永瀬匡「『自分の初主演映画はこれで勝負したい!』と心から思える作品でした」

あの人と本の話 and more

更新日:2015/5/7

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、5月9日より公開される映画『ズタボロ』で主人公・板谷コーイチを体当たりで演じた永瀬匡さん。初の主演作となったこの映画への思いをうかがいました。

「実はずーっと考えてました。自分が初めて主演を務める映画はどんな作品なんだろうなぁって。本編が終わって、クレジットロールが流れて、一番最初に自分の名前が映し出される。その光景を何回も妄想していたんです(笑)。だって、“初”主演作って一生に一度のことだし、必ず思い入れの作品になるはず。それだけに、自信を持って人に言える作品にしたかったんですよね」

 そして、その念願だった夢を叶えることになったのが、今回の『ズタボロ』。気になる中身は、「僕が普段から伝えたいと思っていることと役柄が一致していて、まさに『これだ! この映画で勝負しようたい!!』と思えるものでした」という。
 映画のなかで永瀬さんが演じる主人公・コーイチは、学校でデカい顔をしたいがために、仲間とイキがり、地元の暴走族に入って箔をつけようとする、いわゆる不良だ。

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「やっていることはケンカばかり(笑)。でも、その裏側にある彼らの“心”や本質をしっかり見ていただきたいんです。仲間たちとただバカをしていたいという欲望、自らすすんで暴走族に入ったくせに、そこで遭遇する暴力から逃げ出したくなる弱さ、それに母親の強い愛を感じ、“自分は一人じゃないんだ。だから何も怖くない”と気づく想い――。そんな、誰もが持ちうるさまざまな感情が、この作品では描かれているんです」
 
 なかでも印象的なのが、コーイチと仲間のヤッコが、ケンカについて語り合うシーンだ。

「暴走族の先輩からのヤキ入れに心が折れ、ヤッコは“ケンカを始める前に耳の奥に鳴り響く、ワクワクするような太鼓の音が聞こえなくなった”と話す。つまり、彼らがケンカに明け暮れる理由は、日常のなかで高揚感が欲しいからなんですよね。そうした気持ちって誰もが持っているもの。そこをしっかりと見せていきたいと思いました」

 もちろん、永瀬さん自身もワクワクすることに貪欲だ。普段からいろんなジャンルのクリエイターたちとお酒を酌み交わしているそうで、「自分にはない表現方法のアプローチを聞くのが最高に楽しい!」と話す。

「本誌で紹介したバンクシーもそうですよね。グラフィティはこれまでにもあったジャンルですが、そのなかで自分にしかできない表現を見つけ、それが支持されていった。しかも、社会的に“ここまでならセーフかな……”というギリギリのラインを見極め、あえてアウトになるものを世に生み出したりしている(笑)。その生き方に、男としてちょっと魅力を感じますし、自分もそうした型にはまらない役者になりたいなって思います」

(取材・文=倉田モトキ 撮影=山口宏之)

永瀬 匡

ながせ・たすく●1993年、鳥取県生まれ。2011年にドラマ『桜蘭高校ホスト部』で俳優デビュー。13年に『仮面ライダーウィザード』(仮面ライダービースト/仁藤攻介役)、14年には映画『好きっていいなよ。』に出演し話題を集めた。現在、ドラマ『心がポキッとね』に出演中。映画『天空の蜂』が公開待機中。

 

『Wall and Piece』書影

紙『Wall and Piece』

バンクシー/著 廣渡太郎/翻訳 パルコ出版 2800円(税別)

イギリスを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、バンクシーのアートをまとめた初の作品解説集。ブラックユーモアに富んだ数々のイラストは、芸術なのか、それともただのイタズラなのか、今なお世界中で波紋を呼んでいる。素性を明かさず、神出鬼没で活動を続ける彼の思想や原動力が分かる貴重な一冊。

※永瀬匡さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ6月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『ズタボロ』

原作/ゲッツ板谷『メタボロ』『ズタボロ』(幻冬舎文庫) 監督/橋本 一 脚本/橋 泉 出演/永瀬 匡、清水富美加ほか 配給/東映 5月9日(土)より全国ロードショー 
ゲッツ板谷の自伝的小説をもとにした、2007年公開の映画『ワルボロ』の続編。高校進学したコーイチ(永瀬)は暴走族へ入るが、理不尽なヤキを入れられる日々を送る。やがて仲間が精神的に追い詰められ、その復讐のため、コーイチはヤクザの叔父の舎弟になることを決意するが……。
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