吉澤嘉代子「この本が好きな人とは仲良くなれる気がします(笑)」
更新日:2015/4/6
シンガーソングライターが作る楽曲というと、実体験をベースにしたものが多く、そこに聴き手が自分を投影するからこそ、共感を呼び、人気を得たりするものだ。しかし、吉澤嘉代子さんが作る歌には、等身大の自分を主役にしたものがほとんどない。
「私の曲は、頭の中でできあがった架空の人物が主役なんです。この“芸風”ができあがったのも、少女時代に読んだ小説たちのおかげ。小説の主人公は年齢も性別も、育ち方も全部違いますよね。だからこそ、その主人公に自分が感情を重ねることで、見たことのない世界を疑似体験することができる。私はその素敵な体験を、音楽で表現したいと思ったんです」
その言葉通り、彼女が生み出す歌詞はオリジナリティ溢れるものばかり。この作風の原点は、いしいしんじの『ぶらんこ乗り』にあるという。
「この本に出てくる“弟”は、妄想と現実の間を生きているんです。まさに少女時代の私そのもの。彼がノートに描く“おはなし”は、ふわふわと現実を生きる私のそばにいてくれました」
あまりにこの小説が大好きになった結果、吉澤さんは同タイトルである『ぶらんこ乗り』という歌までリリースしている。小説では最終的にこの“弟”は姿を消す。彼のその後について、どう想像しているかを尋ねると、彼女は頭を抱えて悩みだした。
「私にとって、この男の子は夢を与えてくれた大切な存在。今、どうなっているかなんて考えるだけでおこがましいんです(笑)。できるなら少年のままでいてほしいくらい」
今では『ぶらんこ乗り』の単行本を購入しては、近しい人にプレゼントしているという。
「この本は独特な雰囲気を持つので、惹かれる人はたまらなく好きになる作品だと思うんです。だからこそ、この小説の世界観にピンときた人とは仲良くできる気がします(笑)」
(取材・文=吉田可奈 写真=富永智子)
よしざわ・かよこ●1990年、埼玉県生まれ。父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。2010年にコンテストでグランプリを獲得し、13年に1st mini Album『魔女図鑑』を発売。インディーズ作品でありながらヒャダインや綾小路翔から絶賛を受け話題となる。14年にmini Album『変身少女』でメジャーデビュー。
メイク=前川ゆき ヘアスタイリング=高木政美
ぶらんこに乗るのが上手で、指を鳴らすのが得意なわたしの“弟”。天才と呼ばれた彼は、あるきっかけで声を失った後、動物と話し、ノートにおはなしを書き始める。もう、ここにはいない彼が残したそのノートには、痛いほどの真実が描かれていた──。世代を超えて愛される、いしいしんじの初となる長編小説。
1st ALBUM『箒星図鑑』
吉澤嘉代子 e-stretch RECORDS 2778円(税別)
●「言葉が一番キラキラと輝く曲に乗せて歌いたい」という彼女のこだわりがしっかりと詰まったデビューアルバム。キュートでいながら、どこかつかみどころのない不思議な歌声には、“次はどんな曲を聞かせてくれるのだろう”とワクワクするはず。1枚を通して聴いたあとは、歌詞だけを読んでみてもらいたい。きっと新しい発見があるはずだ。
吉澤嘉代子 箒星ツアー’15
5月9日(土)岡山 MO:GLA(開場17:30/開演18:00)(問)夢番地岡山086-231-3531
5月10日(日)福岡 Gate’s7(開場17:30/開演18:00)(問)つくす092-771-9009
5月12日(火)名古屋 CLUB QUATTRO(開場18:00/開演19:00)(問)ジェイルハウス052-936-6041
5月15日(金)大阪 UMEDA CLUB QUATTRO(開場18:00/開演19:00)(問)夢番地大阪06-6341-3525
5月16日(土)東京 赤坂BLITZ(開場17:00/開演18:00)(問)ネクストロード03-5712-5232
【料金】各会場同一¥3800(全自由/Drink代別/整理番号順)
【チケット】各プレイガイドにて発売中
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