『けいおん!×けいはん!』 キャラクター電車が街を走る滋賀県大津市の試みとは?

アニメ

更新日:2015/6/26

9割の賛辞よりも、1割の批判に耳を傾けて

目新しいタイアップ企画は一時的に乗車客を増加させる事ができる。だが、アニメファンを満足させるだけでは企画の継続は難しい。アニメコンテンツと公共交通機関という異なる産業を結びつけるためには、双方の客層が持っているニーズを調整することが重要だ。普段から大津線を利用している年配の方々への配慮や、近隣住民の理解がなくてはならない。大津鉄道部営業課の山本久さんは「9割のお客様に喜んでもらえても、1割の批判の声を大事にしたい」と語る。そのために、アニメファン以外の多くの人々にも企画を理解してもらえるよう、地道な改善が行なわれてきた。

 以前は窓の上にイラストが重なることで窓が遮断されていたが、現在はイラストが窓の上に重なっていても車窓から外が見えるようシースルーフィルムを採用している。プロジェクトメンバーは賛辞と批判の両方を受けながら、より良いタイアップを目指して毎回思索をめぐらせている。

放送が終了しても、続いていくファンの想いを乗せて

アニメコンテンツは舞台モデルとなった街に活気をもたらすだけでなく、ファンにとっては聖地を通じて、作品と「いま」を結ぶ架け橋として新たな意味を与えている。『けいおん!』、『中二病でも恋がしたい!』、『ちはやふる』は、いずれも既にTVアニメの放送が終了しているタイトルで、現時点では続編の制作予定も発表されていない。だが、放送を終えてからもこのようなタイアップ企画を通じて、ファンの作品への想いは「聖地」を訪れるたびに更新されてゆく。土地に新たな価値を与え、街と人との出会いを生み出すアニメコンテンツの可能性はますます広がりを見せるだろう。

今後も作品のファンからも地元住民からも歓迎されるようなタイアップが実現してゆくことを願う。

取材協力:京阪電鉄大津鉄道部

取材・文=松田はる菜