「こういうアニメを作りたい!」から生まれた、構想30年の大冒険活劇『レオナルドの扉』(真保裕一)

新刊著者インタビュー

公開日:2015/3/6

歴史も、人の想いも何かがどこかに繋がっている

“救われたような気持ちになることと、現実に救われることは、意味が大きくちがってくる”──プロローグの場面で、読者に投げかけられる言葉がある。その言葉は、ジャンたちの冒険のなかで大きく膨らみ、物語を読み終えた時、しっかりとした姿を持ち、心に戻って来る。

「ストーリーを楽しんでさえいただければ、その言葉を思い出さずともいいとは思っているのですが、この物語は歴史や人の想いなど、何かがどこかに繋がり、集まっていく話なんですね。そこで何かに気付き、胸の内に残してもらえたら」

 心躍る冒険の中に埋め込まれた、はっとするような言葉たち。それらは問いになったり、現実世界を投影したり。たとえば“知を有してこそ、混乱の世を生き残っていける”というナポレオンの言葉─それは確かに正しい。だがその方向性は?と、物語は問うてくる。

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「知を有するために、この物語の中でナポレオンが起こしていった行動は、七十数年前、戦争へと踏み出していった日本人の姿に重ねているところがあります。知の方向性ということでは、今の日本が抱える原発の問題とも。読む方の想いに沿い、様々な読み方をしていただければ」

 けれど「まずは理屈抜きで、楽しんでいただきたい」と、真保さんは満面の笑みで言う。

「読者の方に喜んでほしいんです。何と言ってもそれが一番!そのために普段の小説では使うことのないテクニックを詰め込みました。幅広い世代の方に。特に親子で。アニメ映画を観るように一緒に楽しんでもらえたら、うれしいなぁ」

取材・文=河村道子 写真=石川耕三

 

紙『レオナルドの扉』

真保裕一 KADOKAWA 角川書店 1500円(税別)

イタリアの小村でレオナルド・ダ・ヴィンチが設計したとされる模型作りに夢中な時計職人・ジャンとその祖父をナポレオン率いるフランス軍が囲んだ。彼らが追うのはレオナルドの秘密の設計図。記されたノートは幼い頃に消えた父とともに──ジャンと親友・ニッコロは仏軍の追手をかいくぐり、“遺産”を探す旅に出る。