中国でも大人気となった「ラブライブ!」の凄さとは【コラム 中国オタク事情】

アニメ

更新日:2014/11/25

 中国オタク事情を連載している百元です。第5回は中国のオタク界隈に対して今年最も大きな影響を及ぼしたであろう作品、「ラブライブ!」に関して紹介させていただきます。

◆「ラブライブ!」の人気爆発の流れ
 中国で「ラブライブ!」の人気に火が付いたのは今年の4月頃、アニメの第2期が始まってからです。「ラブライブ!」の第2期は中国の動画サイトでも公式配信されましたが、作中の歌やライブシーン、ネタ画像などが中国オタク界隈においてかなりの勢いで広まり、熱心なファンが急増し、作品に関するやり取りが中国のネットで活発に飛び交うこととなりました。

 またアニメ第2期から少し遅れてスマホ向けゲームの「スクールアイドルフェスティバル」の簡体字中国語版のサービスも現地で開始され、そちらの方にも多くのファンがハマっています。そして更にゲームの広告として上海に「ラブライブ!」のラッピング地下鉄が走り、「痛地下鉄が中国の公共交通に出現!?」と中国のオタクな人達に大きな衝撃を与えたりもしています。

◆実は中国でも予想外だった大人気
 そんな「ラブライブ!」ですが、実は中国オタク界隈においては恐らく今年最も予想外な人気になった作品とも言えます。アニメ第2期開始以前の人気は「一部にファンはいる」程度で、アニメ第1期が放映されていた当時もあまり話題になっていなかったそうです。

 それに加えてこれまで中国で人気になった作品の傾向から、「ストーリー性の強い作品、ストーリーが面白い作品が好まれる」、「女性キャラ中心のキャラ萌え路線の作品は広い範囲で人気になるのは難しい」という分析もありましたし、過去に中国に入ったアイドルをテーマにしたアニメの人気は概ね一部のマニアの間にとどまる程度だったことから、「ラブライブ!」が大人気になるというのはあまり予想できなかったのだとか。

 しかしその後ライトな層を中心に中国でも人気が爆発し、ファンが様々な方向に熱意を発散させたり暴走したりするような事態となっていきました。古参の中国のオタクな人からは「まさか中国でこんなことが起こるとは思いもしなかった……」というぼやきが聞こえてきたりもしました。

◆「ラブライブ!」の人気の凄さ
 中国オタク界隈における「ラブライブ!」の人気の凄さや方向性に関しては、作品関係で広まった2つの中国オタク用語からも見て取れます。

そのひとつ目は「Aji人」という言葉です。
この言葉自体は「ラブライブ!」の人気が爆発する以前からあったもので、中国語では不要になったもの指す言葉「垃圾」(laji)から来ており、課金に狂う人に関する自嘲、蔑称的な言葉だったそうなのですが、「ラブライブ!」が大人気になりスマホのゲームにハマる人が急増して以降、この「Aji人」はもっぱら「ラブライブのゲームにハマって課金しまくる人」に対する呼称になっているという話です。

そしてもうひとつが「邪教」という言葉です。
これは現在中国オタク界隈において「ラブライブ!」のあだ名的な使い方をされています。「ラブライブ!」はその人気や熱烈なファンの増加、話題の広まり方が凄まじく、前述のラッピング地下鉄に対して駅のホームで叩頭して伏し拝むパフォーマンスを行う人まで出る等、現地のファンの活動がどんどんダメな方向にエスカレートしていき、中国オタク界隈ではイロイロと衝撃やら心配やらが生じることとなりました。そういった「作品の感染力」や「ファンの暴走」等から、ネタと少しの畏怖も込めて「邪教」と称されている模様です。

◆「ラブライブ!」によって見えて来た中国オタク界隈の新たな流れ
この様に中国オタク界隈を驚かせた「ラブライブ!」とその人気ですが、その広まり方の傾向やファンの反応等において中国オタク界隈における新たな流れを際立たせました。

 一昔前は古参のオタクやファンサブグループなどのマニア層による作品のプッシュが中国における作品人気に大きな影響を与えていたのですが、最近はライト層を中心にして何らかのきっかけにより作品への注目が集まり、そこから人気が拡大するという流れが多くなってきています。そしてその際にはネット上で話題にし易い、面白さを伝え易いといった要素が強く影響します。「ラブライブ!」はライブシーンがそういった作品の面白さ、スゴさを伝える上では格好の素材となりましたし、他にもキャラ関係で話題にし易い所が多かったという話です。

 それに加えてスマホのゲームという作品以外の、しかもデジタルなデータにお金を使うことについて積極的なファンが出ているというのも興味深い所です。中国では過去にコピーや海賊版しかなかったこともあってか、複製の容易なデジタルデータに関しては価値を認めない、お金を使いたがらないといった傾向が強かったのですが、「ラブライブ!」ではむしろゲームにお金を使うことをアピールする、課金してしまう自分をネタにするといった動きも出ています。

 以上のように「ラブライブ!」の中国における人気とファンの盛り上がりは、凄いと同時に中国オタク界隈の環境や作品の好み、楽しみ方、交流のスタイル等に変化が生じているということを強く実感させられるものとなっています。

 中国における「ラブライブ!」の人気が今後どうなっていくのかも気になりますが、「ラブライブ!」のような流れで人気が爆発する作品が他にも出現するのか、といった辺りについても気になりますね。

文=百元籠羊