沢村一樹「“犬養隼人”は、今この時の、等身大の自分をもって演じられる役だと思いました」
更新日:2015/4/6
中山七里と沢村一樹の世界観を何度もトレースし、ドラマ『切り裂きジャックの告白 ~刑事 犬養隼人~』は、時間をかけて、緻密につくられていったという。そこには自らが演じる主人公への、沢村さんの強い想いがある。
「嘘を見抜く、けっして自分を語らない犬養という人物を考えた時、きっと立ち直れないほどの経験をし、そこで這い上がろうとした人なんだろうなと思ったんです。人生で起こることは人の見方を変えていく。僕自身、守るべき家族を得、年齢を重ねてきたことから、それを実感しています」
40代後半に入った今、怖いものがひとつずつ減り、“いいんじゃない?それくらい”という穏やかな心地が増えてきたという。
「20代の頃に見えていたものとは全然違う世界が広がっている。今、自分が持つ感覚――それを考えるに、犬養はまさに等身大の自分をもって演じられる役だと思いました」
普段の沢村さんは大のドキュメンタリー番組好き。心に引っ掛かってきたものは、録画を繰り返し観ては記憶に残すという。
「実は僕、活字を読むのが苦手なんです(笑)」
けれど今回、お気に入り本として挙げてくれたのは、上下2巻にわたる、ずっしりとした歴史小説ではないですか……?
「歴史って、唯一ドキュメンタリーにならないじゃないですか。登場人物はすでにこの世にいないのだから。でも司馬遼太郎さんのように“この人の考え方に賛成!”と自分が思う方の小説はドキュメンタリー感覚で読むことができるんですね。“こんなドラマチックなことあったわけないだろ”“いや、本当にあったかも”と想像を巡らせながら、現代の感覚にもリンクさせることができる。だから人名の多さ、難解さに時々挫折しながらも(笑)、歴史は読書から自分の内側に入れるようにしているんです」
ドラマ『切り裂きジャックの告白 ~刑事 犬養隼人~』には、ドキュメンタリー番組で扱われるような現代の鋭いテーマも横たわる。
「臓器移植という、医療最先端技術における人としてのテーマが。おそらくその技術がすっかり古くなった百年後にも、人間は同じテーマで悩んでいるのではないかと思います。その答えはきっと出ない。けれど、ひとりひとりが答えを持っていてもいいことだと僕は思っているんです。本作は、そのテーマを考えるためのきっかけともなり得る作品ですね」
(取材・文=河村道子 写真=山口宏之)
さわむら・いっき●1967年、鹿児島県生まれ。96年、ドラマ『続・星の金貨』で俳優として本格デビュー。ドラマ「浅見光彦シリーズ」、「DOCTORS~最強の名医~シリーズ」をはじめ、映画『遺体~明日への十日間~』ドラマ『ブラック・プレジデント』他出演作多数。
ヘアメイク=INOMATA(&’s management) スタイリング=森岡 弘(GLOVE) 衣装協力=ジャケット11万円(ザ・ジジ)、シャツ2万円(ジャンネット)、パンツ3万6000円(ピーティーゼロウーノ)、
ポケットチーフ7800円(ホリデー&ブラウン/すべてビームス 銀座 TEL03-3567-2224) ベルト1万1000円(サドラーズ/バインド ピーアール TEL03-6416-0441)(すべて税別)
生まれながらの奇怪な猿面。人から疎まれる容姿、出自を人間的魅力に転じ、人の心を巧みに捉えていった豊臣秀吉。日本全土を統一した英雄を、武士の世界に商人の価値観をもたらした人物として描いた“太閤記”。何ものにもくじけない、機知溢れるその言動が、読む者の活力となる夢とロマンの歴史長編作。
ドラマ 『切り裂きジャックの告白 ~刑事 犬養隼人~』
原作/中山七里『切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人』(角川文庫) 脚本/山岡潤平 監督/本橋圭太 出演/沢村一樹、瀬戸康史、ミムラ ほか 4月18日(土)21:00よりテレビ朝日系列、土曜ワイド劇場特別企画にて放映
●臓器を抜き取るという猟奇的連続殺人事件を追う刑事・犬養。“切り裂きジャック”と名乗る犯人の狙いは? 刑事としてしか生きられない犬養には臓器移植を待つ娘がいた……命をつなぐことの意味を問いかける傑作ミステリー。