2,000テイクも重ねる超こだわり派! 人気歌い手、ぐるたみん独占取材

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公開日:2014/9/25

「歌ってみた」というニコニコ動画から始まったムーブメント。メジャー音楽シーンにどこまで食い込むことができるのか。
 この前代未聞の挑戦をしているのが、人気歌い手ぐるたみん氏である。

 ぐるたみん氏といえば、2009年からニコニコ動画にて歌を披露し、『【うるおぼえで歌ってみた】only my railgun【ぐるたみん】』が、700万再生を突破。ファーストアルバム『ぐ』は、10万枚以上を販売しゴールドディスクに認定された。

 CDが売れないといわれている時代に快挙を成し遂げている。今回、シングルリリースという挑戦に、なぜ至ったのか。ぐるたみん氏を直撃してみた!


■105歳にして驚きの美声

 都内某所に現れたぐるたみん氏は、細身の華奢なスタイル。そしてオーダーした飲み物は、コーヒーフロート。

「メロンソーダとか、アイスフロートが大好きなんですよ。本当はのどを労らなければいけないのですけどね」

 自称105歳にしては、選り好みしない健啖家である。

 さっそくこの度の挑戦の裏側を聞いてみた。

「アルバムチャートは1stおよび2ndは、オリコンチャート5位まで達しました。そして今年3月に3rdアルバムを発売しました。デビュー当時の2011年よりも、認知されてきたかと思います。
 そこでもう一段高いハードルに挑もうと思ったのです。シングルはアルバムより購入者は少ないんです。それにシングルチャートを争うのは、そうそうたるメンツのアーティストばかり。気合いを入れて楽曲をつくりました」(ぐるたみん氏、以下同)


▲ファーストシングル『センセーション・シグナル』


■『天樂』との出会い

 その楽曲とは『センセーション・シグナル』。おなじみの作詞作曲家・ゆうゆ氏と組み、自身の代名詞であるハイトーンボイスを惜しげもなく披露している。

「ゆうゆさんには、今までもいくつも楽曲を提供してもらっています。毎回、イメージ通りの曲が上がってくるのですが、今回も信頼してのお願いでした。
 テーマはずばり『戦い』です。いい感じにイケイケな曲になっています!」

 シングルチャートへの果たし状となる、今作を手がけたゆうゆ氏とは、メジャーデビューする前にさかのぼる。

「ニコニコ動画に投稿してまだ間もない頃に、ゆうゆさんの楽曲『天樂』に出会って。すごくいい曲だと思って。それまでは、“うるおぼえ(うろ覚え)”で歌っていたのですが、ちゃんと歌ってみたいと思った楽曲ですね」

 ゆうゆ氏とぐるたみん氏のふたり。長きにわたる絆が今回の楽曲でも身を結んだ。初シングルも気分アゲアゲな脳内物質が出まくる曲になっている。


▲アルバム『た』に収録「ローリング・サバイバー」のイメージイラスト。ぐるたみん氏もこんな活発なイメージだ


■実は音楽一家に生まれた

 ニコニコ動画に多数の曲をアップしていたものの、その素顔は謎のぐるたみん氏。自身の音楽経験などは語る機会は少なかったが、ここで氏のバックグラウンドについてうかがってみた。
 今までバンド経験などあったのだろうか。

「ないですね。学生のころ文化祭で歌った程度です。動画投稿を始めたのは、友達の手伝いがきっかけです。『ロミオとシンデレラ』という曲の編集MIXを手伝って、自分もついでに歌ったのが始まりです」

 ほとんど未経験からのスタートだというのか。それにしてはハイクオリティである。ピアノを習ったりの経験は?

「ないですね。でも、うちの家族は音楽一家なので、ピアノは3歳のころから弾いていました。習っていたわけではないのですが、父の影響で。耳コピでなんでも弾いていましたね。小学生のころにはシンセサイザーもいじっていたり。そのころどんな曲を弾いていたかというと……。フュージョン系ですかね」

 フュージョンというと、ジャズにロック・テクノなどを融合させってやつか? なんとおマセな小学生!

「うちの父親がジャズピアニストなんですよ。だから音楽は日常的にあって、好きとか嫌いという感覚ではないですね」


▲こちらも『た』収録「レイワイテロリズム」のイメージ。今作もこのような“戦い”の雰囲気である


■いい歌より、いい音

 歌い手のなかでも抜きんでて、クリアなボイスで歌うぐるたみん氏。歌にはどのようにむきあっているのだろうか。

「僕は『歌を上手く歌おう』と思ったことは一度もないですね。常に『いい音を出そう』と思っていました。
 たとえば、『イエーイ』とシャウトするときもどんな出し方をすればカッコイイかを追求しています。スクリーム系なのか、シャウト系なのか」

 いい音へのこだわりはハンパない。それは録音のテイク数にも現れている。

「1曲あたり、2,000テイク録音することもあります。だいたい2週間かかりますね。
 いい音をだそうと思うと日をまたぐこともあります。
 僕が思う“いい音”とは、『聞こえがいい音』です。そのために、倍音が均等に出るよう心がけています」

 倍音とは、基調となる音以外にかすかに鳴る音がある。これを倍音という。普通の耳には聞き取りづらくとも、この倍音成分が整っていると非常に耳障りがいいという。

 それにしても、テイク数が2,000とは驚く! その妥協ないモチベーションはどこからくるのか。

「アルバムを出して、音楽は自分の人生の集大成だと思いました。毎回、最終地点でもアリ、通過点でもあり。
 ファーストアルバム『ぐ』は、自分の代名詞となる作品。セカンド『る』は、ファーストの質をあげ、超える作品。サードアルバム『た』は、ライブを意識した音になっています。
 そして、今回の初シングルは、言わば『夢』でしょうか。少し前まで武道館なんて夢だった。でも、このシングルでその夢へつなぐことができればいいなと思います」


▲ぐるたみん氏は、グッズ製作にもこだわりがあるという。上はストラップ


 デビューして3枚もアルバムを出せるアーティストは、どれくらいなのだろうか。そしてシングルカットまで発売できるとは。
 ぐるたみん氏の、既出のアルバム名をつなぐと「ぐ・る・た」である。ということは、「み」と「ん」の未来も見えているということだろう。

 今回のインタビューでは、ノリノリハイテンションな芸風からは想像もつかない、ぐるたみん氏の音楽への真摯な姿がのぞけた。本気で挑む人には、結果もついてくる。シングルチャートへの試みも、きっとそのスタンスに応えてくれるに違いない!


■ぐるたみん公式HP
11月24日『センセーション・シグナル / ぐるたみん』 発売記念トークショー開催!! 参加券購入の詳細はオフィシャルHPまで。
http://glutan.jp

取材・文=武藤徉子