ガチオタで話題の松澤アナウンサーの想いを探る。どうしてこうなった?【後編】

アニメ部

2014/8/10

真面目な雰囲気とは裏腹に、アニメ好きをダダ漏れさせているアナウンサーの松澤千晶氏。
 

前回の記事では、思春期の松澤氏が『ときめきメモリアル』と『エヴァンゲリオン』により覚醒。昨年、所属事務所の移籍によって心身共にフリーとなったことで、ガチオタぶりをいかんなく発揮している経緯を探った。

今回は、彼女が頻繁に語った「アニメに恩返しをしたい」の真相に迫る。果たして、その理由と想いとは?


◇毎日泣いていた新人時代を支えたのは…

オタ趣味を持ち続けながら、大学ではピアノ科に進んだ松澤氏。進学先である日大の芸術学部には、メディア志望の学生が多くいたという。周りに触発を受けて、アナウンサーを目指すことに。

「今思うと、怖いもの知らずだなって思います。なんの根拠もなく、きれいでもなかったのに、アナウンサーを目指そうなんて…。
私は、いわゆる女子アナ志望の華やかな人たちと違って、本当にもっさい子だったんです。
就活の結果、キー局は落ちたのですが、フリーランスで、ニュース番組のアシスタントをさせてもらうことになりました。それから経済ニュース専門チャンネルで、本格的にアナウンサーとして働きはじめました」

アシスタントとして、ニュース番組デビューした松澤氏。しかし特に報道志望という訳ではなかったという。

「声や顔が硬いのでニュースっぽいね。というひと言で、報道方面をすすめられました。
今まで、クラシック音楽やアニメ・マンガという、現実離れした世界しか知りませんでした。だから就職してからは毎日が大変で、とにかく“現実の世界”を知ることで、いっぱいいっぱいで…」

運良く経済ニュースのアナウンサーの仕事を得た松澤氏。だが、待っていたのは地獄のような日々だったという。

「経済ニュースを伝えることは、新卒には難しい業務でした…。あのころは毎日泣いていましたね。でも、そんな私を救ったのもアニメなんです」
 

▲いつも持ち歩いている『美少女戦士セーラームーン』をイメージしたコスメ。今期の新作も楽しみだという


◇アニメの名言から元気をもらう

社会人になり、経済の勉強をする傍ら、最低限のアニメを見る時間だけは確保していたという。

「宇宙のゴミを拾う主人公が描かれた『プラネテス』。これは、自分と重なる部分が大きかったです。
当時私のいた部署が、普段は地味な部署だったのです。でも、一度災害が起こるとフル稼働する縁の下を支えるようなところでした。
主人公・ハチマキが、腐ったり落ち込んだりして、でも最後には、明るく這い上がる、そんな姿に私も立ち直る力をもらいました。
あと『鋼の錬金術師』にもいい言葉がたくさんあったので、1話ごとに、勇気付けられました」

松澤氏にとって、アニメ・マンガの名言は、今でも心の支えとなっている。新人時代に、特に自分を鼓舞し、支えられた言葉を教えてくれた。

「『一は全、全は一』。これは『ハガレン』に出てきた言葉です。
この作業は、無駄ではないのか? 何かの役に立つのか?と、疑問を持ったときや理不尽なこともきっと何かの役に立つと、この言葉を聞いてから思えるようになりました。いまでは、一つ一つの仕事が全てに繋がっていると、とても感謝しています。
あと、これも『ハガレン』からです。『人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない』。
自分の未熟さに毎日泣いていたとき、この言葉には励まされました。
それから、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』では、『世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ、 口をつぐんで孤独に暮らせ』。
不平不満を言っている人はたくさんいます。でも、だったら自分で変えるしかないと。
でも……こんなこと友達にいうと、『ちょっと変だよね』と言われるんですよね」
 

