【日本と中国の三国志のイメージの違い】呂布は美形枠? シャア・アズナブル?

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更新日:2015/6/26

『三国志8』(横山光輝/潮出版社)

 中国オタク事情を連載している百元です。第8回は三国志に関する中国と日本のイメージの違い等について紹介させていただきます。

 三国志は日本のコンテンツにおいてはある種の定番的な扱いとなっていますし、中国のオタク界隈でも日本における三国演義の人気の高さはよく知られています。しかし日本と中国では三国志に関する認識に諸々にちょっとした違いも存在するようです。

 

あの武将が中国だと美形枠に…

三国志には様々な武将が出ますが、中国でカッコ良いとされている武将、特に若い世代に人気が高い、女性人気が高い武将となるとまず趙雲、そして馬超が来るそうです。

 趙雲に関しては日本でも人気武将の一人ですし中国におけるイメージは日本とあまり差はないと思われます。しかし馬超は日本よりも随分と良いイメージになっているそうです。馬超に関して日本では蜀の五虎大将ではあるものの、蜀に身を寄せてからはあまりパッとしないイメージもあるかと思いますが、中国では馬超は良い血筋で活躍する美丈夫、荒々しい面と貴公子的な面を併せ持つキャラといったイメージがあるそうです。

 ちなみに中国では中華ファンタジー系の一ジャンルとして三国志武将のコスプレが行われたりもするのですが、趙雲と馬超はよく看板キャラ的な扱いになるそうです。中国ではカッコイイ男性が三国志系のコスプレをしていた場合、説明不要で「たぶん趙雲か馬超」だという認識になるという話もありますね。

 また、美形枠に入る武将では呂布もその一人だそうで、人気は微妙ながら中国では美形悪役のカテゴリにも入るそうです。文芸方面にも詳しい中国のオタクの方と以前話した時などは
「呂布はあえてガンダムで例えればシャア・アズナブルだろう。シャアのような人気はないが」
「もちろん中国でも異論はあるだろうけど、少なくとも“シャアって三国志で言えば誰?”という話になった時の有力な候補にはなると思う」という話も出ました。

 聞いた話によれば、呂布は京劇においては隈取りの入る「花臉」ではなく、ヒゲのない美少年や美青年枠的な「小生」あるいは「武小生」枠のキャラ(ちなみに趙雲や馬超はこの「小生」あるいは「武小生」の代表的なキャラでもあるそうです)になるとのことでした。

 それに加えて中国では呂布に「戦闘や裏切りなど、そういった方面には頭が回る」というイメージがあることから日本の脳筋枠、パワーキャラ的なイメージとは異なり、「それなりに頭のきれる美形枠の悪役」となるそうです。

 そのため、日本のコンテンツに出てくる呂布があまりにも武力ばかり、極端なパワー系という扱いになっているのに戸惑ってしまう中国のオタクの方もいる模様です。

ストーリーの認識に関する違い

上述のようなイメージの違いが生じているのは、三国志、三国演義関係のコンテンツの接し方、把握の仕方が現在の日本と中国では異なるというのも理由の一つとなっているようです。
大雑把な言い方ではありますが、日本では全体のストーリーを通じて接していく傾向があるのに対し、中国では戯劇等の個別のエピソードを通じて接していく傾向があります。

 中国において三国志の武将は三国演義を題材にした戯劇等の個別のエピソードを通じて知ることが多く、三国志全体の流れを通して見るとあまりパッとしない、あるいは大筋の流れにそれほど影響を及ばさないキャラでも、個別のエピソードやそれを元にした演劇等では大活躍ということもあります。

 日本では蜀に下ったあとはたいした活躍もしない、見方によっては従弟の馬岱の方が活躍しているとされたりもする馬超が、中国では主人公的な要素を備えるキャラだと認識されていたり、呂布が美形悪役的なイメージとなっているのは恐らくこの辺りも影響しているのではないかと思われます。

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