLEさんにお願いすることになりました。「何だこれ」って思わせれば成功だと思っている部分はあります(笑)


――そう言えばアニメスタッフのお名前が主題歌中や公式サイトにもありません。

担当:そうですね。あくまでCMなので、主題歌にもテロップは入ってないんです。ちなみにアニメの監督であり、キャラクターデザインをしたのはDLEの大宮一仁さんです。これまで『ユルアニ?』の『ほんとにあった!霊媒先生』のアニメーターなどを担当されていたそうです。

――現在『ジェネレーション天国』で放映されていますが、この番組に決定した理由は?

担当:ほかの候補もありましたが、放送時間帯、そして「幅広い層に届けたい」という趣旨を考えて『ジェネレーション天国』がベストな番組だと判断しました。

――実際に放映されての手応えはどうでしょう?

担当:TwitterやSNSの反応を見ると好意的なものが多く、これまでJA全農や国産の農畜産物をあまり意識していなかった若い方々にも広まっているようですね。またお肉を販売しているスーパーから「曲を流したい」という依頼も頂いているので、徐々に浸透している手応えはあります。

――3月中旬現在、Youtubeにアップされている1話の再生数が16万を超えています。この数字はどう捉えていますか?

担当:予想以上です、というか数の目標すら作っていませんでした(笑)

――個人的には、もう少し色んな場面で観られてもいいくらいバリューのある作品だと思います。たとえば深夜アニメの時間帯で流れても面白そうです。

担当:ありがとうございます、確かにアニメのテイスト的には深夜枠でも合います。ただ元々の趣旨を考えるとお子さんや、少し言葉が悪いんですけど日中活動をしている方々(笑)をメインターゲットに考えていたので、まず『ジェネレーション天国』でしたね。

――そうした人達はネットやSNSなどに親和性が高く、動画には辿り着けるはずですもんね(笑)。キャラクターはDLEが作ったということですが、声優はどのように決まったのでしょう?

担当:まずDLEさんと広告代理店さんから、今人気の高い花澤香菜さんと内田真礼さん、それと普遍的に人気のある大御所の大山のぶ代さんを提案されました。社内の若いアニメ好きの職員に聞くとおふたりとも今のトップ声優だそうですし、大山さんは我々の世代はみんな『ドラえもん』で知っています。これは幅広い世代に注目されそうだと判断し、決定しました。

――ただ、大御所のわりに大山のぶ代さんが務めるみの太くんはセリフが少ないですよね(笑)

担当:これからもう少ししゃべる回があるので、ご期待ください! でもTwitterを観ていると、声優さんを窓口として知った人も多いようで。結果としては大成功で、声優さんには感謝するばかりです。


――短いアニメですが、収録は1日で終わったのでしょうか?

担当:大山さんは1日でしたが、ほかのかたは数回収録しました。私も全部ではないのですが、立ち会わせて頂きましたが、やはりみなさんオーラがありますね。

――花澤さんと内田さんはどうでしたか?

担当:素人目線で恐縮ですが…花澤さんは飛ぶ鳥を落とす勢いなのに低姿勢で、周囲への気遣いもできる人で「こりゃ、みんなファンになるわ」と思いました(笑)。内田さんはすごく小柄なのに、声が本当に通る方なんですよね。特に3月26日に発売されるCDで歌ってもらったのですが、その際に特に強くそれを感じました。



――そのCDに収録されている歌について伺います。花澤さんが歌うオープニングとアニメ本編が半分ずつと極端な配分ですが、この理由は?

担当:お子さんの心をキャッチするために、口ずさみやすい歌を冒頭に入れたかったんです。あとは視聴者はCMだと思っていたのに、突然音楽が流れると振り向くじゃないですか。それで少し極端ですが、あのような配分にしました。Twitterでも「テレビのリモコンを踏んだかと思った」という反応があったので、狙いどおりですね。

――歌もキャッチーですしね。

担当:「ニクニクしい」、「ミーとユーとの」なんて歌詞、普通出てきませんよね、さすがプロだと感心しました。

――歌詞にある「ジャポネスク」とは?

担当:私達も謎です。「日本の」「国産の」というニュアンスを感じてもらえれば良いかなと(笑)

――CDではあの歌がフルサイズで聴けるんですよね?

担当:そうです、3分くらいでしょうか。CMで流れていない部分もある、というかそちらのほうが断然多いので、聴き応えがありますよ。

――カップリングはどんな曲でしょうか。

担当:公式サイトで「ニクニクダンス」というコンテンツがありますが、そこで一部を聴けます。花澤さんと内田さんが歌っていますが、こちらもいい曲に仕上がっていますよ。

――付属のDVDにはアニメの傑作選が入るそうですが、全話収録したDVDやBDの発売予定はないのでしょうか?

担当:今のところ予定はないですね。まずはCDを発売して反応を伺ってみよう、という段階です。


▲3月26日発売の『おにく じゃぽねすく!』は内容盛りだくさん!

――『ジェネレーション天国』が3月に終了しますが、『ゼウシくん』も同時に終わるのでしょうか?

担当:そうです、3月末までです。

――その後も公式サイトにあるアーカイブは残りますか?

担当:公式サイトもアーカイブも残す予定です。ただ、いつまで残すかは未定ですが。

――アニメ以外の展開、たとえばグッズなどは考えられていますか?

担当:おもちゃメーカーからいくつか問い合わせはありましたが、未定です。そもそも『ゼウシくん』を作り始めるときはこういった取材を受けるとか、グッズのことまで考えていなかったもので(笑)

――まだ終了前なので気が早いですが、『ゼウシくん』第2期はあるのでしょうか?

担当:まさに今、検討中です。ただ『ゼウシくん』続編の希望を多く頂ければ、JA全農としても「もう1回」となりやすいです。SNS上のつぶやきでも、メールでも結構なので、もし『ゼウシくん』を惜しまれるようでしたら、ぜひ声をあげて盛り上げてくれるとうれしいです。

――本日はありがとうございました。

 今回、JA全農にお邪魔して『ゼウシくん』の話を伺ったのは、その魅力もさることながら、従来のイメージCMに近い内容が多い企業のアニメCMとは違い、短いながらも毎週違うアニメを届けるという点に挑戦し、なおかつそれでしっかりとファンを掴んでいると感じたからでした。JA全農も、その手応えはしっかりと感じている様子。『ゼウシくん』第2期も含めて、こうしたユニークなアニメCMが今後も増えてほしいものですね。

取材・文=はるのおと

おにくだいすき! ゼウシくん

・おにくだいすき! ゼウシくん 公式サイト
http://zeushi-kun.jp/