菅 広文(ロザン)「この本を書いたことで、歴史の流れの中に自分らがいるという見方をするようになりました」

あの人と本の話 and more

公開日:2014/12/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。京大芸人・宇治原を相方とするロザンの菅広文さん。累計20万部のベストセラーとなった著書『京大芸人』『京大少年』に続き、先ごろ『京大芸人式日本史』を上梓した。日本史を物語として読んだとき見えてくるものとは?

 京大卒の芸人・宇治原史規を相方とするロザンの菅広文さんは、芸人活動のため中退しているものの大阪府立大学に合格した高学歴芸人である。子どもの頃は図書館でずっと本を読んでいる少年だったそうだ。そんな菅さんの5年ぶりの著書が『京大芸人式日本史』だ。

「縄文時代は土地がまだ誰のものか、はっきり決まってなかった。そこへえらいさんが現れて、自分の土地だと言い出すんですよね。645年の大化の改新は、『全部、僕たちの土地だから、みんなに貸してあげますよ』と最初に言い出した人の話なんです。その土地を身内同士で狙い合っていたのが、今度は隣の国が狙うようになって、それが世界にまで広がっていったんです。“土地”という一つの軸が定まったとき、日本史をテーマにイケると思いましたね」

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 もともとは相方・宇治原史規の「日本史は物語のように読めば絶対に忘れない」という勉強法がきっかけ。まず相方に日本史をまとめてもらい、菅さんも教科書を買って日本史を勉強しながら解体していった。

「受験のときは日本史の本質をわかってなかった。あらためて勉強し直してみて、日本史ってこんなに面白いんや、というのが率直な感想でした。結局はずーっと天皇の話なんですよね。えらいさんを誰が守るか? 僕が守ります。いやいや俺が天下統一して守ったほうがいいよ。そういうことをずっとやってきている。そこは先生も踏み込みづらいところなので、教えにくかったんちゃうかな、と思いますね。僕は芸人なので、芸人が日本史の本を書いたらこうなるのか、くらいの気楽な感じで読んでほしいですね」

 漫才トークのように面白おかしく本音で語りながら、日本史の本質に迫っていくのが本書の醍醐味だ。

「僕らは歴史を振り返って『この時代はこうだった』と言ってますけど、その時代に生きていた人は歴史的な解釈をしていない。第一次世界大戦も第二次世界大戦もなんでああなったのか、歴史的に振り返ってみないとわからないじゃないですか。それは今を生きてる僕らも同じで、なんであのとき特定秘密保護法案を通したん? 消費税を10%にしたん?と未来の教科書に歴史的な解釈が載るかもしれない。この本を書いたことで、今も歴史の流れの中に自分らがいるという見方をするようになりましたね。次は、『京大芸人式世界史』か『京大芸人式新聞の読み方』を書きたいと思います」

(取材・文=大寺 明 写真=鈴木慶子)

菅 広文

すが・ひろふみ●1976年大阪府高石市生まれ。96年8月、高校時代の友人である宇治原史規(京都大学法学部卒業)とロザンを結成。98年に心斎橋2丁目劇場でプロ初舞台を踏む。高性能勉強ロボ・宇治原の勉強法や、二人が芸人になるまでを描いた『京大芸人』『京大少年』が累計20万部のベストセラーとなる。

 

『くちびるに歌を』書影

紙『くちびるに歌を』

中田永一 小学館文庫 619円(税別)

長崎県五島列島の中学校合唱部を「自称ニート」の美人ピアニスト・柏木が受け持つことになった。彼女の美貌に魅せられた男子の入部が殺到したことで、女子との対立が激化する。柏木はNコンの課題曲「手紙~拝啓十五の君へ~」にちなみ、15年後の自分に向けて手紙を書くように部員たちに課題を出すのだった。

※菅 広文さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ1月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『京大芸人式日本史』

『京大芸人式日本史』書影

菅 広文 
幻冬舎 1300円(税別)
日本史で年号や人物名を丸暗記したが、すっかり忘れてしまったという人は多い。しかし、京大芸人・宇治原によると「日本史は物語のように読めば絶対に忘れない」という。そこで相方の菅が歴史をさかのぼり、縄文時代から日本の近代までを面白おかしく物語化! 歴史上の人物とくだけたトークを繰り広げながら日本史の流れを理解してゆく。