作者は現役女子大生!? 一風変わった「あの世」を描くマンガ家の素顔 【『保留荘の奴ら』ココなし。さんインタビュー】

マンガ

更新日:2015/2/17

人の心を震わせる作品を生み出したい

――最後になりますが、将来、どんな作家になりたい、というような目標としている作家さんはいますか?

ココなし。「小学生の時、初めてリアルタイムで連載中の作品を読めた星野桂先生の『D.Gray-man』がとても感動的でした。美麗な絵、ダークだけどしっかりしたストーリー。時々休載しちゃってたんですけど、復活するたびに“よっしゃあ!”と気合が入って、学校に行く力にもなりました。そのくらい、この作品から影響を受けました。自分の絵のテイストも影響を受けて…いたと思っていたけど今思えば下手過ぎた中学生の頃の自分をぶん殴りたいと思うこともしばしばありますが、下手なりに真似ようとしていました。でも、上っ面だけ真似るのではなく、共感できるストーリーやキャラ設定、そしてそこから生まれる読者への影響。どれを取ってもわたしのお手本であり、目標です。わたし自身、マンガ作品のいちファンだった時代にはいろいろな考察を試みていました。今ではわたしの作品を読んで考察してくれている人たちがいます。自分がマンガで感動したり、生き方がすっかり変わってしまったように、わたしのマンガで誰かが感動してくれれば……そんな作品を生み出せればなぁと思っています。あ、保留荘の奴らでは難しいかもしれませんが(笑)」

――第二、第三のココなし。さんが生まれてくるかもしれませんね。今日はありがとうございました。

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 大学卒業後はこのまま作家生活に突入するというココなし。さん。しかし「経験値、足りないんですよね。勉強しただけでは分からない、経験しないと分からないことを経験するために、いつか就職を考えるかもしれません」とも。

 殺人鬼たちの死後の生活をギャグマンガに仕立ててはいるが、考察的コメントの多さから、“ギャグマンガ”とひと括りにはできない奥深さがあるのがうかがえる。それは、彼女がマンガにリアリティを盛り込むべく、勉強熱心だからこそ生み出された状況なのではないだろうか。作品からパワーをもらっていた一人の少女が、人を動かす側へと確実にシフトし始めており、これからもますます多くの人の心を動かしていくのだろう。

 現役女子大生のマンガ家ココなし。さんに会えばそのパワフルさに圧倒されそうになるが、勢いだけの人ではない。今まで学んだことやこれから学ぶことを作品作りに活かそうとしている勉強家なのだ。そんな彼女の素顔に触れられる貴重なインタビューだった。

取材・文=渡辺まりか