斉藤由貴「本の情報交換は“興味ある世界の交換”。それはすっごく刺激的」

あの人と本の話 and more

更新日:2015/3/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、デビュー30周年を記念したアルバム『ETERNITY』をリリースした斉藤由貴さん。ベッドの周りには、うずたかく積まれた本、本……。暮らしの傍らにはいつも本があるという斉藤さんの、本との付き合い方、そして、そこから受け取っているものとは?

「実はこの本、私の枕の下に置いてあった本なんです」

 斉藤さんの枕の下には今、3冊の本があるという。今回おすすめしていただいた『透明な沈黙』は、そのうちの1冊。

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「ほかには、“こんなところに家が!?”と、びっくりするような絶景のなかに1軒だけ建っている家の風景を捉えた写真集。ページをめくっていると、すごく幸せな気持ちになるんです。行ってみたいとも思うし、こんなところで生活を営んでいる人もいるんだなぁって思いが広がっていく」 

 そして、さらにもう1冊はスープの本!

「私、すっごくスープが好きなんです。スープとポタージュのレシピ本なんですが、それを夜寝る前に眺めて、心地よい気持ちになって眠りにつく。その中のレシピはいまだひとつも作ったことはないんですけどね(笑)」

 枕に頭をのせ、『透明な沈黙』のページを開くときは、自分の中の鋭敏な感覚をブラッシュアップしたいとき。

「女優、歌手という仕事をするうえで、口はばったい言い方ですけど、表現する者としての自分がいる。けれど、どうしても、平安とか安寧とか、そういうものに流されていく部分はある。そうしたとき、自分の中の核というか、一番奥にある研ぎ澄まされた部分に集中するために、一節、一節、好きなところから。どこから読んでもいいというのも、この本の良さですね」

 斉藤さんには本の情報をやりとりしている大切な友人がいるという。この本の気に入った一節も、写真に撮ってメールで“贈った”という。

「自分が興味のあることを相手に知らせることで、リフレクション的にわかることもある。それをお互い投げかけ合うって、すごく刺激的なんです。興味ある世界の交換になるというか。向こうからは、たとえば、今、枕の下にある写真集やバルテュスのドキュメント、ウンベルト・エーコの美の歴史などの一節が送られてきて。本という媒体って、やっぱり特別。他のものでは感じることのできないものを持っていると思います」

(取材・文=河村道子 撮影=冨永智子)

斉藤由貴

さいとう・ゆき●1966年、神奈川県生まれ。1984年、第3回「ミスマガジン」グランプリに選ばれる。ドラマ『スケバン刑事』などに出演、トップアイドルに。歌手として『卒業』『夢の中へ』などがヒット。昨年は宮藤官九郎脚本のドラマ『ごめんね青春!』、三谷幸喜作・演出の舞台『紫式部ダイアリー』への出演も話題に。
ヘアメイク&スタイリング=村上智子

 

『透明な沈黙 ウィトゲンシュタインの言葉×新世界『透明標本』』書影

紙『透明な沈黙 ウィトゲンシュタインの言葉×新世界『透明標本』』

鬼界彰夫/訳 冨田伊織/透明標本 青志社 1800円(税別)

語ることのできないものについて、人は沈黙しなければならない──語りえないものについて生涯を通し、問い続けた哲学者ウィトゲンシュタイン。観念的なのに生々しい、「生」を探求した言葉の世界と、沈黙の死に新たな命を吹き込んだ冨田伊織の『透明標本』、二つの世界が織りなす、ビジュアルで見る美しき哲学書。

※斉藤由貴さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ4月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

CD『ETERNITY』

『ETERNITY』ジャケット斉藤由貴 
初回生産限定BOX(CD+イラスト入りフォトフレーム)7500円(税別)、通常盤(CD)3000円(税別)ヤマハミュージックコミュニケーションズ
●デビュー30周年を記念したアルバムのテーマは「誰もが味わった特別な恋の瞬間へのオマージュ」。ロマンチックで美しいJAZZバラードの名曲カバーを中心にしたラインナップは、デビュー以来、初の試みとなる。歌詞ブックレットには、それぞれの歌への想いを語ったコメントも掲載。