石ころ以下のはずがない! 原作者がアニメスタッフとして関わった作品紹介

アニメ部

2014/6/20

少し前、あるアニメーターの「原作者は石ころより役に立たない」という過激な発言が話題になりました。ライトノベルやコミックなど、原作のある作品がメディアミックスとしてアニメ化されることが多くなってきた昨今、作者自らが積極的にアニメスタッフとして関わる事例が増えてきたように思われます。

例えば、現在放送中の『メカクシティアクターズ』。この作品では、原作者のじん氏が原作・ストーリー原案のみならずシリーズ構成・全話脚本も手掛けたことが話題になっています。


▲メカクシティアクターズ 1「人造エネミー」(完全生産限定版) 

普通に考えれば、餅は餅屋、アニメはアニメスタッフに任せるほうが安心できそうなもの。また、原作者はアニメ化によって、原作により注目が集まる可能性が高くなりますので、作品の続きを執筆することも求められます。よって、アニメにまでどっぷり関わっていては原作者の体がいくつあっても足りないでしょう。

しかし、過去を振り返っても、原作者がアニメに関わることは、決して珍しいことではありません。専門性は才能で、仕事量は情熱で乗り越えて自作のアニメ化に深くかかわった原作者たちは数多く存在するのです。

そこで、今回は原作者がアニメに関わった作品を振り返ってみましょう。


○原作者が監督まで務めたケース

『風の谷のナウシカ』『紅の豚』『風立ちぬ』の宮崎駿監督、『アリオン』『ヴィナス戦記』の安彦良和監督のように、アニメーターが自らの漫画や絵物語をアニメ化するケースがまずあります。
宮崎監督はアニメ制作の隙間を縫うように絵物語や漫画を発表しているのですが、本業はあくまでアニメ監督。
安彦氏は、元々は『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインで知られる超一流アニメーター。しかしながら、『ヴィナス戦記』を監督して以降はほぼ漫画に専念。そんな安彦氏ですが、このほど『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の総監督としてアニメ制作に復帰。否が応にも期待が高まるところです。
 

▲ヴイナス戦記 新リマスター & 16:9 ワイドスクリーン版

一方、アニメーター出身ではないにも関わらず、自作のアニメ化に際して監督を務めた原作者もいるのが面白いところ。

最も有名なのは手塚治虫氏でしょう。幼いころから海外のアニメに憧れており、日本国内でアニメ制作の機運が高まると、なんと自らアニメ制作会社を設立。この手塚プロダクション動画部は後に虫プロダクションと改名。マッドハウスやサンライズの母体となりました。『リボンの騎士』『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』を自ら監督。

このほか、大友克洋氏や士郎正宗氏も自作漫画のアニメ化に際して監督を務めています。その圧倒的な画力で日本漫画界に衝撃を与えた大友氏は、自作『AKIRA』のアニメ映画を監督。こちらも圧倒的な作画で世界に衝撃を与えました。以降はどちらかと言えば映像に重きを置いて活動しています。士郎氏は『ブラックマジック M-66』のOVAで監督・脚本・絵コンテを担当。しかし、映像作家としての活動はその後あまりさかんではなく、漫画やイラストでその才能を遺憾なく発揮しています。
 

▲ブラックマジック M-66

絵でお話を作るという点では、アニメと漫画は共通点も多く、手塚氏のみならず、タツノコプロの吉田竜夫氏など、TVアニメの初期の人材は漫画界から供給されるケースが多かったのですが、それ以来の伝統を感じさせる顔ぶれと言えるでしょう。


○原作者がシリーズ構成・メイン脚本を務めたケース

冒頭で挙げたじん氏のケースがこれにあたります。他にも『這いよる! ニャルアニ』の逢空万太氏、『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』の相田裕氏、『シュヴァリエ 〜Le Chevalier D'Eon〜』『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁氏、『魔法騎士レイアース』などの大川七瀬(CLAMP)氏。
 

▲魔法騎士レイアース DVDメモリアルBOX

さらには『フルメタル・パニック!』(共同)『フルメタル・パニック!ふもっふ』(共同)『フルメタル・パニック! The Second Raid』の賀東招二氏、『スレイヤーズNEXT』(共同)『スレイヤーズTRY』『ロスト・ユニバース』(共同)の神坂一氏、『神曲奏界ポリフォニカ』『ストレイト・ジャケット』の榊一郎氏、『ちょこッとSister』の雑破業氏、『君が主で執事が俺で』のタカヒロ氏、『僕は友達が少ないNEXT』の平坂読氏(共同)など、数多くの事例があります。
 

▲ちょこッとSister 第1巻 [DVD]

賀東氏、榊氏、雑破氏はこれ以降自作以外でもシリーズ構成やアニメ脚本に参加、特に雑破氏はすっかりアニメ脚本に重点を移した活動に入っていると言っていいでしょう。『戦国これくしょん』『帰宅部活動記録』など、忘れがたい傑作を数多く世に送り出しています。榊氏は、自作のアニメ化に原作以外でクレジットされたのは、実は先述の2作品だけ。アニメに関しては自作以外の作品に文芸スタッフとして参加するというスタイルをとっています。

また、『天地明察』で有名な冲方氏は以前からアニメへの参加も多く、小説原作のアニメ化よりも先に『蒼穹のファフナー』などでアニメのシリーズ構成を務めた数少ない小説家です。
 

▲蒼穹のファフナー Arcadian project 01

全体の傾向として、一見してライトノベル作家・小説家が多いことがわかります。また、アニメの2期以降、あるいは2作品目以降のアニメ化でシリーズ構成を担当するケースが多いのも興味深いところ。1期でアニメの仕事の進め方を理解し、満を持して2期以降にシリーズ構成を担当した、ということでしょうか。

物語を組み立てる作業を日常的に行っているという点では、小説家と脚本家はよく似ています。だからこそ、才能に溢れる原作者ならばシリーズ構成を任されても十分に応えられるのかもしれません。

先述したとおり、ストーリー面で原作者に関与してもらうのは、近年のアニメのトレンド。今後も、メディアをこえてマルチに活躍する作家さんが数多く登場することが予想されます。

文:夏葉薫