TK「文の意図を考えるよりも先に、作者の感情が伝わってきた。この感覚は初めてでした」

あの人と本の話 and more

公開日:2015/2/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、1月にベストアルバム『Best of Tornado』とニューシングル『Who What Who What』をリリースした「凛として時雨」のTKさん。本が苦手な彼が、唯一夢中になったという茨木のり子の『歳月』と、そこからインスピレーションを受けた曲作りの共通点をうかがった。

 インタビューを始めるにあたって、唐突に「僕、あまり本を読まないんですよね……」とカミングアウトをしたTKさん。「だから、僕なんかがダ・ヴィンチに出ていいものかどうか、すごく悩みまして(苦笑)」と素直に心境を吐露してくれた。彼の家の本棚にあるのは主に写真集。写真は見るのも、自身が撮るのも大好きだという。
「それでも、写真集だって一度目を通すと、その後見返すことってほとんどないんです」
 では、その彼がなぜ、茨木のり子の『歳月』にだけは興味を持ったのだろうか――。

「出会いはレコーディング・スタジオでした。そこに置いてあったのを偶然、手にしたんです。なぜか今までの本とは全然違う感覚になれて。レコーディングそっちのけで、夢中になって読んでました(笑)」

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 夢中になれた理由は、本誌でも語っている通り。だが、あえてもう一歩突っ込んで、“本を読むのが苦手な理由”についてもうかがってみた。

「僕の読み方がヘタなんでしょうね(笑)。小説を読むときって、作者が書きたいと思っていること、伝えたいと考えているテーマを、僕の方から向かいに行ってあげないと、そこに入り込めない感じがするんです。写真集はまだ視覚的に楽しめるので、すっと入り込むことができるんですが、文字ではそれができなくて。でも、茨木さんの『歳月』で書かれている詩は、作品というよりも美しいままの純粋な思いで綴られたラブレターの様なもの。だからか、こちらが作者の“意図”を迎えに行かなくても、何の隔たりもなく、自然とその感情が伝わってきたんですよね。この感覚は初めてでした」

 実はTKさん自身も、曲作りではいつもこの“無意識のなかから生まれるもの”にこだわっている。

「激しい曲を作りたいって思うんじゃなく、自然と奏でた音が結果的に激しいものになっていた……という感覚ですね。でも、この詩を読むと、もっと無意識さを極めることで、より今以上の多くの人に僕の感情が伝わるのかなって思いました。読むたびに、とてもいい刺激をいただいています」

(取材・文=倉田モトキ)

TK

てぃー・けー●1982年埼玉県生まれ。2002年に345、ピエール中野と「凛として時雨」を結成。08年にシングル『moment A rhythm』でメジャーデビューを果たす。またソロでも「TK from 凛として時雨」名義で2枚のアルバムをリリースしている。2月8日(日)よりベストアルバムを引っ提げての全国ツアーがスタート。

 

『歳月』書影

紙『歳月』

茨木のり子 花神社 1900円(税別)

詩人・茨木のり子が、最愛の夫を亡くした1975年から自身がこの世を去るまでの31年間にわたって綴った、39編からなる詩集。「一種のラブレターのようなもの」(あとがきより)と語っているように、ときには個人的な情景を綴りながらも、そこには普遍の愛が満ちあふれ、夫婦の繋がりを優しく描いた内容となっている。

※TKさんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ2月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『Best of Tornado』

凛として時雨 SMAR 初回生産限定豪華盤(2CD+DVD)7500円 初回生産限定盤(2CD+DVD)4200円 通常盤(CD)2800円、シングル『Who What Who What』期間生産限定盤(CD+DVD)1200円※すべて税別 
●初のベストアルバムはライブ定番曲や彼らの音楽性を象徴する楽曲を集めたメンバーセレクトによる珠玉の15曲を収録! バンドの“今”を伝えるべく、最新の音を奏でるニューシングルも期間限定で同時にリリース。