▲「アニメの名言は、頭のなかだけで唱えているつもりです。たぶん……」


◇「ウテナ」が教えてくれた自分の道

アニメが好きで、過去には色眼鏡で見られたこともあった、と松澤氏はいう。でも、それをあえて隠すことは一度もしなかった。

「Gペンや丸ペン、それに雲形定規を持っていました。教室の隅でマンガを描いていたので、ちょっと気持ち悪いと言われたこともありました。
でも『少女革命ウテナ』のおかげで、“私は私”と思えるようになったんです。
ウテナが、ブレることなく自分の道を突き進む姿を見て、私もこれだ!って。
アニメが好きで、キャラクターの生き方を目標にしてしまうところが、他の人からは少しおかしく見えるそうです。確かにおかしいとは思いますけれど、それが“私の普通”。無理に周りに合わせることはないのだと、気づかせてくれました。
アニメは私が窮地に陥ると助けてくれた存在です。なので、次は私がアニメに恩返しできたらと思っています。
ツイッターでつぶやいているのは、いい作品をもっとみんなに知ってもらいたいという想いからです」

ちなみに、JK時代は “開明墨汁”を買い占めていた松澤氏。さらにヲタの愛読雑誌『ファンロード』にイラストを投稿したこともあったそうな。
 

▲JK時代の寄り道場所は、「千葉と津田沼のアニメイト!」と即答

◇スキルを活かし、アニメの良さを伝えていきたい

困難に直面したとき、立ち直る勇気をくれたアニメ。今後は、アニメの良さを伝える仕事もしてみたいという。

「ニュースは人の知らないことを伝える手段です。同じ気持ちでアニメにも向き合っていきたいですね。まだ良さを知らない人に伝えたい。
先日もアニメイベントの司会のお仕事をいただいて、『てさぐれ!部活もの あんこーる』という作品で18姉妹役を演じていた上田麗奈さんが凄く素敵な方でファンになってしまいました。
18人姉妹なんて、大人の悪ふざけみたいな役ですよね。でも、冗談みたいな役でも、上田さんはものすごく一生懸命演じてらしたんです。
見た目はフワっとして可愛らしいのに、ものすごい熱量の高い方。18人を一人ずつ丁寧に演じ分けていました。
その上田さんが、初主演を務めるのが現在オンエア中の『ハナヤマタ』の主人公、関谷なるです。どのように演じられているのか楽しみです。みなさんもぜひ見てくださいね。」
 

▲好評放送中の『ハナヤマタ』。女子中学生たちがよさこいに触れ、結束してゆく姿が微笑ましい作品。


◇自分の正義を貫こう!

それがアニメのためになるのであれば、必要性があるのならば公の場でのコスプレも恥ずかしくはないという松澤氏。しかし、ただコスプレするだけの変わり者ではなく、あくまで伝え手としてアニメと視聴者の媒介でありたいという。
とはいっても、プライベートではすでに数着を購入済みだという。いつか松澤氏のコスプレ姿を拝める日が来ることだろう。

インタビューの締めに、迷えるアニメファンにメッセージをいただいた。
 

▲終始楽しそうにアニメを語る松澤氏

「アニメ好きで、今までの人生マイナスと感じたことは一度もありません。もしも、ご自身がマイナスと感じているのなら、それは物事の捉え方が狭くなっているのかもしれません。
私の大好きな『コードギアス~反逆のルルーシュ』にこんな言葉があります。
『打っていいやつは、打たれる覚悟があるやつだけだ』。
人のことを非難できるのは、自分が非難されてもかまわない人だけ。周りのことは気にせず、自分の正義を貫いていいんです」

彼女のインタビューを終えて、アニメ好きであることを“恥ずかしいこと”や“人に言えない趣味”と思い込み、隠す時代はすでに過去のものなのかもしれないと感じた。インタビュー中、目を輝かせながら、アニメ話に興じる彼女。自分の信じる正義を貫き、アニメファンであることを臆面もなく表現することで、我々に勇気を与えているのだろう。

最後に、印象的だったエピソードをもうひとつ。

インタビューに同席したアニメ部の編集長から4月から放送されていた『棺姫のチャイカ』が面白いという話が出たときであった。彼女の目に大粒の涙が浮かんだ。

自分を育ててくれたアニメ。そして苦しいとき、つらいときに自分を支えてくれたアニメ。その魅力を共感できる喜びに素直に感動し、子供のように涙したのだった。その姿に、“本物”を見た気がする。

<完>

■ 松澤千晶 (chiakinman) on Twitter
https://twitter.com/chiakinman

(取材・文=武藤徉子、撮影=橋本商店)