橋本絵莉子(チャットモンチー)「大切な人にはきっと再会できる。この世の中は全部縁でできています」

あの人と本の話 and more

公開日:2015/5/7

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、2年7カ月ぶりのアルバム『共鳴』の発売を5月13日に控えたチャットモンチーの橋本絵莉子さん。家族との縁や、信じることの大切さを教えてくれたという小説『サラバ!』について、話してくれた。

 今年メジャーデビュー10周年を迎えるチャットモンチー。ボーカルの橋本絵莉子さんは、西加奈子さんの初期作品『さくら』の頃からの大ファン。新作『サラバ!』も、「読み終えるのが悲しかった」というほど没頭して読んだという。

「西さんの小説には、家族とのつながりがすごく丁寧に描かれていて、読むたびに母に電話をしたくなるんです。今作でも、主人公の歩がお母さんについて語っている第1章を読んだだけで、母の声が聞きたくなりました(笑)」

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 今作では、会うべき人には、どんなに離れていても、いつか必ず会えるという“縁”についても描かれている。

「今の時代、SNSが発達していて、世界中どこにいても大方の消息はつかめます。でも、そうしたものに頼らなくても、自分の大切な人には再会できると信じていて。私自身、この世の中は縁でできていると思ってるんです。あとは、勘(笑)! まさにそのことを作品にした『ぜんぶカン』という曲も、アルバム『共鳴』に収録されているので、歌詞と一緒に楽しんでもらえたらうれしいです」

アルバム『共鳴』は4人のサポートミュージシャンを迎え入れ、さまざまなタイプの曲に挑戦した渾身作となっている。

「縁があって仲良くなれた西加奈子さんから(バンドとしては初となる作詞提供を受ける形で)歌詞をいただいた『例えば、』や、昭和のアイドルのような歌い方に挑戦した『最後の果実』など、これまでにないことにもたくさん挑戦しました。そこでわかったのは、すべてのものに代わりがあり、別のものでもまかなえるということ。それは決してネガティブなことではなくて、これからの可能性が広がる素敵なことだと思ったんです。これから、さらにいろんなことに挑戦していけたらと思える作品になりました」

(取材・文=吉田可奈 撮影=鈴木慶子)

橋本絵莉子

はしもと・えりこ●福岡晃子とのバンド・チャットモンチーのメンバー。2000年に結成、05年にメジャーデビュー。ロックフェスやライブに精力的に活動し、ガールズロックバンドとして圧倒的な支持を受け、ブレイク。11年に現在の2ピースに。14年のライブでサポートメンバーを迎えた4人体制を初披露。
ヘアメイク=伊藤聡 スタイリング=岡部美穂

 

『サラバ!』書影

紙『サラバ!』(上・下)

西 加奈子 小学館 各1600円(税別)

主人公の歩は、父の海外赴任先であるイラン生まれ。チャーミングな母と変わり者の姉・貴子とともに、イラン革命の後、大阪に転居し、その後、彼の人生に大きな影響を与えるエジプトへ。歩の家族と彼を取り巻く人たちを描きながら、信じること、自分らしく生きることの大切さを教えてくれる長編小説。第152回直木賞受賞作。

※橋本絵莉子さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ6月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

アルバム『共鳴』

アルバム『共鳴』ジャケット

チャットモンチー
キューンミュージック 5月13日発売予定 
ライブDVD付初回生産限定盤 3400円(税別)
初回仕様限定盤 2900円(税別)
4人のサポートミュージシャンを迎え、自由に取り組んだ挑戦作。福岡が実体験をもとに綴ったという女性の怖い心理を歌った『隣の女』や、橋本が一番いいたかったことを曲にしたという『ぜんぶカン』のほか、カラフルな楽曲が詰め込まれた全12曲。