松坂桃李「入口と出口で印象が、がらっと変わる。古沢良太さんの脚本は見事だと思いました」

あの人と本の話 and more

公開日:2015/3/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、総勢27名の超豪華キャストが集結したエンターテインメント大作、映画『エイプリルフールズ』で、SEX依存症の天才外科医・牧野を演じた松坂桃李さん。「新たな引き出しを開けました(笑)」という、これまでにないハイな男の役に臨んだ境地とは?

「僕自身は嘘をつくと、親いわく顔に出るらしいんです。“あんたは嘘をつくとすぐに変化が出る”って。だから、つけないんですよ。そして、それがどんな変化かということはいまだに教えてもらえない(笑)」
そんな松坂さんが演じた牧野は嘘のなかで生きてきた男。女性にだらしなく、行動もぺらぺら。
「でも、すごく愛おしいんです。誰しも嘘を抱えて生きていると思うんですよね。それは自分の弱い部分、見られたくないものがあるからこそ。行きすぎちゃっているところはあるけれど、嘘という蓋で自分を閉じ続けるしかなかった牧野の気持ちはわかるなぁと」
「男としてすごく好き」と語る昔堅気のヤクザがつく不器用な嘘をはじめ、交錯する7つの嘘は、ストーリーのなかで知らず知らずのうちに姿形を変えていく。
「入口と出口で印象ががらっと変わる。古沢さんの脚本はやはり見事だと思いました」
本作の脚本は「リーガルハイ」シリーズなど手掛けた古沢良太の、映画『キサラギ』以来となるオリジナル脚本映画。超個性的なキャラクターと複数の話が同時に進行し、予想もできない結末へと連れて行かれる。
「これだけたくさんのエピソードが詰まっているのにすべてが繋がり、そして完璧に回収されていく。脚本をいただいた時も、笑えて、ほろりときて、あっという間に読んでしまいました」
だがそれはプレッシャーにも……。
「脚本の面白さは、俳優部にとってはすごいプレッシャーです。けれど古沢さんのセリフって自然と身体に入ってくるんですよね。どんな長いセリフでもすらすらいけてしまう。それは脚本家+登場する人物として書いていらっしゃるからなのかなぁとも。その巧みな会話劇を、面白いことの大好きな石川監督が役者からのアイデアも活かしつつ、豊かに肉付けしていく。真面目にふざけた楽しい現場でした(笑)」
 そこには“愛”もぎゅっと込められている。
「嘘のなかには愛がたくさん(笑)。笑いと愛のコントラストをぜひ楽しんでいただきたいですね」

(取材・文=河村道子 写真=山口宏之)

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松坂桃李

まつざか・とおり●1988年、神奈川県生まれ。2009年、ドラマ『侍戦隊シンケンジャー』でデビュー。映画『ツナグ』、連続テレビ小説『梅ちゃん先生』など話題作に次々と出演。昨年は大河ドラマ『軍師官兵衛』での演技も話題に。今年も大ヒット上映中の映画『マエストロ!』、8月に『日本のいちばん長い日』、秋に『ピース オブ ケイク』と出演作の公開が続く。
ヘアメイク=INOMATA スタイリング=丸山 晃 衣装協力=ジャケット5万5000円(税別)、パンツ3万7000円(税別)、Tシャツ1万6000円(税別)(全てサヴィー / イーライト TEL03-6427-7744)

 

『ホテルローヤル』書影

紙『ホテルローヤル』

桜木紫乃 集英社 1400円(税別)

“非日常”を求めて男と女が開く扉。人々の内に抱える孤独を、湿原を背に建つラブホテルは知っている。「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、親に家出された女子高生と妻の浮気に耐える高校教師、ホテル経営者家族も事情を抱え……時を遡りながら描かれる、愚かだけれど真摯な人々の“生”を描いた7つの短編集。

※松坂桃李さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ4月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『エイプリルフールズ』

脚本/古沢良太 監督/石川淳一 出演/戸田恵梨香、松坂桃李、ユースケ・サンタマリアほか 配給/東宝 4月1日(水)より全国ロードショー
●4月1日のある大都会。何気ない嘘がウソを呼び、バラバラに起こった事件とすべての登場人物が絡まり、大騒動に──イタリアンレストランの大騒動、ロイヤル夫妻の休日、不器用な誘拐犯……7つの小さな嘘が最高の奇跡を起こす愛と感動と爆笑のエンターテインメント。
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