『テニミュ』『セーラームーン』『弱虫ペダル』 2.5次元ミュージカルとは?(前編)

アニメ部

2014/8/14

テニミュ

聖地巡礼を学問する学会、国ぐるみでヲタトラベラーを誘致など。政府のクールジャパン戦略に追随するように、近年、アニメを取り巻く業界では、今までにないほど活発である。
先日、さらに新たな団体が加わった。「日本2.5次元ミュージカル協会」の発足である。

2.5次元ミュージカルとは、アニメ・マンガ・ゲームなど、二次元の世界を舞台化した作品である。有名どころでは、『テニスの王子様』や『美少女戦士セーラームーン』などがあげられる。

なぜ2.5次元ミュージカルという業界団体が発足したのか? その背景を同協会代表理事・松田誠さんへ聞いてみた。


■ 160万人を動員する巨大市場
 

▲日本2.5次元ミュージカル協会、設立発表会の模様

「昨年、アニメ・マンガを原作としたミュージカルは、全部で約70タイトル発表されました。その観客動員数は、およそ160万人。演劇というマーケットでは、これは非常に大きな数字です。
近年、2.5次元ミュージカルは、急激に観客を増やしています。これを一過性のブームにしないためにも、国内でのさらなるニーズの掘り起こし、海外に向けての基盤造りが必要です。この2本の柱を実現させるために、2.5次元ミュージカル協会は発足しました。目標達成へ向けて、業界全体で市場の認知も含め協力しあっていく予定です」(松田さん以下同)

さらなる2.5次元ミュージカルの普及のために、発足した協会。しかし2.5次元ミュージカルが人を惹きつける理由とはなにか?
ミュージカルにあまり馴染みのない日本人だが、2.5次元においてはすんなりと作品世界に入り込めるという。
「2.5次元ミュージカルに大切なのは、作品に登場するキャラクターの再現性です。
ですので、誰が演じるかというよりは、どう演じるかが重要になります。観客の目的は、キャラクターなのですから」

キャラクターを始め、原作の世界観をそのまま舞台に再現すること。まずそれがファンを惹きつけるという。さらに、舞台は二次元との親和性がいいとも。

「舞台化するにあたり、二次元は向いています。舞台では、ディティールを省略しても、観客は脳内で内容を補完して見るからです。
例えば、2012年から続く、舞台『弱虫ペダル』では、自転車が1台も出てきません。自転車競技の作品にもかかわらずです。代わりに、役者はハンドルだけを握り、自転車を漕ぐ演技をします。しかし、観客には違和感がありません。まるで本当の自転車レースを見ているかのような、臨場感があります」
 

▲代表理事・松田誠氏


■ ミュージカルが原作も盛り上げる

また舞台化されるタイトルが増えてきた理由に、原作サイドの後押しもある。

「ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』『テニスの王子様』がヒットすることにより、原作のコミックスの売上げに貢献することができました。
今まで原作側が、舞台化にあまり乗り気ではなかった理由は、ロイヤリティの多寡ではありません。あまりメリットを見いだせなかったことです。ところが舞台のヒットにより、原作が売れるということがわかると、出版社も積極的になってきました。
昔は、『舞台化してもいいけど、タイトルを傷つけないで』などと、言われていました(笑)。でも今は逆に出版社サイドから舞台化の依頼が来るぐらいです」

映画化され、世界へ配信された『DEATH NOTE』。この作品は、映画のヒットとともに、海外版のコミックスにも火が付いたという。これと同じことをミュージカル作品を世界に輸出することで目指そうというのである。


■ 海外でも2.5次元は人気

年間160万人が、2.5次元ミュージカルに足を運ぶとは、かなり大きな市場である。国内ではすでに飽和状態ではないだろうか?

「残念ながら160万人という数字は、国民のわずか1%程度です。まだ99%の人は、2.5次元ミュージカルをはじめ、劇場へ足を運んでいません。大都市圏の劇場にのみ集中しているため、今後は、地方公演なども積極的に検討していきます。私たちはその需要を更に掘り起こす必要があります」

古くは『ベルサイユのバラ』から始まった、二次元作品の舞台化。日本では、当たり前だが、海外ではまだ珍しい試みだ。

「ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の観客の2〜3割は、外国人でした。また、日本アニメの世界シェアは、約70%です。これはひとつのプロダクトとしては、断トツです。
このように、日本のアニメが世界の基準であるように、2.5次元ミュージカルも日本が標準化すること。それも我々の目的のひとつでもあります」

今、アニメが放送されるとともに、インターネットを通じ、タイムラグなし世界に配信される。特にアジア圏において、日本アニメの人気は高い。
事実、韓国・台湾にてミュージカル『テニスの王子様』を公演した際は、チケットは完売・満席だったという。

「現在、日本では、劇場不足です。特に東京では、2018年まで空きがありません。
一方、中国へ目を向けると、劇場があれどコンテンツが足りていません。
またジャカルタでは、若い人が多いにも関わらず、エンターテイメント自体が少なく、特にライブコンテンツは発達していません。
アニメでは動画の違法アップロードが問題になっています。しかしどんなに動画の技術が進んでも、舞台はコピーできません。ライブエンターテイメント、すなわち『生』で見る感動を世界に届けたいのです!!」

役者が汗をかき、目の前で歌い踊る。同じ空間を共有しているからこそ感動が大きくなる。この感動はたしかに画面越しでは伝わりづらい。
 

▲舞台『弱虫ペダル』では、役者が自転車に乗ってない!


■ 日本の演劇界に足りないもの

地方の進出とともに、業界が手を結びたい課題がまだあるという。それは劇場不足とも関連する。

「日本の劇場では、ロングラン公演ができないのです。劇団四季のように、独自の劇場を持っていればそれも可能です。ロングラン公演の方が、期間を区切らず公演ができるので、ビジネスとしてなりたちやすい。
ただ、2.5次元ミュージカルは、キャラクターという強い吸引力があります。そのため、他の舞台作品に比べ、パンフレットを含め物販が好調です。またDVD販売やパブリックビューイング、ネット中継と、収益を得る方法を色々と模索できます」

一方、同協会を立ち上げた理由には、海外輸出しやすくする、という意味もある。

「ブロードウェイなどの、海外のミュージカル業界は、舞台を輸出するノウハウが整っています。例えば、衣装の貸出料○○︎円、演出家の派遣代金○○︎円など。提供するサービスがカタログ化されているのです。我々は、まずこのカタログを作ることから始めたいと思います」

カタログを作れば、効率良く作品を輸出できる。今まで日本の舞台作品が海外でロングランされなかった背景には、こんな理由があったのだ。業界全体で統一規格をつくれば、時間も短縮できるだろう。

このように、成長を続ける2.5次元ミュージカルの世界にも、まだまだ課題が残るのだ。では、その舞台はどのように作られるのか。

次回、2.5次元ミュージカルのターニングポイントとなった『テニスの王子様』を例に見る。

後編へ続く


■ 2.5次元ミュージカル協会では「2.5フレンズ」も用意
 

入会制限のない「フレンド会員」は、2.5次元ミュージカル情報などをメルマガなどで知ることができる。募集開始は未定だが、発表は同協会HPにて行われる。

HP:http://j25musical.jp

(写真提供=一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会、取材・文=武藤徉子)

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