白石隼也「感情に忠実に演じてみたい、という僕の意志を、受け入れていただいた作品です」

あの人と本の話 and more

2015/5/7

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『鏡の中の笑顔たち』に主演した白石隼也さん。“訪問美容”で出会う高齢者との触れ合いを通して人間的に成長していく美容師という役柄は、白石さん自身の出演作の中では異色。そこに臨んだ境地とは?

「芝居の技術的なことはすべて排除し、感情に忠実に演じてみたいと思ったんです」

無愛想で言葉少なで。けれど、彼の行動や心に嘘や裏はない。白石さんの演じる美容師・遼の人付き合いの下手さ加減は、むしろ清々しい。だんだんと表情や態度が変わっていくさまも、納得できる温度感が心地いい。

「僕自身がもともと人見知りということもあって、遼の気持ちにはなりやすかった。演じるうえでわかりやすい動きをしなかったり、セリフを変えてしまったりと、遼の感情を優先して動いてしまったのですが、喜多監督はそんな僕の意図を汲み取って受け入れてくださった。2日目からはあまりカット割りはせず、長回しの撮り方に変えていただけたんです」

 今回、選んだ『ひとめあなたに…』は、ストーリーはもとより、主人公が東京・練馬から鎌倉に住む恋人のもとへと歩いていく道のりの描写にも引きこまれたという。

「実家が神奈川県藤沢市なので、東京から帰る時の流れと同じように風景が進んでいくのが面白くて。ラストの舞台も偶然、僕が生まれ育ったところ。自然と絵が浮かんできて作品の世界観に浸りました」

 今、バッグに入っているのは、村上春樹の『1Q84』。文芸系の小説をよく手に取るという。そしてホームレスの人々が売る雑誌『ビッグイシュー』も。

「たまたま僕の住む街で『ビッグイシュー』を売る方が現れて。実はホームレスの人々の映画を作りたい、脚本を書きたいと以前から考えていたんです。見かけるたびに買っていたら、徐々にお話しできるようになって、自分の中ではストーリーが見えてきた。いつか形にすることができたら、と思います」

(取材・文=河村道子)

白石隼也

しらいし・しゅんや●1990年、神奈川県生まれ。ドラマ『仮面ライダーウィザード』『彼岸島』で主演を務め、注目を集める。主な出演作に、映画『GANTZ』『カイジ2~人生奪回ゲーム~』『トリハダ−劇場版2−』、ドラマ『私の嫌いな探偵』など。6月には、本多孝好原作のアクション映画『ストレイヤーズ・クロニクル』が公開。

 

『ひとめあなたに…』書影

紙『ひとめあなたに…』

新井素子 創元SF文庫 780円(税別)

癌で余命いくばくもないと語る恋人から突然別れを告げられた女子大生の圭子。茫然自失する彼女の耳に聞こえてきたのは、来週、地球が滅びるというニュース。もう一度だけ彼に会いたくて、徒歩で練馬から鎌倉を目指す。その道中で出会う4人の女たち。彼女たちの選択を通して、圭子が最後に知ることとは──。

※白石隼也さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ6月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『鏡の中の笑顔たち』

監督・脚本/喜多一郎 脚本/瀬古千裕 出演/白石隼也、夏菜/松原智恵子 配給/ピーズ・インターナショナル 5月30日(土)角川シネマ新宿ほか、全国ロードショー
●東京でカリスマ美容師として働く遼。技術のみを追い、職場での人間関係を疎ましく思う彼が味わう初めての挫折。故郷・札幌へと戻り、地元の美容室で働き始めた遼に持ちかけられたのは訪問美容の話。仕方なく赴いた病院、介護施設で彼の心に小さな変化が──。
©2015「鏡の中の笑顔たち」製作委員会