坂上忍「演技ではなく、本当にカチンとくるときがある」

あの人と本の話 and more

公開日:2014/5/7

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、先日発売された著書『偽悪のすすめ』が大きな話題を呼んでいる坂上忍さん。今、テレビに引っぱりだこの“暴言王”がオススメする本とは──。

「大作じゃないけど、骨太」
 そう坂上さんが評するのが、推薦本である遠藤周作の小説『真昼の悪魔』。好きな作品に巡りあうと他の本も読み、「作家の人格を追っていく」のが坂上流の読書だそう。

「でもね、エッセイは好きじゃないんです。小説のほうが絶対的にしんどいしボロも出やすいから、その人となりがわかるんです。それにほら、エッセイはごまかしが効くしね。まあ、自分もエッセイを出しておきながら言うのも何ですけど(笑)」

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〈迎合は悪。空気は読むな〉と力強い言葉が躍る著書『偽悪のすすめ』では、“予定調和を突きやぶった先に本質が見える”と説く坂上さん。しかし、キャラがここまで浸透してしまった今では、「毒舌という予定調和」を求められることもあるのでは?

「ああ、たまにいますよ。『いつものアレでお願いします』って言ってくる人が。そういうときは聞き返します。『いつものアレって何?』って。初めてお仕事するスタッフの中には、事細かに説明したがる人も多いんですが、『それ聞かなくてもいいですか?』と確認する。確認じゃないですね、ほぼ脅しになってるんですが」

 ──さ、さすがです……。でも、どうしてそこまで?

「極力、嘘をつかないでいい環境にしたいんですよ。演技はドラマでやるもので、バラエティに出て演技しても仕方ない。どうやって勇気をふるって素で戦えるかが問題ですよ。もちろん、演技したほうが楽なんです。ただ、お客さんは馬鹿じゃないんで、しかもこれだけ情報が多い社会だから、マズいものをおいしいって喰ってたらバレますよ」

「空気に迎合しすぎるとお客さんに失礼でしょ」と坂上さん。この春からは昼番組のMCに初の冠番組のスタートなどでますます注目を集めるが、果たしてどんな毒を吐き捨て、テレビ界をかき乱すのか?

「そんな期待、やめてください(苦笑)。ただ、大人げないから本当にカチンとしちゃうときがあるんで……どうなるんでしょうね」

(取材・文=岡田芳枝 写真=川口宗道)

坂上 忍

さかがみ・しのぶ●1967年東京都生まれ。3歳で劇団に入団、ドラマデビュー、「天才子役」と呼ばれる。数々の映画や舞台に出演したのち、映画の製作や小説の執筆、舞台の脚本・演出を手がけるなど、活躍の場を広げる。現在は『バイキング』(フジテレビ)月曜MCや『坂上忍の成長マン!!』(テレビ朝日)など多数のテレビ番組にレギュラー出演中。

 

『真昼の悪魔』書影

『真昼の悪魔』

遠藤周作 新潮文庫(Kindle版)

悪魔は人々の心のなかに、目だたぬ埃のように忍び込む──女医が病院で引き起こす理由なき“悪”とその心の闇を、『海と毒薬』『深い河』の遠藤周作が描いた長編小説。坂上さんはこの本を岩下志麻さんに薦められて読んだとのこと。「覚悟のある本。映像化できたら、きっと面白いはずなんだけど……」(坂上さん)。

坂上忍さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ6月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『偽悪のすすめ 嫌われることが怖くなくなる生き方』

『偽悪のすすめ』書影

坂上 忍 
講談社プラスアルファ新書 840円(税別)
●小賢しい「正しい生き方」を木端微塵にする坂上忍の人生訓の数々。捨て身(!?)の生き方を実践する彼の言葉は、「嫌われないか心配でビクビクしている」「本当は自分を曝け出して生きてみたい」という人にダイレクトに響くこと間違いなし! 厳しさの中にやさしさを秘めた、2010年代的自己啓発の良書。