村田諒太「新鮮さと驚きがあれば、必ず成長できる。 それは、すごい勇気になりました」

あの人と本の話 and more

公開日:2014/8/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、ロンドン五輪では日本人ボクサーとして実に48年ぶりの金メダルを獲得し、昨年プロデビューを果たした村田諒太さん。大の読書家であるお父さんから、「本だけは読みなさい」と教えられてきたという村田さんのお勧めの本とは?

 大の読書家であるお父さんから、「本だけは読みなさい」と教えられてきたという村田さん。でも、本当に読書の大切さを知ったのは、ボクシングを始めてから。特にプロボクサーとしての道を決断してからは読書量が増え、試合前に行う約1カ月間のアメリカ強化キャンプにも、必ず、数冊の本を持参する。

「本は、僕にとって、弱い自分と上手くつき合うために欠かせない存在。また、自分を成長させるための刺激を与えてくれるものなんです。だから、特にアメリカでのキャンプ中は、練習の合間や寝る前には、いつも何かしらの本を読むようにしています」

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 なかでも強い刺激を受けたのは、『海馬 脳は疲れない』。それはプロデビュー戦直前の壮絶なプレッシャーを乗り越える力をくれたのみならず、「世界王者」に向かって戦う今も、日々の大切な指針になっているという。

「僕は、26歳でプロボクサーの道を決断しました。周りからは年齢的なことを言われたりしたけど、26歳でも新鮮さや驚きを持ち続ければ必ず伸びることができる。この本からは、そんな勇気を与えてもらったんです。あと、ボクシングに限らず何の仕事でもそうだと思うんですが、長いこと一つのことをやっていると、いい意味でも自分の形ができてくる。でも、それを大事に守っているだけでは成長していけない。だから僕はこれからも、この本に教えてもらったように、全てにおいて慣れたくないと思っています。すばらしい人との出会いや本からのいい刺激を積極的に取り入れ、こんなこともできないのかと落ち込むことを繰り返しながら、最終的にはそれを一日のうちに何とかクリアしていく。そんな日々の積み重ねの先に目標=世界王者になるという自分の最低限の義務の達成があるのだと思っています」

(取材・文=藤原理加 写真=山口徹花)

村田諒太

むらた・りょうた●1986年、奈良県生まれ。南京都高校(現・京都廣学館高校)で恩師・武元前川先生の下、本格的にボクシングを始める。2012年、ロンドン五輪で金メダルを獲得、2013年、ミドル級ボクサーとしてプロデビュー、現在4戦4KO勝ち。WBC世界ランキング13位。自宅にいる時は毎晩、子供に絵本を読みきかせてあげる優しいパパでもある!

 

『海馬 脳は疲れない』書影

紙『海馬 脳は疲れない』

池谷裕二、糸井重里 新潮文庫 630円(税別)

脳科学者・池谷裕二と、対談の名手・糸井重里による「脳と記憶」に関する目からウロコの集中対談! ちなみに読後、村田さんが試合前日の練習日記に綴った感想は、「脳の達成感を得るには、目標を小刻みにすること」「寝る前にできなかったことを考えることで、海馬が整理してくれる(ずっと続けても良くない)」。

村田諒太さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ9月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『プロボクサー 村田諒太フォトブック FIGHT』

『プロボクサー 村田諒太フォトブック FIGHT』書影

マガジンハウス 2000円(税別) 
身長183㎝、体重73㎏、日本人離れしたパワフルな肉体と、少年の頃のまま、「誰よりも強くなりたい」と、不器用なほど真っ直ぐにストイックに自らのボクシングを追求し続ける精神─。男も女も魅了するボクサーを超えた新しいアスレチックヒーロー、その魅力の全貌が堪能できる初写真集。恩師・武元前川先生との秘話をはじめ、これまで明かさなかったプライベートも語り尽くしたスペシャルインタビューも収録!