音尾琢真「父親と一緒に祖父の面影を辿る旅に出る。それが今の一番の夢なんです。」
公開日:2014/6/6
今回、音尾さんが推薦本に選んでくれたのは、沢木耕太郎の『深夜特急』。
この本の中で描かれているのは、今からおよそ40年前の世界だ。
「当時から比べると世界情勢も大きく変わってきましたよね。ですから、もし今、同じ旅をしたら、どんな見え方になるのか、すごく気になります。誰か代わりに挑戦して本にしてくれないかなと、勝手にそんな期待をしています(笑)」
どうせなら、ご自身で体験してみては? と話を振ってみたが、すかさず「僕はもう、さすがにムリ!」と笑う。「だって、安宿よりも、落ち着いてグッスリと眠れるホテルを選んじゃうもん(笑)」。
しかし、その音尾さんには今、心に秘めた旅の計画がある。それは父親とガダルカナル島に行くという夢だ。
「実は、父の父、つまり僕の祖父がガダルカナル島で戦死しているんです。僕の父が生まれて間もないころですから、父も祖父の顔を見たことがないんですよね。当時の戦記はわずかながら残っていますけど、それだけでは分からないことが多くて。だから二人で現地に行って、祖父が最期にいた土地の景色を見たり、空気だけでも感じてみたいんです」
こうした思いに駆られたのには、ちょっとしたキッカケがあった。
「この歳になると、自分がいかに父親に似ているかということに気づくことがあるんですよね。性格も考え方も、意外なほどそっくりなところが多くて。それに気づいてからは、次に、父親や祖父がどんなものを見て育ってきたのかを知りたくなったんです。とは言え、闇雲に質問してもきっと面倒臭がって答えてくれないでしょうから、一緒に旅をすることで、父の口からこぼれ出る昔話を拾っていきたいなと思っているんです」
「旅の途中で、きっとケンカしちゃうんだろうな……(笑)」と音尾さん。
「でも、そのあとで少しずつ互いのいろんな面を発見し、理解しあって、最終的には二人で男泣きしちゃいそう(笑)。で、気づいたら、親子の関係とは別に、男同士の絆が生まれているかもしれないし。そんな親子の旅をしてみたいですね。もし無事に終えることができたら、必ず本にしたいと思っていますので、そのときは『ダ・ヴィンチ』さんも力を貸してくださいね(笑)!」
取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之
おとお・たくま●1976年北海道生まれ。俳優。大学在学中に大泉洋らと演劇ユニットTEAM NACSを結成。前作の本公演では全国で7万人を動員。主な出演作に、舞台『真田十勇士』、ドラマ『日曜劇場 とんび』、映画『藁の楯』など。現在、人形劇『西遊記外伝 モンキーパーマⅡ』にメンバー全員で出演中。
ヘアメイク=川島享子
インドのデリーからロンドンまで乗り合いバスで行く。26歳になった著者が思いついたのは、そんなとんでもない旅だった。途中でさまざまな国や街に立ち止まり、現地の人々と交流を深めながら、気づけば旅は一年を超えたものに……。世界中で翻訳され、80年〜90年代に一人旅のブームを巻き起こした旅行記の金字塔。
『ノケモノノケモノ』
脚本・演出・美術/小林賢太郎
出演/音尾琢真、辻本耕志、高橋良輔、小林賢太郎
6月11日(水)~13日(金) 愛知・アートピアホール、6月18日(水)~19日(木) 宮城・イズミティ21 大ホールほかにて上演
●音尾演じるサラリーマンは、ある日不思議な世界へと紛れ込んでしまう。そこで彼が出会ったモノとは……。小林賢太郎が生み出す、演劇、お笑い、アートが巧みに組み合わさった、唯一無二のファンタジー作品。