北九州にアニメグッズが集う障がい者向け施設が誕生。その理事長に聞く
更新日:2014/5/23
――施設の設立に至ったきっかけをお聞かせ下さい。
前職の障がい者施設で、利用者や入居者からの声を聞いていたのがきっかけでした。障がい者ご本人やその家族、従事する職員たちとふれあう中で、アニメやキャラクター、アイドルなどを心から好きな方たちがとても多いことに気づかされました。
――施設の名称『みんなの王国』の由来は何ですか?
この施設に集まる利用者のみなさまが、全員“王様”になった気分で過ごしていただけるようにという意味を込めました。
▲施設内のいたるところにサブカル関連のグッズが並んでいる
――施設のある北九州も近年、サブカルに力を入れていますね。
駅前には『あるあるCity』という娯楽移設がありますし、今やアニメ自体も、日本の文化となっていますからね。ただ、障がい者本人やご家族のお話を聞いていると、なかなかそういう場所に足を踏み出せない現状もあったようです。『あるあるCity』やグッズ専門店へ行くには、交通の便や、たくさんの人の中に一人ではなかなか行けないという声も耳にしていました。
――そういった声がささやかれていた中で、利用者の反応はいかがですか?
家族からは『よくぞこういうのを作ってくれた!』という反響もいただいています。利用者の中では、他の場所でアニメが好きだというのを大々的に言うことができず、施設で行われるレクリエーションに馴染めず、ふさぎ込んでいるという意見も聞いていました。そのため、施設へ通うこと自体が嫌で引きこもりがちになり、なかば無理やり連れて行かれるような現状もあったようなんですね。だから、この施設ではとにかく楽しく過ごしてほしいと考えています。
――4月のオープンから現在まで、施設の状況はいかがですか?
オープンしてからは各所で取材していただいたこともあり、見学者や体験希望の方からの問合せも日に日に増えている印象ですね。利用されている方々も、それぞれみなさん楽しんで過ごされています。準備段階では色々と苦労もあり、スタッフみんなで『あるあるCity』などを足で見て回ったりしましたが、こうして身を結び、当初からあった「楽しい雰囲気が味わえる空間をご提供したい」という思いが形となりました。
▲スタッフのアイデアによりたくさんのフィギュアやぬいぐるみも集められている
――現在、施設内にはどれくらいの各種グッズが置かれているんですか?
詳しく数えたことはないのですが、おそらく1,000~1,500点ほどはあるかと思います。フィギュアやぬいぐるみが300~400点ほどで、他に、ミニカーや大型のラジコン、ヒーローやヒロインをかたどったおもちゃのほか、男女アイドルのグッズ。それから、アニメや特撮、アイドルなど様々なテーマの映像作品やマンガ、雑誌、テレビゲームやクレーンゲームなどもあります。
――それぞれのグッズを選んだ理由はあったんですか?
若年層から高齢層まで幅広い年代の方々が集まるので、利用者それぞれの楽しみ方で過ごせるようにいろいろなものを揃えました。なるべく誰もが知っているような有名なものを中心にしたのですが、古いところだと『月光仮面』や『仮面の忍者赤影』から、最近の『ワンピース』や『プリキュア』などもあります。
――今後また、新たにグッズを揃える予定はありますか?
利用者のリクエストをふまえながら、増やしていきたいと考えています。希望があればマニアックなものを揃えていくほか、やはり幅広い年代に合わせて、例えば「昭和コーナー」なども設けて、よりいっそう内容を充実させていければと思います。
▲利用者が気軽に手に取れるよう、マンガや雑誌も充実させている
――最後に、今後の展開をお聞かせ下さい。
作業施設であるため、サブカルをうたったコンセプトにもとづいたアニメやキャラクターの授産製品を制作していきたいですね。具体的には、施設オリジナルのキャラクターを使ったぬいぐるみや、独自の戦隊ヒーローなどを生み出し、フィギュアなどを展開していきたいと考えています。また、将来的には同じコンセプトを持った就労支援施設を作るとともに、飲食事業を組み合わせて、アニメなどが好きな方の集う空間を提供していきたいと思います。もちろん、時代背景に合わせた展開を続けていく予定です。
――貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。
障がい者については、現状でも様々な課題が山積しているが、同じアニメやグッズを愛し、楽しむものとして、そこに障害があってはいけないだろう。
今回取り上げた「みんなの王国」の試みは、障がい者のパーソナル(趣味)を理解し、自宅や施設以外に新たな“居場所を作る”という新しい試みだ。障がい者の介助や補助など、人為的なサポートだけでなく、精神的なサポートの動きは、今後もさらに広がってもらいたい。
取材・文=カネコシュウヘイ、写真提供=NPO法人 いこい広場DANDAN
取材協力
・「みんなの王国」見学・体験希望者を随時受け付け中。
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電話:093-513-6644
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