広瀬香美「書いてみてわかった。私の歩んできた日々はすべて音楽と密接につながっている」

あの人と本の話 and more

公開日:2015/1/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、歌手の広瀬香美さん。自伝的エッセイ『絶対音感のドレミちゃん』で、絶対音感を持つ者の宿命を記したなかには、前を向いて進むための言葉もいっぱい。そんな初エッセイ執筆中のエピソードを訊いた。

「作詞をしているので“書くことは大丈夫!”と考えていたのですが、エッセイは過去の体験を感情とともに、こまかなところまで掘り起こしていく作業が大変で、執筆に1年もかかってしまいました」

 絶対音感を身に付けたことで周囲に起こったさまざまな出来事、デビューから現在に至るまでの記憶、そうしたものを鮮明に思い出させてくれたのは自身のヒット曲の数々だったという。

advertisement

「“苦しかったのはあの曲を歌っていた頃だな”とか。私の歩んできた日々は、すべて音楽と密接につながっていることが、書いてみて、さらにはっきりとしました」

 2部で構成されている本書は、後半部分で、歌手や作曲家などプロの音楽家になるための具体的なアドバイスも綴られている。

「“自分の力を信じて努力すれば、きっと夢は叶う”。私自身、そうしてここまでやってきたけれど、現在、後進の指導にもあたる者として、もっと明確な回答をもっていなければ、と。自分のなかから導きだした答えがこの本のなかにはあります」

 夢を追いかけ、走り続けてきた日々のなかで気付いた大切なこと――辛く、哀しい体験をポジティブに変換する思考は多くの人生のヒントにもなるはず。一昨年まではなんと一日一冊! 広瀬さんは、そうした生きるためのスパイスを読書から受け取ることが多いという。

「去年くらいから一冊をゆっくり読むスタイルに変わりました。読書は私の絶対音感を揺さぶらない唯一のもの。子どもの頃は活字が音符に見えて読めなかったのですが、今はそのスイッチをオフにできる技術も手に入れて。静かなところでひとり、じっくりと楽しみます」

“積ん読”はしない。どんどん読んで、どんどん手放すのが広瀬流。

「世の中には本当に面白い本がいっぱいある。これも読みたい、あれも読みたいと、その衝動が押さえきれないんです」

(取材・文=河村道子 写真=冨永智子)

広瀬香美

ひろせ・こうみ●福岡県生まれ。歌手、作曲家、作詞家、音楽監督。4歳より音楽の英才教育を受ける。国立音楽大学在学中、米国にてマイケル・ジャクソンらのボイス・トレーナーであるSeth Riggsに師事。1992年『愛があれば大丈夫』発表以降、『ロマンスの神様』など次々大ヒットを飛ばす。最新アルバムは『Winter High!!~Best of Kohmi’s party~』。
ヘアメイク=南田英昭 (addmixB.G) スタイリング=JUNCO

 

『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』書影

紙『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』

岸見一郎、古賀史健 ダイヤモンド社 1500円(税別)

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言する心理学者・アルフレッド・アドラー。なぜ変われないのか? なぜ劣等感を克服できないのか? なぜ幸せを実感できないのか? 青年と哲人の対話で綴る“物語”はアドラーの教えを具体策へと転換していく。絶妙なテンポの問いと答えの応酬が理解を深めてくれる。

※広瀬香美さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ2月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『絶対音感のドレミちゃん』

『絶対音感のドレミちゃん』書影

広瀬香美
KADOKAWA 角川マガジンズ 1500円(税別)
絶対音感を持ったがゆえの悲喜劇──幼い頃からの数々のエピソードとともに、国内屈指のボーカリストとして歩んできた道を綴った初の自伝的エッセイ。現在、後進の指導にもあたる著者が、プロの音楽家になるためのメソッド、志も伝授。聞くだけで元気になれる、パワフルな歌声の奥にある人生のスパイスが心に響きわたる一冊。