アニメーター志望必見! アニメ制作のマッドハウスに聞いてみた 【オタクの社会科見学】

アニメ

更新日:2014/4/19

水樹奈々
アニメに関するさまざまな会社を訪ねる当連載、今回はアニメ制作会社のマッドハウスさんにやってきています。

前回は今年1月から放送された『魔法戦争』について佐藤雄三監督を交えてお話を伺いました。後編では前回から引き続き登場の宣伝担当・武井風太さん、三田朋美さんに、アニメーターやアニメ制作会社で働くということについてじっくり話を聞いてみます。それでは早速どうぞ!

――御社では現在何人くらい働いているのでしょうか?

武井:正社員は80人くらいですね。それに正社員ではない外注の方やフリーのかたが大体200人前後出入りしています。これで現在6~7本くらいのラインが動いています。

――200人でそれほど作れるものなんですね。

武井:とは言え、アニメ制作には他社のかたも多く関わってきますからね。ひとつの作品で200人くらいでしょうか。本当に共同作業です。

――200人というのは制作会社としては大きいのでしょうか?

三田:大きいと思います。同時に色んなラインが動いていて、色んな制作工程を見られるのは勉強になりますね。

武井:作るジャンルも多岐に渡っていますし。そういう意味では面白い会社なのかもしれません。

――よく「アニメ制作は大変」という話がありますが、実際のところどうなんでしょう?

武井:確かにそういう部分はありますが、やりがいはあると思います。制作会社といってもいろいろな職種の人たちが集まってできています。こちらの三田も赤ちゃんができて、今はこうして一時的に宣伝を担当していますが、最近まで演出という仕事をしていました。

三田:演出はすべてのチェックに立ち会う必要がありますから、アニメ制作の終盤はスケジュールも少なくなり、朝も昼も夜もない感じになりましたけどね(笑)。でもアニメのクオリティに大きな責任を持つ仕事ですし、そこから監督になるという道につながっているので頑張れます。
 

▲マッドハウスでは、このようにアニメ作品ごとにアニメーターさんが机を並べ、黙々と作業を続けていました。
 

▲これまで多くの賞などを受賞してきたマッドハウス。こうした作品を制作する、優秀な人材とともに働けるメリットは大きそうです。

――ちなみに1枚あたりのギャラはいくらくらいなんでしょうか?

武井:動画や仕上げは1枚数百円単位ですね。

――動画を1枚描くのにかかる時間は?

武井:カット内容によりますね。たくさんモブがいて動かすとなったら、1日10枚上げられないこともありますし。ただ簡単なカットをやったほうが手取りとしてはいいけど、難しいカットをやったほうが実力は上がる。マッドハウスではどちらをやるか選べるわけでもないので、難しいところです。

――原画の場合はいくら?

武井:だいたい数千円ですね。劇場版だと単価が高くなることもあります。やはりアニメーターは体力勝負という部分がありますが、弊社には70代のアニメーターの方もいらして、バリバリ現役です。『織田信奈の野望』もやってらっしゃいましたよ。

――この記事の前編でアニメ制作は大変だという話もありましたが、やはり楽しそうですね。どういう人が向いていると思いますか?

武井:僕達がやっている宣伝という職種は、会社によってはプロデューサーが兼ねているくらいなので、参考にならないかもしれません。ただアニメ制作は、いろんなスタッフと関わる共同作業なので、コミュニケーション能力は必要不可欠です。

――アニメーターになるにはやはり絵が上手くないと駄目ですか?

三田:まず絵を描くことが好きなこと。あと弊社だと入社前に試験があるので基本的な画力は必須です。
 

――試験の内容は?

三田:過去の出題問題から平均すると、原画を渡されて、「これの中割りを描いてください」といった内容が多いですね。

武井:それこそ、あるアニメの1話の素材を使って試験をしたという話は聞きました。

三田:会社によっては、持ち込まれたスケッチブックだけで「とりあえずやってみようか」となる場合もあるようですが、弊社はわりと手順を踏んでアニメーター採用をしています。

――ハードルは高そうですね。

武井:応募者が100人くらいいて、採用者は10人以下になります。やはり専門学校や美大出身者が多いです。

三田:でも、「習うより慣れろ」ということわざにあるように、実践第一です。絵が上手であれば、高卒で採用される場合もたまにはありますが、専門学校や大学で勉強してから来る、というのが一般的です。

――では学生時代からやっておくべきことがあれば教えてください。

三田:まずはデッサンや、素早く描く練習をしておきましょう。好きな作品の模写や、キャラクター以外に背景も含めて1枚の絵として描くのも重要です。あとは色んな作品を観る、色んな人生経験をするということでしょうか。アニメーターさんはキャラクターを動かす役者でもあるので、色々な作品を観て「自分ならこう演技させる」とか「こういう動きを作りたい」とかイメージしておくといいかもしれません。また、自分が描いた絵を動画にしたときに線を拾えるような絵を意識して描くという訓練をしておくのも良いかもしれませんね。
 

▲マッドハウスの求人情報は、公式サイト(URL:http://www.madhouse.co.jp/)に載っています。来年度の新卒者を対象とした求人はまだの模様。気になる人はこまめなチェックを!

――最後に、御社の今後の予定をお聞かせください。

武井:4月からの新番組もぜひご期待ください。『魔法科高校の劣等生』は人気原作なので期待も高いようですが、そこに応えられる内容になっていると思います。もう一本の新作『ノーゲーム・ノーライフ』も弊社監督の独特な感性が感じられる作品になっていますね。原作の雰囲気を損なわず、ビビッドな色使いが印象的な作品です。

――続き物のアニメもありますね。

武井:『ハンター×ハンター』も原作で人気の高いエピソードの真っ最中ですし、『ダイヤのA』も熱い甲子園予選の真っ只中です。個人的にはマッドハウスが盛り上がる年になるのでは、と期待を持っています。

――色々と貴重なお話、ありがとうございました!

確かにアニメ会社で働くこと、特にアニメーターになるのは大変そう。しかし、それでも好きなアニメに関わることに対する充実感や手応えを感じられるインタビューとなりました。読者の中でもアニメ制作、特にアニメーターを目指している人はぜひ今回のインタビューを参考に頑張ってみてください!

(取材・文=はるのおと)
 

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