今期一アツいアイドル伝説の誕生を目撃せよ! 今、その輝きが知名度を超えようとしている前衛アニメ『少年ハリウッド』レビュー

アニメ

公開日:2015/1/18

 2015年1月より、アニメ『少年ハリウッド』シリーズ第2期である『少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 50 -』の放映が始まりました。このアニメ『少年ハリウッド』、実はすごい作品なのですが、イマイチ世間との評価に乖離があるような……(筆者の体感です)。というわけで今回は男性でも確実に楽しめるこの作品の魅力について、1期の内容も含めて紹介します。

そもそもアニメ『少年ハリウッド』とは?

 現在、男子アイドルを題材とし、アニメ×小説×ぜんハリ(生のアイドル)の三本柱を掲げた「少年ハリウッドプロジェクト」が進められています。そのうちのアニメの部分を担うのが、現在放映されているアニメ『少年ハリウッド』です。

 舞台は、かつて少年ハリウッドという男子アイドルグループが人気を博したころから15年後。原宿にある劇場「ハリウッド東京」に5人の男子が集められ、謎の人物・シャチョウにより、新生少年ハリウッドの結成が告げられた。かくして5人は、アイドルへの道を踏み出すこととなった――というお話です。アイドルの卵である男子たちが、切磋琢磨し成長していくさまが描かれます。

男子メンバーをファン/保護者のような心持ちで見守る

 少年ハリウッドの魅力のひとつ、それは何といっても“少ハリ”メンバーのかわいさです。出自の違うアイドルの卵たち5人が、それぞれの事情で悩みつつ、気づきを得て成長し、笑顔になる。その様を見ていると、自ずとファンになったり、保護者のような心持ちになったりと、彼らを応援したくなってきます。まさにこのアニメは、アイドルの卵「少年ハリウッドの成長記録そのものなのです(ちなみに筆者が好きなのは、控えめでマイペースなカケル君です)。

 先日放映された2期1話目は、1期最終話クリスマス・デビューライブの半年後の夏から物語が始まりました。着実にライブを積み重ねた結果、アイドルだけがまとえる“キラキラ”を見事に身に付けた彼らを見て、筆者は早くも彼らのいちファン/保護者として「成長したんだなあ」と深い幸福感に満たされたものでした。

 2期では今後、ある程度の経験を積み重ね、駆け出しアイドルの真っただ中にいる彼らがさらに飛躍するなかで、さまざまなドラマが繰り広げられるものと思われます。彼らがどんな壁や悩みにぶつかり、どんな表情を見せるのか、いちファン/保護者として、ハラハラドキドキしながら観られるのでしょう。

奇抜、奇天烈、でも感動! 野心的な演出の数々

 と、ここまでは数多あるアイドルアニメのいくつかでも感じられる部分ではあります。しかしもうひとつの魅力である演出面が『少年ハリウッド』を唯一無二のものにしているのです。

 たとえば1期の5話では、彼らが公演する舞台「エアボーイズ」の一部始終が、そのままアニメになされました。その一方で10話では、彼らが縁あって出演することになった「ときめきミュージックルーム」という歌番組を、1話の尺を使って描写するというこれまた珍しい試みがなされています(人気声優、堀江由衣がキャラクター原案の美少女キャラクター、ミス・モノクロームが出演したり、“歌番組”っぽさが満載だったりと必見!)。

 これらは単純に演出そのものとして挑戦的なだけでなく、「少ハリの5人がアイドルとして、晴れの舞台をひとつひとつ経験していく、そしてその一部始終をいちファンとしてリアルに体験できる」という効果が重なって、より深い感動が得られる作りになっていました。これも、まるで現実のアイドルを応援するのと同じ体験です。

 また1期7話の後半は、歌が苦手なカケル君を鼓舞するため、ほかのメンバーが半ミュージカル調に歌い始め、原宿の街を練り歩くという、これまた強烈な内容でした。歌いながら街を闊歩する彼らには、通行人からの冷ややかな目線が投げかけられます(リアルな反応)。

 しかし彼らは意に介すことはなく「俺たちは少年ハリウッドだ!」と歌い、踊り続け、最終的に、聴衆からの拍手を勝ち得るのです。そもそもアイドルとは恥ずかしさ、痛さを乗り越えたところに存在するわけで、この強烈な話によって彼らがアイドルとして一歩前進した。そしてこの痛々しさのなかにこそ、彼らのかけがえのない青春のひと時が凝縮されている……そんなことを思い、筆者の涙は止まりませんでした。

 このように普通の1クールアニメなら1回あるかどうかの「神回!!」と呼ばれるような、演出と物語がガッチリと噛み合った話が連発された『少年ハリウッド』。2期でも、このような一線を踏み越えたラディカルさが垣間見えるのか、注目していきたいものです。

小説版『少年ハリウッド 完全版』」を読んでおくとさらに美味しい

 そしてアニメ『少年ハリウッド』を堪能するうえで、副読本としてぜひ読んでおきたいのが、小説版『少年ハリウッド 完全版』です。

 小説版『少年ハリウッド 完全版』は、アニメより十数年前に活躍した初代少年ハリウッドのメンバーが主人公の物語です。今では新生少ハリを導くシャチョウ(当時の名前はゴッド!)が、アイドルを志したエキセントリックないきさつが記されており、これを読むことで、以後アニメでシャチョウを見る目がガラリと変わるでしょう。

 また、アニメ1期にはおいてシャチョウ以外の初代メンバーも既に数人登場しており、今後も登場が期待されます。彼らは頼れる先輩として新生少年ハリウッドを優しく見守り、時には背中を押してあげていますが、小説を読むことで「実は彼らにはこんな背景があるんだ」と、アニメ視聴がより味わい深くなります。『少年ハリウッド』の世界をさらに楽しめる作りになっている小説版。アニメ2期を楽しむためにも、手に取ってみることをお勧めします。

 と、このようにドラマ面においても、演出面においても、十二分な見ごたえが期待できるアニメ『少年ハリウッド』。2期1話は彼らの自己紹介的な内容にもなっているためここから入ってもよし、13話と短いので1期を観てからでもよし。今、一番「アイドルを応援できる」アニメですよ!

文=ショコラ・バニラ 編集=はるのおと